出典:第一種衛生管理者2025年(令和7年度)4月公表問題|労働衛生(有害業務に係るもの)第15問
問題
金属などによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) カドミウム中毒では、上気道炎、肺炎、腎機能障害などがみられる。
(2) 鉛中毒では、貧血、末梢(しょう)神経障害、腹部の疝(せん)痛などの症状がみられる。
(3) 砒(ひ)素中毒では、角化症、黒皮症などの皮膚障害、鼻中隔穿(せん)孔などの症状がみられる。
(4) ベリリウム中毒では、接触皮膚炎、肺炎などの症状がみられる。
(5) マンガン中毒では、指の骨の溶解、肝臓の血管肉腫などがみられる。
ビル管過去問|金属中毒の症状と健康障害の特徴一覧を解説
金属などによる健康障害では、物質名と代表的な症状を正確に結び付けることが重要です。答えは(5)です。マンガン中毒では、主に神経障害が問題となり、パーキンソン病に似た歩行障害、手指のふるえ、筋肉のこわばりなどがみられます。指の骨の溶解は塩化ビニルによる健康障害、肝臓の血管肉腫も塩化ビニルばく露で知られる健康障害であり、マンガン中毒の症状ではありません。
(1) カドミウム中毒では、上気道炎、肺炎、腎機能障害などがみられる。
適切です。カドミウムは、粉じんやヒュームを吸入すると気道や肺に強い刺激を与え、上気道炎、気管支炎、肺炎、肺水腫などを起こすことがあります。また、慢性中毒では腎臓、とくに尿細管に障害を起こしやすく、腎機能障害が重要な症状になります。カドミウムは骨への影響も知られていますが、衛生管理者試験では、呼吸器障害と腎機能障害をセットで覚えると判断しやすくなります。
(2) 鉛中毒では、貧血、末梢(しょう)神経障害、腹部の疝(せん)痛などの症状がみられる。
適切です。鉛は血液、神経、消化器に障害を起こしやすい金属です。血液ではヘモグロビンの合成が妨げられるため貧血がみられます。神経では末梢神経障害が起こり、手足のしびれや筋力低下などにつながります。消化器症状としては、鉛疝痛と呼ばれる強い腹痛が代表的です。鉛中毒は、貧血、末梢神経障害、腹部疝痛という組合せでよく出題されます。
(3) 砒(ひ)素中毒では、角化症、黒皮症などの皮膚障害、鼻中隔穿(せん)孔などの症状がみられる。
適切です。砒素は皮膚や粘膜に特徴的な障害を起こします。慢性中毒では、皮膚が厚く硬くなる角化症、色素沈着による黒皮症などがみられます。また、砒素化合物の粉じんなどにより鼻粘膜が障害されると、鼻中隔穿孔が起こることがあります。皮膚障害と鼻中隔穿孔は、砒素中毒を見分ける重要なキーワードです。
(4) ベリリウム中毒では、接触皮膚炎、肺炎などの症状がみられる。
適切です。ベリリウムは皮膚や呼吸器に障害を起こす有害金属です。皮膚に接触すると接触皮膚炎を起こすことがあり、吸入すると肺炎や慢性ベリリウム肺と呼ばれる肺の障害を起こすことがあります。ベリリウムは少量でも感作を起こし、免疫反応を介して肺に慢性的な炎症を生じる点が特徴です。試験では、ベリリウムと接触皮膚炎、肺炎を関連付けて覚えておくとよいです。
(5) マンガン中毒では、指の骨の溶解、肝臓の血管肉腫などがみられる。
不適切です。マンガン中毒で代表的なのは神経障害です。具体的には、歩行がぎこちなくなる、手指がふるえる、筋肉がこわばる、表情が乏しくなるなど、パーキンソン病に似た症状がみられます。問題文にある指の骨の溶解や肝臓の血管肉腫は、塩化ビニルによる健康障害として知られています。つまり、この選択肢はマンガン中毒の症状と塩化ビニルによる健康障害を入れ替えたひっかけです。
この問題で覚えるポイント
金属中毒では、物質名と代表症状を一対一で丸暗記するだけでなく、どの臓器に障害が出やすいかを意識すると正誤判断が安定します。カドミウムは呼吸器障害と腎機能障害、鉛は貧血、末梢神経障害、腹部疝痛、砒素は角化症、黒皮症、鼻中隔穿孔、ベリリウムは接触皮膚炎と肺炎、マンガンはパーキンソン病様の神経症状が重要です。塩化ビニルは金属ではありませんが、指の骨の溶解と肝臓の血管肉腫が特徴として出題されやすいため、マンガンの神経症状と混同しないように整理しておく必要があります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、実在する健康障害を別の物質に結び付けている点です。指の骨の溶解や肝臓の血管肉腫という症状自体は誤りではありませんが、原因物質がマンガンではなく塩化ビニルです。金属中毒の問題では、文章の前半だけを見て「聞いたことがある症状だ」と判断すると誤答しやすくなります。症状が正しいかだけでなく、その症状がどの物質によるものかまで確認することが重要です。
