出典:第二種衛生管理者2021年(令和3年度)10月公表問題|労働衛生第18問
問題
細菌性食中毒に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 黄色ブドウ球菌による毒素は、熱に強い。
(2) ボツリヌス菌による毒素は、神経毒である。
(3) 腸炎ビブリオ菌は、病原性好塩菌ともいわれる。
(4) サルモネラ菌による食中毒は、食品に付着した細菌が食品中で増殖した際に生じる毒素により発症する。
(5) ウェルシュ菌、セレウス菌及びカンピロバクターは、いずれも細菌性食中毒の原因菌である。
第二種衛生管理者|細菌性食中毒の原因菌一覧|毒素型・感染型食中毒の特徴を解説
細菌性食中毒では、原因菌ごとの特徴と、毒素型か感染型かを区別することが重要です。答えは(4)です。サルモネラ菌による食中毒は、食品中で作られた毒素を摂取して発症する毒素型ではなく、食品とともに体内に入った細菌が腸管内で増殖して発症する感染型食中毒です。

(1) 黄色ブドウ球菌による毒素は、熱に強い。
適切です。黄色ブドウ球菌は、食品中で増殖するとエンテロトキシンという毒素を作ります。この毒素は熱に強く、通常の加熱調理では分解されにくい性質があります。そのため、食品を一度汚染させて毒素が作られてしまうと、あとから加熱しても食中毒を防ぎにくい点が重要です。おにぎり、弁当、調理済み食品など、人の手を介して汚染されやすい食品で問題になりやすい原因菌です。
(2) ボツリヌス菌による毒素は、神経毒である。
適切です。ボツリヌス菌が作るボツリヌス毒素は、神経に作用する強い毒素です。神経から筋肉への刺激の伝達を妨げるため、物が二重に見える、飲み込みにくい、発声しにくい、呼吸筋が麻痺するなどの重い症状を起こすことがあります。酸素の少ない環境で増殖しやすいため、真空包装食品、缶詰、瓶詰などの保存食品と関連して出題されることがあります。
(3) 腸炎ビブリオ菌は、病原性好塩菌ともいわれる。
適切です。腸炎ビブリオ菌は塩分を好む細菌で、病原性好塩菌ともいわれます。海水中に存在しやすく、魚介類、特に刺身や寿司などの生食と関連して出題されやすい原因菌です。真水には弱い性質があるため、魚介類を真水でよく洗うことや、低温で保存することが予防につながります。試験では、「好塩菌」「魚介類」「夏季に多い」という組合せで覚えると判断しやすくなります。
(4) サルモネラ菌による食中毒は、食品に付着した細菌が食品中で増殖した際に生じる毒素により発症する。
不適切です。サルモネラ菌による食中毒は、食品中で作られた毒素そのものによって発症する毒素型ではありません。食品とともに摂取されたサルモネラ菌が腸管内で増殖し、腹痛、下痢、発熱などを起こす感染型食中毒です。卵、鶏肉、食肉類などが原因食品になりやすく、十分な加熱や二次汚染の防止が重要です。この選択肢は、黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌のような毒素型の説明を、サルモネラ菌に当てはめている点が誤りです。
(5) ウェルシュ菌、セレウス菌及びカンピロバクターは、いずれも細菌性食中毒の原因菌である。
適切です。ウェルシュ菌、セレウス菌、カンピロバクターはいずれも細菌性食中毒の原因菌です。ウェルシュ菌は大量調理されたカレー、シチュー、煮物などで増殖しやすく、加熱後の放冷や保存状態が問題になります。セレウス菌は米飯類やめん類などと関連し、嘔吐型と下痢型があります。カンピロバクターは鶏肉や加熱不十分な食肉で問題になりやすく、少量の菌でも発症することがあります。名称が複数並ぶ選択肢では、知らない菌名があると迷いやすいですが、これらはすべて細菌性食中毒の代表的な原因菌です。
この問題で覚えるポイント
細菌性食中毒は、毒素型と感染型の区別が正誤判断に直結します。毒素型は、食品中で細菌が増殖して作った毒素を摂取することで発症するタイプで、黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌が代表例です。黄色ブドウ球菌の毒素は熱に強く、加熱しても失活しにくい点が重要です。ボツリヌス菌の毒素は神経毒で、神経麻痺を起こす重い食中毒として覚えます。感染型は、食品とともに体内に入った細菌が腸管内で増殖して発症するタイプで、サルモネラ菌、腸炎ビブリオ菌、カンピロバクターなどが代表例です。腸炎ビブリオ菌は塩分を好むため病原性好塩菌とも呼ばれ、魚介類と結び付けて覚えると判断しやすくなります。ウェルシュ菌やセレウス菌も細菌性食中毒の原因菌であり、大量調理食品、米飯類、加熱後の保存状態などと関連して出題されます。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、毒素型食中毒の説明を感染型食中毒の原因菌に当てはめている点です。「食品中で増殖した際に生じる毒素により発症する」という文章だけを見ると、食中毒全般に当てはまりそうに見えますが、これは主に黄色ブドウ球菌やボツリヌス菌などの毒素型の考え方です。サルモネラ菌は食品中で作られた毒素を食べて発症するのではなく、体内に入った菌が腸管内で増殖して発症します。食中毒の問題では、原因菌の名前だけで判断するのではなく、「毒素を食べるタイプなのか」「菌が体内で増えるタイプなのか」を意識すると誤答を避けやすくなります。
