問題
殺虫剤·忌避剤の種類と衛生害虫への効力の組合せとして、最も不適当なものは次のうちどれか。
(1) 有機リン剤-ノックダウンした害虫は蘇生しにくい。
(2) ピレスロイド剤-直撃した時の速効性が高い。
(3) 昆虫成長制御剤(IGR剤)-幼虫にも成虫にも効力を発揮する。
(4) プロフラニリド-殺虫剤抵抗性トコジラミにも有効である。
(5) ディート-処理面への接触を忌避させることで、吸血を防ぐ。
ビル管過去問|殺虫剤と忌避剤を解説
この問題は、殺虫剤や忌避剤ごとの作用の違いを理解しているかを問う問題です。速効性が高い薬剤、成長を阻害する薬剤、抵抗性害虫に有効な薬剤、吸血を防ぐ忌避剤など、それぞれの役割を整理して覚えておくことが大切です。正しい選択肢の見極めではなく、「最も不適当なもの」を選ぶ問題なので、各薬剤の代表的な作用機序を正確に押さえる必要があります。結論として、最も不適当なのは(3)です。IGR剤は主として幼虫の脱皮や羽化を阻害して効果を示す薬剤であり、成虫にも同じように直接的な殺虫効力を発揮するものではありません。
(1) 有機リン剤-ノックダウンした害虫は蘇生しにくい。
適切です。有機リン剤は、害虫の神経系に作用して致死に結びつきやすい薬剤です。ノックダウンは「その場で動けなくなる現象」ですが、薬剤によっては一時的に倒れても後で回復することがあります。その点、有機リン剤は一般にノックダウン後の致死効果が比較的はっきりしており、蘇生しにくい薬剤として整理されます。試験法でも、ノックダウン率だけでなく、24時間後や48時間後の致死率を見て評価することが示されており、単に倒れるだけでなく最終的に死に至るかが重要です。
(2) ピレスロイド剤-直撃した時の速効性が高い。
適切です。ピレスロイド剤は、衛生害虫用殺虫剤の中でも速効性が高く、直撃したときにすばやくノックダウンを起こしやすいのが大きな特徴です。実務でも、エアゾール剤や蚊取り製剤など、すぐに効かせたい場面でよく用いられます。厚生労働省の試験法でも、速効性は時間経過に伴うノックダウン率で評価するとされており、ピレスロイド系はこの「速く倒す力」を代表する薬剤群として理解しておくと整理しやすいです。
(3) 昆虫成長制御剤(IGR剤)-幼虫にも成虫にも効力を発揮する。
不適切です。IGR剤は、昆虫の成長や変態の過程に作用する薬剤で、主に幼虫や蛹の段階に効力を示します。代表的には、脱皮を妨げたり、正常な羽化を阻害したりすることで個体数を減らします。厚生労働省の試験法でも、IGR剤は幼虫の生息密度や羽化阻害率で効果判定するとされており、成虫を直接すばやく殺すタイプの薬剤とは性質が異なります。したがって、「幼虫にも成虫にも効力を発揮する」という表現は広すぎて不正確であり、この選択肢が最も不適当です。
(4) プロフラニリド-殺虫剤抵抗性トコジラミにも有効である。
適切です。トコジラミでは、従来よく使われてきた薬剤に抵抗性を示す個体群が問題になっています。こうした中で、既存の主要薬剤とは異なる作用性を持つ薬剤は、抵抗性トコジラミ対策として重要です。プロフラニリドはその代表の一つとして扱われており、殺虫剤抵抗性トコジラミにも有効な薬剤として理解しておいてよい選択肢です。試験で問われたときは、「抵抗性が問題になるトコジラミに対し、従来系統と異なる薬剤が使われる」という流れで押さえると判断しやすいです。
(5) ディート-処理面への接触を忌避させることで、吸血を防ぐ。
適切です。ディートは殺虫剤ではなく忌避剤です。害虫を直接殺すのではなく、近寄りにくくしたり、接触や吸血を避けさせたりすることで被害を防ぎます。厚生労働省資料でも、ディートは吸血昆虫用の代表的な忌避剤として示されており、適切に塗布した部位では吸血を阻止する効果があるとされています。したがって、吸血防止という組合せは適切です。
この問題で覚えるポイント
殺虫剤と忌避剤は、まず「殺す薬剤」か「近寄らせない薬剤」かで整理することが大切です。ピレスロイド剤は速効性が高く、直撃時のノックダウン作用が強い薬剤です。有機リン剤は神経系に作用し、ノックダウン後に蘇生しにくい薬剤として整理できます。IGR剤は幼虫や蛹の成長・羽化を阻害する薬剤であり、成虫を直接たたく薬剤ではありません。ディートは殺虫ではなく忌避によって吸血被害を防ぐ薬剤です。トコジラミでは薬剤抵抗性が問題になるため、抵抗性個体にも有効な薬剤名を問われることがあります。
ひっかけポイント
IGR剤を「成虫にも効く万能な殺虫剤」と思い込むと誤りやすいです。IGR剤は成長阻害剤であり、中心は幼虫や蛹への作用です。ピレスロイド剤は「速く倒す」がポイントですが、ノックダウンと致死は同じ意味ではありません。ディートは殺虫剤ではなく忌避剤である点も頻出のひっかけです。薬剤名だけで判断せず、「速効性」「致死性」「成長阻害」「忌避」という作用の分類で整理しておくと、試験で迷いにくくなります。
