出典:第一種衛生管理者2025年(令和7年度)10月公表問題|労働衛生(有害業務に係るもの以外のもの)第33問
問題
労働衛生管理に用いられる統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 健康管理統計において、ある時点での検査における有所見者の割合を有所見率といい、これは発生率と同じ意味で用いられる。
(2) 集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。
(3) ばらつきをもって分布するデータの代表値として、平均値、中央値などがあるが、どの代表値を選択するかは、データの内容と分布による。
(4) ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。
(5) 病休度数率は、在籍労働者の延べ実労働時間数100万時間当たりの疾病休業件数で示される。
第1種衛生管理者|労働衛生統計の有所見率・相関関係・病休度数率を解説
労働衛生管理では、健康診断結果や疾病休業の発生状況などを統計的に整理し、職場の健康リスクを把握します。答えは(1)です。有所見率は、ある時点の検査で有所見と判定された人の割合を示すもので、発生率とは意味が異なります。発生率は、一定期間内に新たに発生した疾病や異常の割合を示す指標です。ここでは「ある時点の割合」と「一定期間内の新たな発生」を混同している点が誤りです。
(1) 健康管理統計において、ある時点での検査における有所見者の割合を有所見率といい、これは発生率と同じ意味で用いられる。
不適切です。有所見率とは、健康診断などの検査を受けた人のうち、異常所見が認められた人の割合をいいます。これは、ある時点またはある検査時点における状態を示す指標です。発生率は、一定期間内に新たに疾病や異常が発生した人の割合を示します。つまり、有所見率は「その時点でどれくらい有所見者がいるか」を見る指標であり、発生率は「一定期間にどれくらい新たに発生したか」を見る指標です。両者は似て見えますが、統計上の意味は異なります。
(2) 集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。
適切です。平均値はデータ全体の中心的な位置を示す代表値ですが、集団の特徴を完全に表すものではありません。たとえば、平均値が同じでも、ほとんどの人が平均値付近に集まっている集団と、非常に高い値や低い値が多く含まれる集団では、分布の広がりが異なります。このばらつきの程度を示すものが分散です。平均値が同じでも分散が異なれば、集団の性質は異なると評価できます。
(3) ばらつきをもって分布するデータの代表値として、平均値、中央値などがあるが、どの代表値を選択するかは、データの内容と分布による。
適切です。代表値には、平均値、中央値、最頻値などがあります。平均値は全データを合計してデータ数で割った値で、全体の中心を把握するのに便利です。ただし、極端に大きい値や小さい値の影響を受けやすい特徴があります。中央値は、データを大きさの順に並べたときの中央の値で、極端な値の影響を受けにくい代表値です。データの分布が左右対称に近い場合は平均値が使いやすく、偏りが大きい場合や外れ値がある場合は中央値が適していることがあります。
(4) ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。
適切です。相関関係とは、二つの事象が一定の関係をもって変化することをいいます。たとえば、一方が増えると他方も増える関係が見られる場合があります。しかし、相関があるからといって、一方がもう一方の原因であるとは限りません。第三の要因が関係している場合や、偶然そのような傾向が見えている場合もあります。労働衛生管理では、統計上の関連を見つけることは重要ですが、因果関係を判断するには、作業環境、作業内容、曝露状況、時間的な前後関係なども確認する必要があります。
(5) 病休度数率は、在籍労働者の延べ実労働時間数100万時間当たりの疾病休業件数で示される。
適切です。病休度数率は、疾病による休業がどの程度の頻度で発生しているかを示す指標です。一般に、在籍労働者の延べ実労働時間数100万時間当たりの疾病休業件数で表されます。労働災害統計で使われる度数率と同じように、単なる件数だけでなく、労働時間を基準にして比較できる点が重要です。労働者数や労働時間が異なる職場同士でも、一定の基準に換算することで比較しやすくなります。
この問題で覚えるポイント
労働衛生統計では、指標が何を表しているのかを正確に区別することが重要です。有所見率は、検査を受けた人のうち有所見者が占める割合であり、ある時点の状態を示します。発生率は、一定期間内に新たに疾病や異常が発生した割合であり、時間の経過を含む指標です。平均値はデータの中心を示しますが、ばらつきまでは表しません。分散はデータの散らばりの大きさを示すため、平均値が同じでも分散が異なれば集団の特徴は異なります。代表値には平均値や中央値があり、外れ値が大きい場合や分布が偏っている場合は中央値の方が実態を表しやすいことがあります。相関関係は二つの事象に統計上の関連があることを示しますが、因果関係を直接証明するものではありません。病休度数率は、延べ実労働時間数100万時間当たりの疾病休業件数で表され、疾病休業の発生頻度を比較するために用いられます。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、有所見率と発生率を同じ意味だと思わせる点です。どちらも「割合」を表すため混同しやすいですが、有所見率は検査時点での状態、発生率は一定期間内の新規発生を表します。この違いは衛生統計でよく問われる基本です。また、平均値だけを見れば集団の特徴が分かると考えてしまうのも誤答につながります。平均値が同じでも、ばらつきが大きい集団と小さい集団では管理上の意味が異なります。相関関係についても、関連があるとすぐ原因と結果の関係だと考えがちですが、統計上の関連と因果関係は別物です。統計問題では、用語の印象ではなく、「時点を示すのか」「期間内の新規発生を示すのか」「中心を示すのか」「ばらつきを示すのか」を切り分けて判断することが大切です。
