出典:第一種衛生管理者2023年(令和5年度)10月公表問題|関係法令(有害業務に係るもの)第8問
問題
労働安全衛生規則の衛生基準について、誤っているものは次のうちどれか。
(1) 炭酸ガス(二酸化炭素)濃度が0.15%を超える場所には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなければならない。
(2) 強烈な騒音を発する屋内作業場においては、その伝ぱを防ぐため、隔壁を設ける等必要な措置を講じなければならない。
(3) 多筒抄紙機により紙を抄(す)く業務を行う屋内作業場については、6か月以内ごとに1回、定期に、等価騒音レベルを測定しなければならない。
(4) 著しく暑熱又は多湿の作業場においては、坑内等特殊な作業場でやむを得ない事由がある場合を除き、休憩の設備を作業場外に設けなければならない。
(5) 屋内作業場に多量の熱を放散する溶融炉があるときは、加熱された空気を直接屋外に排出し、又はその放射するふく射熱から労働者を保護する措置を講じなければならない。
第1種衛生管理者|労働安全衛生規則の衛生基準と作業環境管理を解説
労働安全衛生規則に定められる作業環境管理の基準について、騒音、暑熱、多湿、ふく射熱、炭酸ガス濃度などの衛生基準を正しく判断する問題です。答えは(1)です。炭酸ガス濃度について、通常の事務室等の空気環境基準では0.15%以下という数値が出てきますが、立入禁止や表示が必要となる場所の基準としてそのまま使うわけではありません。0.15%という数値と、立入禁止措置を結び付けている点が誤りです。
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(1) 炭酸ガス(二酸化炭素)濃度が0.15%を超える場所には、関係者以外の者が立ち入ることを禁止し、かつ、その旨を見やすい箇所に表示しなければならない。
不適切です。その理由は、炭酸ガス濃度0.15%という数値は、主に室内空気環境の管理基準として問われる数値であり、これを超えたから直ちに関係者以外の立入禁止と表示が義務付けられるという規定ではないためです。二酸化炭素は、人の呼吸や燃焼などによって増加し、換気が不十分な場所では濃度が高くなります。事務室などでは、空気環境を良好に保つために炭酸ガス濃度を一定以下に保つことが求められますが、問題文のように「0.15%を超える場所には立入禁止表示をしなければならない」とするのは、別の危険場所に関する規制と混同した表現です。試験では、数値だけを覚えていると正しく見えてしまうため、数値がどの場面で使われるものかを確認することが大切です。
(2) 強烈な騒音を発する屋内作業場においては、その伝ぱを防ぐため、隔壁を設ける等必要な措置を講じなければならない。
適切です。その理由は、強い騒音が発生する屋内作業場では、騒音が周囲に広がらないようにする措置が必要だからです。騒音は、長期間さらされることで騒音性難聴などの健康障害につながります。耳栓などの保護具も重要ですが、衛生管理では、まず作業環境そのものを改善する考え方が基本です。隔壁を設ける、防音材を使う、騒音源を囲う、機械の配置を工夫するなど、音の伝ぱを防ぐ措置が求められます。
(3) 多筒抄紙機により紙を抄(す)く業務を行う屋内作業場については、6か月以内ごとに1回、定期に、等価騒音レベルを測定しなければならない。
適切です。その理由は、多筒抄紙機による製紙作業は、著しい騒音を発生しやすい作業として、作業環境測定の対象になるためです。等価騒音レベルとは、一定時間に変動する騒音を、エネルギー的に平均した騒音レベルのことです。瞬間的な大きな音だけでなく、作業時間を通じてどの程度の騒音にさらされているかを評価するために用いられます。騒音作業場では、6か月以内ごとに1回、定期に測定するという周期も重要です。
(4) 著しく暑熱又は多湿の作業場においては、坑内等特殊な作業場でやむを得ない事由がある場合を除き、休憩の設備を作業場外に設けなければならない。
適切です。その理由は、著しく暑い作業場や湿度の高い作業場では、労働者の体温調節に大きな負担がかかり、熱中症や疲労の危険が高くなるためです。休憩設備を作業場外に設けることで、労働者が暑熱や多湿の環境から離れて身体を回復させることができます。ただし、坑内などの特殊な作業場では、作業場外に休憩設備を設けることが現実的に困難な場合があるため、やむを得ない事由がある場合は例外とされています。
(5) 屋内作業場に多量の熱を放散する溶融炉があるときは、加熱された空気を直接屋外に排出し、又はその放射するふく射熱から労働者を保護する措置を講じなければならない。
適切です。その理由は、溶融炉のように多量の熱を放散する設備があると、作業場内の温度上昇やふく射熱によって労働者の健康障害が発生するおそれがあるためです。ふく射熱とは、熱源から空気を介さずに直接伝わる熱のことで、炉の近くにいるだけで強い熱を受ける原因になります。そのため、加熱された空気を屋外へ排出する換気措置や、遮熱板などでふく射熱を防ぐ措置が必要になります。暑熱対策では、空気の温度だけでなく、熱源からの放射熱にも注意することが重要です。
この問題で覚えるポイント
労働安全衛生規則の衛生基準では、騒音、暑熱、多湿、ふく射熱、換気、休憩設備などについて、労働者の健康障害を防ぐための作業環境管理が定められています。騒音については、強烈な騒音を発する屋内作業場では隔壁などによって音の伝ぱを防ぐ措置が必要であり、一定の騒音作業場では6か月以内ごとに1回、等価騒音レベルを測定することが重要です。暑熱又は多湿の作業場では、原則として作業場外に休憩設備を設けますが、坑内等の特殊な作業場でやむを得ない場合には例外があります。多量の熱を放散する溶融炉などがある屋内作業場では、加熱空気の屋外排出やふく射熱からの保護措置が必要です。炭酸ガス濃度0.15%という数値は空気環境管理でよく問われますが、立入禁止や表示義務の基準として単純に結び付けないことが正誤判断のポイントです。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、見覚えのある数値をもっともらしい規制内容に組み合わせている点です。炭酸ガス濃度0.15%という数値は衛生管理者試験で頻出のため、受験者は「これは正しい数値だ」と反応しやすくなります。しかし、試験では数値そのものが正しくても、その数値が使われる場面や義務の内容が違えば誤りになります。特に、空気環境の管理基準と、危険場所への立入禁止措置を混同しないことが重要です。また、騒音や暑熱の選択肢は、隔壁、6か月以内ごとに1回、作業場外の休憩設備、ふく射熱対策など、法令上の表現に近い形で作られているため、正しい選択肢を疑いすぎない冷静さも必要です。数値を暗記するだけでなく、「何のための基準か」「どの作業場に適用されるか」「どの措置が求められるか」をセットで覚えると、同じテーマの問題にも対応しやすくなります。
