【ビル管過去問】令和6年度 問題109|塩素消毒の特徴と消毒方法を解説

出典:建築物衛生管理技術者試験令和6年度(2024年)|給水および排水の管理第109問

問題

塩素消毒の特徴に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1) 多量な水に対する取扱いと定量注入が容易である。

(2) 窒素化合物と反応すると消毒効果が減少する。

(3) 塩素剤の残留の確認と濃度の定量が簡単にできる。

(4) 有害な有機塩素化合物を減少させる。

(5) アルカリ側で消毒効果が急減する。

ビル管過去問|塩素消毒の特徴と消毒方法を解説

この問題は、塩素消毒の実務上の長所と短所を正確に理解しているかを問う問題です。塩素消毒は、上水や受水槽、高置水槽などの衛生管理で極めて重要な基本知識であり、試験でも頻出です。ポイントは、塩素は多量の水に使いやすく、残留塩素の管理もしやすい一方で、窒素化合物やpHの影響を受けやすく、さらに副生成物として有害な有機塩素化合物を生じることがある、という点です。各選択肢を見ると、(1)(2)(3)(5)は適切であり、(4)が不適切です。したがって、最も不適当なものは(4)です。

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(1) 多量な水に対する取扱いと定量注入が容易である。

適切です。塩素消毒は、水道や建築物の給水設備のように大量の水を連続的に処理する場面に向いています。液体塩素や次亜塩素酸ナトリウムなどは注入装置を用いて比較的容易に定量注入できるため、処理水量が多い施設でも安定した消毒が行いやすいです。ビル管理の実務でも、連続注入によって一定の残留塩素を確保しやすいことが塩素消毒の大きな利点です。このため、塩素消毒は広く普及しており、大量処理に適しているという理解は正しいです。

(2) 窒素化合物と反応すると消毒効果が減少する。

適切です。塩素は水中のアンモニアなどの窒素化合物と反応してクロラミンを生成します。遊離残留塩素は強い殺菌力を持ちますが、クロラミンになると殺菌力は低下します。そのため、窒素化合物を多く含む水では、同じ量の塩素を入れても期待した消毒効果が得られにくくなります。試験では「塩素要求量」という考え方も重要で、水中の還元性物質やアンモニア性窒素などに塩素が消費されるため、必要な残留塩素を得るには追加の注入が必要になることがあります。したがって、この記述は塩素の性質を正しく述べています。

(3) 塩素剤の残留の確認と濃度の定量が簡単にできる。

適切です。塩素消毒の大きな特徴の一つは、消毒後に残留塩素を測定できることです。DPD法などにより、遊離残留塩素や結合残留塩素を比較的簡便に確認できます。これは、消毒が適切に行われているかを数値で管理できるという意味で非常に重要です。例えば、加熱や紫外線などの消毒法では、処理後に「どれだけ消毒成分が残っているか」を直接管理することはできませんが、塩素消毒では残留塩素濃度という形で維持管理の指標を持てます。建築物衛生管理技術者としては、この「確認しやすさ」が塩素消毒の実務的な強みであることを押さえておきたいです。

(4) 有害な有機塩素化合物を減少させる。

不適切です。塩素消毒は、有機物が存在する水に対して行うと、かえって有機塩素化合物を生成することがあります。代表的なものがトリハロメタンです。つまり、塩素消毒は有害な有機塩素化合物を減少させるのではなく、条件によっては副生成物として生じさせる側に回ることがあるのです。この点は塩素消毒の重要な短所の一つです。もちろん、衛生確保のために塩素消毒は不可欠ですが、原水中の有機物が多い場合には副生成物対策も必要になります。この選択肢は、塩素の欠点と利点を逆に表現しているため、最も不適当です。

(5) アルカリ側で消毒効果が急減する。

適切です。塩素消毒の効果はpHに強く影響されます。水中で塩素は次亜塩素酸と次亜塩素酸イオンの形で存在しますが、殺菌力が強いのは主に次亜塩素酸です。pHが高くなってアルカリ性側に傾くほど、次亜塩素酸イオンの割合が増え、相対的に殺菌力は低下します。つまり、同じ残留塩素濃度であっても、アルカリ側では消毒効果が落ちやすいということです。これは塩素消毒の基本事項であり、試験では頻繁に問われます。pH管理が消毒効果の確保に直結することを理解しておくことが大切です。

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この問題で覚えるポイント

塩素消毒は、多量の水を連続的に処理しやすく、定量注入が容易であることが大きな利点です。 残留塩素を測定できるため、消毒の実施状況を数値で管理しやすいです。これが他の消毒法との大きな違いです。 塩素はアンモニアなどの窒素化合物と反応して消費され、遊離残留塩素が減るため、消毒効果が低下します。 塩素消毒の効果はpHの影響を強く受けます。酸性側から中性付近では有効な次亜塩素酸が多く、アルカリ側では殺菌力の弱い次亜塩素酸イオンが増えるため、消毒効果が下がります。 塩素消毒は万能ではなく、有機物と反応してトリハロメタンなどの有害な有機塩素化合物を生成することがあります。「塩素は安全を守るが、副生成物の問題も持つ」という両面を理解することが重要です。 試験では、塩素消毒の長所として「大量処理向き」「残留確認が可能」が、短所として「pHの影響を受ける」「窒素化合物や有機物の影響を受ける」「副生成物を生じる」がよく問われます。

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ひっかけポイント

この問題のひっかけは、「消毒に使う薬剤なのだから、有害物質も減らしてくれそうだ」という日常感覚に受験者を引っ張る点にあります。しかし実際には、塩素は有機物と反応して有害な有機塩素化合物を生じることがあるため、イメージとは逆です。また、「塩素は殺菌力が強い」という知識だけを覚えていると、pHや窒素化合物の影響を軽視してしまいがちです。試験では、このように一部は正しいイメージを利用しつつ、別の条件を加えて誤りにする出題がよくあります。消毒剤の長所だけでなく、効きにくくなる条件や副作用までセットで覚えることが、同種問題を確実に解くコツです。

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