出典:建築物衛生管理技術者試験令和6年度(2024年)|ねずみ、昆虫等の防除第170問
問題
ダニの防除に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) イエダニやワクモの防除では、宿主動物の駆除や侵入防止対策などが必要である。
(2) ヒトの野外活動時の忌避剤使用は、マダニ類に有効である。
(3) ケナガコナダニの対策では、乾燥状態を保つことが重要である。
(4) ヒョウヒダニ類の対策では、殺虫剤感受性が低いことなどから、殺虫剤処理は第一選択肢とはならない。
(5) フタトゲチマダニの対策では、他のダニ類やチャタテムシ類の防除が重要である。
ビル管過去問|ダニの防除方法(イエダニワクモ対策)を解説
この問題は、ダニごとの生態の違いと、それに対応した防除方法を正しく結び付けられるかを問う問題です。ポイントは、ダニは種類によって発生場所も吸血の有無も対策も大きく異なるということです。屋内の食品害虫的なダニ、アレルゲンとなるダニ、宿主に寄生するダニ、野外で吸血するダニを混同しないことが大切です。正答は(5)です。フタトゲチマダニは野外で草地などに生息し、他のダニ類やチャタテムシ類の防除を中心に考えるダニではないため、この記述が最も不適当です。
(1) イエダニやワクモの防除では、宿主動物の駆除や侵入防止対策などが必要である。
適切です。イエダニやワクモは、単に室内に自然発生するというより、ネズミや鳥類などの宿主動物と強く結び付いて発生するダニです。そのため、殺虫剤を散布するだけでは根本解決になりません。例えば、屋根裏や天井裏に鳥が営巣していたり、建物内にネズミが生息していたりすると、そこを起点としてダニが人の生活空間へ移動してきます。したがって、防除では宿主の駆除、巣の除去、侵入経路の閉鎖、清掃、必要に応じた薬剤処理を組み合わせることが重要です。原因となる動物対策を行わないままでは、いったん減っても再発しやすいです。
(2) ヒトの野外活動時の忌避剤使用は、マダニ類に有効である。
適切です。マダニ類は野山、草地、藪などの屋外環境に生息し、人や動物に取り付いて吸血します。したがって、野外活動時の予防としては、長袖、長ズボン、足首を覆う服装、草むらへの立ち入りを避けることに加えて、皮膚や衣類への忌避剤の使用が有効です。特にマダニは感染症媒介の観点からも重要で、咬着されないこと自体が最大の予防になります。建築物内の衛生害虫対策の感覚で、発生源を屋内清掃だけで探そうとすると誤りやすいところです。マダニは基本的に野外性のダニであり、対策も行動予防が中心になります。
(3) ケナガコナダニの対策では、乾燥状態を保つことが重要である。
適切です。ケナガコナダニは高温多湿の環境を好み、食品、飼料、畳、ほこりの多い場所などで増殖しやすいダニです。そのため、防除では湿気をためないことが非常に重要です。換気を良くすること、結露を防ぐこと、保存食品の密閉管理を徹底すること、周辺を清潔に保つことが基本になります。ダニ類全般に共通するように見えても、特にコナダニ類は湿度管理が増殖抑制に直結します。発生してから薬剤だけで抑えるのではなく、発生しにくい乾燥環境をつくることが本質的な対策です。
(4) ヒョウヒダニ類の対策では、殺虫剤感受性が低いことなどから、殺虫剤処理は第一選択肢とはならない。
適切です。ヒョウヒダニ類は、室内じん中に多く生息し、虫体やふんがアレルゲンとなることで重要視されるダニです。このダニの対策は、薬剤で駆除することよりも、室内のほこりを減らすこと、寝具を清潔に保つこと、掃除機がけや洗濯を適切に行うこと、湿度を下げることが基本です。ヒョウヒダニ類は人を吸血することを主目的とするダニではなく、アレルゲン対策として環境管理が最優先になります。殺虫剤感受性の面からも、薬剤処理だけで十分な管理を行うのは難しく、第一選択肢にはなりません。試験では、吸血性ダニの対策と、アレルゲン対策としてのダニ管理を区別できるかがよく問われます。
(5) フタトゲチマダニの対策では、他のダニ類やチャタテムシ類の防除が重要である。
不適切です。フタトゲチマダニは、野外の草地や山林、放牧地などに多く生息する吸血性のマダニ類です。対策として重要なのは、草刈りや下草管理、野生動物や家畜との接触機会の低減、野外活動時の肌の露出防止、忌避剤使用などです。他のダニ類やチャタテムシ類の防除が重要になるのは、捕食性のダニや屋内塵性ダニとの関係を考える場合であり、フタトゲチマダニの本質的な対策とは一致しません。つまり、この選択肢は、野外性の吸血性ダニに対して、屋内性の微小害虫対策を当てはめてしまっている点が誤りです。ここがこの問題の最も不適当な記述です。
この問題で覚えるポイント
ダニの防除は、まず種類ごとの生態を分けて整理することが最重要です。イエダニやワクモのように宿主動物と結び付くダニでは、宿主対策が中心になります。ネズミや鳥の駆除、巣の除去、侵入防止が根本対策です。ケナガコナダニやヒョウヒダニ類のように屋内環境で増えるダニでは、湿度管理、清掃、換気、寝具管理などの環境的防除が基本です。特にヒョウヒダニ類はアレルゲン対策が中心で、殺虫剤は第一選択にはなりません。一方、フタトゲチマダニなどのマダニ類は野外性で、草地や藪に生息し、吸血と感染症媒介が重要です。このため、忌避剤、長袖長ズボン、草刈り、野生動物対策などが中心です。つまり、試験では、宿主依存型、室内環境型、野外吸血型の三つに分けて覚えると正誤判断がしやすくなります。ダニ対策は「薬剤で殺す」だけではなく、「どこで、何を餌や宿主として、どんな環境で増えるか」を起点に考えることが合格への近道です。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、ダニという同じ言葉でまとめられることで、受験者が対策を一括りにしてしまいやすい点にあります。特に、屋内で問題になるヒョウヒダニ類、食品や畳周辺で増えるコナダニ類、野外で吸血するマダニ類では、発生環境も健康被害も防除方法もまったく異なります。にもかかわらず、もっともらしい防除法を別の種類のダニに入れ替えて出題されると、見慣れた言葉に引っぱられて誤答しやすくなります。今回の誤りもその典型で、他のダニ類やチャタテムシ類の防除という屋内性の小動物対策を、野外性のフタトゲチマダニに結び付けています。これは「部分的に正しそうな対策を、対象種だけすり替える」タイプのひっかけです。今後も、ダニの名称だけでなく、宿主の有無、屋内か屋外か、吸血性かアレルゲンか、という軸で整理して読む習慣を持つと、同じパターンの問題に強くなります。
