出典:第二種衛生管理者2022年(令和4年度)4月公表問題|労働生理第23問
問題
体温調節に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 寒冷な環境においては、皮膚の血管が収縮して血流量が減って、熱の放散が減少する。
(2) 暑熱な環境においては、内臓の血流量が増加し体内の代謝活動が亢(こう)進することにより、人体からの熱の放散が促進される。
(3) 体温調節にみられるように、外部環境などが変化しても身体内部の状態を一定に保とうとする性質を恒常性(ホメオスタシス)という。
(4) 計算上、100gの水分が体重70㎏の人の体表面から蒸発すると、気化熱が奪われ、体温が約1℃下がる。
(5) 熱の放散は、ふく射(放射)、伝導、蒸発などの物理的な過程で行われ、蒸発には、発汗と不感蒸泄(せつ)によるものがある。
第二種衛生管理者|第二種衛生管理者過去問|体温調節とホメオスタシス|熱放散と発汗のメカニズムを解説を解説
体温調節では、寒いときは熱を逃がさない反応が起こり、暑いときは熱を逃がす反応が起こります。答えは(2)です。暑熱環境では、内臓の血流量や代謝活動を高めて熱を作るのではなく、皮膚血管を拡張して皮膚血流量を増やし、発汗による蒸発を利用して熱放散を促進します。内臓血流量の増加や代謝亢進は、暑さへの正しい体温調節反応とはいえません。

(1) 寒冷な環境においては、皮膚の血管が収縮して血流量が減って、熱の放散が減少する。
適切です。寒冷環境では、体温を保つために皮膚の血管が収縮します。皮膚に流れる血液量が減ると、体の内部の熱が皮膚表面に運ばれにくくなります。その結果、外気へ逃げる熱が少なくなり、体温の低下を防ぎます。寒いと手足が冷たくなるのは、生命維持に重要な体の中心部の温度を守るために、末梢の血流が抑えられるためです。
(2) 暑熱な環境においては、内臓の血流量が増加し体内の代謝活動が亢(こう)進することにより、人体からの熱の放散が促進される。
不適切です。暑熱環境で熱放散を促進する主な仕組みは、皮膚血管の拡張と発汗です。皮膚の血流量を増やすことで、体内の熱を皮膚表面へ運び、ふく射、伝導、対流、蒸発によって熱を逃がします。代謝活動が亢進すると、むしろ体内で産生される熱が増えるため、暑熱環境で体温を下げる反応としては逆方向です。また、体温調節で重要なのは内臓血流量の増加ではなく、皮膚血流量の増加です。ここがこの選択肢の誤りです。
(3) 体温調節にみられるように、外部環境などが変化しても身体内部の状態を一定に保とうとする性質を恒常性(ホメオスタシス)という。
適切です。恒常性、つまりホメオスタシスとは、外部環境が変化しても、体内の状態を一定の範囲に保とうとする性質です。体温、血糖値、血液中の水分量、酸塩基平衡などが代表例です。体温調節では、暑ければ熱を逃がし、寒ければ熱を逃がさないようにすることで、体温を一定範囲に保っています。
(4) 計算上、100gの水分が体重70㎏の人の体表面から蒸発すると、気化熱が奪われ、体温が約1℃下がる。
適切です。水分が蒸発するときには、周囲から熱を奪います。この熱を気化熱といいます。汗が蒸発すると体表面から熱が奪われるため、体温を下げる働きがあります。試験では、100gの水分が蒸発すると、体重70kgの人の体温を計算上約1℃下げる、という数値が問われることがあります。汗は出るだけでは不十分で、蒸発して初めて大きな冷却効果を発揮します。
(5) 熱の放散は、ふく射(放射)、伝導、蒸発などの物理的な過程で行われ、蒸発には、発汗と不感蒸泄(せつ)によるものがある。
適切です。人体からの熱放散には、ふく射、伝導、対流、蒸発などがあります。ふく射は、体表面から周囲へ赤外線として熱が移動することです。伝導は、接触している物体へ熱が直接移ることです。蒸発は、水分が気体になるときに熱を奪う仕組みで、発汗による蒸発と、皮膚や呼吸器から自覚しにくい形で水分が失われる不感蒸泄があります。暑熱環境では、特に発汗による蒸発が重要です。
この問題で覚えるポイント
体温調節は、寒いときは熱放散を抑え、暑いときは熱放散を促進する仕組みとして整理すると正誤判断がしやすくなります。寒冷環境では皮膚血管が収縮し、皮膚血流量が減少して熱放散が少なくなります。暑熱環境では皮膚血管が拡張し、皮膚血流量が増加して熱を体表面へ運び、発汗による蒸発で体温を下げます。代謝活動の亢進は熱産生を増やすため、暑熱環境で体温を下げる反応とは反対です。ホメオスタシスは、外部環境が変化しても体内環境を一定に保とうとする性質で、体温調節はその代表例です。熱放散には、ふく射、伝導、対流、蒸発があり、蒸発には発汗と不感蒸泄があります。数値としては、100gの水分が体重70kgの人の体表面から蒸発すると、計算上、体温が約1℃下がる点を覚えておくとよいです。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「暑いときは血流量が増えて熱を逃がす」という大まかな理解に、内臓血流量や代謝亢進という誤った言葉を混ぜている点です。暑熱環境で増えるべきなのは皮膚血流量であり、熱を作る代謝活動ではありません。血流量が増えるという部分だけを見ると正しく感じますが、どこの血流量か、何のための反応かを確認する必要があります。また、汗はかくだけで体温を下げるのではなく、蒸発して気化熱を奪うことで冷却効果を発揮します。体温調節の問題では、寒冷時は皮膚血管収縮、暑熱時は皮膚血管拡張と発汗、という対比を軸に判断すると、似た表現に惑わされにくくなります。
