出典:建築物衛生管理技術者試験令和5年度(2023年)|建築物の環境衛生第35問
問題
振動に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
(1) 振動レベルの単位はHzで示される。
(2) 振動は全身に分布する交感神経末端の受容器により知覚される。
(3) 全身振動は、水平振動のみで評価される。
(4) 長距離バスやフォークリフトの運転などにより、局所振動障害が起こる。
(5) 振動を原因とする白ろう病では、指に境界鮮明な蒼(そう)白化状態が発生する。
ビル管過去問|振動|全身振動・局所振動・白ろう病の症状を解説
この問題は、振動の基本事項として、振動レベルの単位、人体での知覚、全身振動と局所振動の違い、そして振動障害の代表症状である白ろう病を正しく理解しているかを問う問題です。正しい選択肢は(5)です。白ろう病は、振動工具の使用などによる振動障害でみられる代表的な末梢循環障害で、指が発作的に白くなるレイノー現象が特徴です。反対に、単位をHzとしたり、全身振動と局所振動を取り違えたりする記述は誤りです。振動は環境衛生でも労働衛生でも出題されやすいため、用語の違いを丁寧に整理して覚えることが大切です。
(1) 振動レベルの単位はHzで示される。
不適切です。振動レベルの単位はHzではなく、dB(デシベル)で示されます。Hzは周波数の単位であり、1秒間に何回振動するかを表すものです。一方で振動レベルは、人が感じる振動の大きさに対応させた評価量で、環境分野ではdBで表します。つまり、HzとdBはまったく別のものです。試験ではこのように「単位の取り違え」がよく狙われますので、周波数はHz、振動レベルはdBと区別して覚えることが重要です。
(2) 振動は全身に分布する交感神経末端の受容器により知覚される。
不適切です。振動は主として皮膚、筋、関節などにある機械的刺激を感じる受容器によって知覚されます。交感神経末端の受容器で感じる、という説明は適切ではありません。交感神経は自律神経の一部であり、血管収縮や発汗などに関わりますが、振動を直接知覚する主体そのものではありません。この選択肢は、振動による障害で自律神経症状がみられることと、振動の知覚機構とを混同させるひっかけです。振動を「感じる仕組み」と、振動によって「影響を受ける仕組み」は分けて考えると整理しやすいです。
(3) 全身振動は、水平振動のみで評価される。
不適切です。全身振動は、人体全体に伝わる振動を対象とし、座位や立位で受ける上下方向の振動や前後・左右方向の振動などを含めて考えます。水平振動だけで評価するわけではありません。たとえば車両の運転や乗り物による揺れでは、上下方向の影響も大きく問題になります。全身振動という言葉が出たら、体全体に伝わる多方向の振動を想定することが大切です。
(4) 長距離バスやフォークリフトの運転などにより、局所振動障害が起こる。
不適切です。長距離バスやフォークリフトの運転で問題となりやすいのは、手や腕の一部ではなく、体全体が振動にさらされる全身振動です。局所振動障害は、チェーンソー、削岩機、さく岩機などの手で保持する振動工具を長期間使用することによって起こりやすい障害です。したがって、この選択肢は「長距離バスやフォークリフト」という全身振動の典型例を出しながら、「局所振動障害」と結びつけている点が誤りです。全身振動は乗り物、局所振動は工具、と対比で覚えると判断しやすくなります。
(5) 振動を原因とする白ろう病では、指に境界鮮明な蒼(そう)白化状態が発生する。
適切です。白ろう病は、振動障害でみられる代表的な末梢循環障害で、寒冷刺激などをきっかけに手指の血管が強く収縮し、指が発作的に白くなる現象を示します。これがいわゆるレイノー現象です。特徴として、白くなる部分の境界が比較的はっきりして見えることがあります。振動工具を長期間使用する作業者にみられることがあり、林業や建設業などで古くから重要な労働衛生上の問題として扱われています。この記述は、白ろう病の代表的症状を正しく述べています。
この問題で覚えるポイント
振動の問題では、まず「何を表す量か」と「どの単位か」を正確に分けて覚えることが重要です。周波数は1秒間の振動回数を表し、単位はHzです。振動レベルは人の感じ方を踏まえた振動の大きさの評価量で、単位はdBです。ここを取り違えると基本問題で失点します。
次に、全身振動と局所振動の違いを整理してください。全身振動は、車両運転や乗り物によって体全体に伝わる振動です。長距離バス、トラック、フォークリフトなどが典型例です。局所振動は、主として手や腕に伝わる振動で、チェーンソー、削岩機などの手持ち振動工具が原因になります。試験ではこの区別が頻出です。
さらに、局所振動障害の代表症状として白ろう病を押さえることが大切です。白ろう病では、手指の末梢循環障害により、寒冷時などに指が境界鮮明に白くなるレイノー現象が起こります。振動障害ではこのほか、しびれ、痛み、感覚低下、握力低下などもみられることがあります。したがって、白ろう病は「振動障害のうちの末梢循環障害の代表」と理解すると整理しやすいです。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、まず単位の混同です。振動という言葉から何となくHzを選びたくなりますが、Hzは周波数であり、振動レベルの単位ではありません。試験では「それらしく見える専門用語」を入れ替えてくるため、量と単位をセットで覚えておく必要があります。
次に、全身振動と局所振動の混同も典型的な罠です。乗り物による揺れは日常感覚では「手にも伝わる」と思いがちですが、衛生学上は体全体への暴露として全身振動に分類します。逆に、局所振動は手持ち工具による手腕系への振動です。この区別が曖昧だと、もっともらしい選択肢に引っかかります。
さらに、「一部だけ正しい文章」に注意が必要です。たとえば白ろう病という病名を知っていても、症状の特徴まで曖昧だと正誤判断ができません。白ろう病は単なる手の冷えではなく、振動障害に伴う末梢循環障害であり、指に境界のはっきりした白化がみられる点が重要です。用語を知っているだけで満足せず、症状の中身まで押さえることが合格への近道です。
