出典:第一種衛生管理者2023年(令和5年度)10月公表問題|関係法令(有害業務に係るもの以外のもの)第25問
問題
労働安全衛生法に基づく労働者の心理的な負担の程度を把握するための検査 (以下「ストレスチェック」という。)及びその結果等に応じて実施される医師による面接指導に関する次の記述のうち、法令上、正しいものはどれか。
(1) ストレスチェックを受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの実施の事務に従事してはならない。
(2) 事業者は、ストレスチェックの結果が、衛生管理者及びストレスチェックを受けた労働者に通知されるようにしなければならない。
(3) 面接指導を行う医師として事業者が指名できる医師は、当該事業場の産業医に限られる。
(4) 面接指導の結果は、健康診断個人票に記載しなければならない。
(5) 事業者は、面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するため必要な措置について、面接指導が行われた日から3か月以内に、医師の意見を聴かなければならない。
第1種衛生管理者|ストレスチェック制度と医師による面接指導の基準を解説
ストレスチェック制度では、労働者のメンタルヘルス情報が不利益な人事評価に使われないよう、結果の取扱いや実施事務に関わる者が厳しく制限されています。答えは(1)です。労働者の解雇、昇進、異動について直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの実施事務に従事できません。これは、労働者が安心してストレスチェックを受けられるようにするための重要なルールです。
(1) ストレスチェックを受ける労働者について解雇、昇進又は異動に関して直接の権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの実施の事務に従事してはならない。
適切です。ストレスチェックでは、労働者の心理的な負担の程度という非常に個人的で機微な情報を扱います。そのため、解雇、昇進、異動などについて直接の権限を持つ者が実施事務に関わると、労働者が「結果が人事評価に使われるのではないか」と不安を感じ、正直に回答できなくなるおそれがあります。法令では、このような人事上の直接権限を持つ監督的地位にある者は、ストレスチェックの実施事務に従事してはならないとされています。
(2) 事業者は、ストレスチェックの結果が、衛生管理者及びストレスチェックを受けた労働者に通知されるようにしなければならない。
不適切です。ストレスチェックの結果は、原則として検査を受けた労働者本人に通知されます。事業者が本人の同意なく結果を取得することはできません。衛生管理者に当然に通知されるわけでもありません。衛生管理者は事業場の衛生管理に関わる重要な立場ですが、個々の労働者のストレスチェック結果を自由に知ることができる立場ではありません。ここでは「衛生管理者にも通知される」としている点が誤りです。
(3) 面接指導を行う医師として事業者が指名できる医師は、当該事業場の産業医に限られる。
不適切です。ストレスチェックの結果、高ストレス者に該当し、労働者から申出があった場合には、医師による面接指導が行われます。この面接指導を行う医師は、産業医であることが望ましい場面はありますが、法令上、当該事業場の産業医に限られているわけではありません。「産業医に限られる」という限定表現が誤りです。
(4) 面接指導の結果は、健康診断個人票に記載しなければならない。
不適切です。ストレスチェック後の面接指導の結果は、健康診断個人票ではなく、面接指導の結果に関する記録として作成し、保存します。健康診断個人票は、定期健康診断などの健康診断結果を記録するためのものです。ストレスチェックに基づく面接指導は健康診断とは制度上の位置付けが異なるため、健康診断個人票に記載するという説明は誤りです。
(5) 事業者は、面接指導の結果に基づき、当該労働者の健康を保持するため必要な措置について、面接指導が行われた日から3か月以内に、医師の意見を聴かなければならない。
不適切です。事業者は、面接指導の結果に基づき、必要な就業上の措置について医師の意見を聴かなければなりません。ただし、その期限は面接指導が行われた日から遅滞なくであり、具体的にはおおむね1か月以内とされています。「3か月以内」としている点が誤りです。3か月という数字は別の制度や保存期間などと混同しやすいため注意が必要です。
この問題で覚えるポイント
ストレスチェックは、常時50人以上の労働者を使用する事業場で実施義務があります。結果は原則として労働者本人に直接通知され、本人の同意なく事業者が結果を取得することはできません。人事権を持つ者は、労働者の解雇、昇進、異動に直接関わる立場であるため、ストレスチェックの実施事務に従事できません。高ストレス者に該当した労働者が申し出た場合、事業者は医師による面接指導を実施します。面接指導後、事業者は医師の意見を聴き、必要に応じて就業場所の変更、作業内容の転換、労働時間の短縮などの措置を検討します。ストレスチェック結果、面接指導結果、健康診断個人票はそれぞれ制度上の位置付けが異なるため、誰に通知されるのか、どの記録に残すのか、どの期限で医師の意見を聴くのかを区別して覚えることが重要です。
ひっかけポイント
このテーマでは、ストレスチェックの結果を誰が見ることができるのかがよく問われます。衛生管理者や事業者は職場の安全衛生管理に関わるため、結果を当然に見られると考えてしまいがちですが、本人の同意がなければ事業者側は取得できません。また、産業医が関わる制度であるため、面接指導医は必ずその事業場の産業医に限られると誤解しやすい点にも注意が必要です。さらに、健康診断とストレスチェックはどちらも労働安全衛生法上の制度であるため、記録方法を混同しやすくなっています。数値では「3か月以内」のようにもっともらしい期限が出されますが、面接指導後の医師の意見聴取は遅滞なく、おおむね1か月以内と整理しておくと正誤判断がしやすくなります。
