出典:第一種衛生管理者2022年(令和4年度)10月公表問題|労働生理第37問
問題
体温調節に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) 体温調節中枢は、脳幹の延髄にある。
(2) 暑熱な環境においては、内臓の血流量が増加し体内の代謝活動が亢(こう)進することにより、人体からの熱の放散が促進される。
(3) 体温調節のように、外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保つ生体の仕組みを同調性といい、筋肉と神経系により調整されている。
(4) 計算上、体重70kgの人の体表面から10gの汗が蒸発すると、体温が約1℃下がる。
(5) 発汗のほかに、皮膚及び呼気から水分を蒸発させている現象を不感蒸泄(せつ)という。
第1種衛生管理者|体温調節の仕組みと発汗・不感蒸泄の基礎を解説
体温調節では、体温調節中枢の場所、暑熱環境での血流変化、恒常性の意味、発汗による放熱量、不感蒸泄の定義がよく問われます。正しい答えは(5)です。発汗とは別に、皮膚や呼気から意識しないうちに水分が蒸発している現象を不感蒸泄といいます。体温を一定に保つ仕組みは同調性ではなく恒常性であり、体温調節中枢は延髄ではなく視床下部にある点も重要です。
(1) 体温調節中枢は、脳幹の延髄にある。
不適切です。体温調節中枢は、脳の視床下部にあります。視床下部は自律神経や内分泌の調節に深く関わる部位で、体温が上がり過ぎたり下がり過ぎたりしないように、発汗、皮膚血管の拡張や収縮、ふるえ、代謝の調節などを行います。延髄は呼吸、心拍、血圧など生命維持に関わる中枢を含む重要な部位ですが、体温調節中枢そのものではありません。
(2) 暑熱な環境においては、内臓の血流量が増加し体内の代謝活動が亢(こう)進することにより、人体からの熱の放散が促進される。
不適切です。暑熱環境では、体内の熱を外へ逃がすために皮膚の血管が拡張し、皮膚血流量が増加します。皮膚に多くの血液を送ることで、体表面から熱を放散しやすくします。内臓の血流量が増加して代謝活動が亢進するわけではありません。代謝活動が亢進すると熱産生が増えるため、暑い環境で体温を下げる方向とは逆になります。
(3) 体温調節のように、外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保つ生体の仕組みを同調性といい、筋肉と神経系により調整されている。
不適切です。外部環境が変化しても体温、血糖値、血液のpHなど身体内部の状態を一定の範囲に保つ仕組みは、同調性ではなく恒常性、またはホメオスタシスといいます。体温調節は、視床下部を中心として、自律神経系、内分泌系、筋肉の活動などが関わって行われます。用語としては「恒常性」が正しいため、この選択肢は誤りです。
(4) 計算上、体重70kgの人の体表面から10gの汗が蒸発すると、体温が約1℃下がる。
不適切です。汗が蒸発するときには気化熱が奪われ、体から熱が放散されます。ただし、10gの汗の蒸発で体重70kgの人の体温が約1℃下がるほどの大きな効果はありません。体温を約1℃下げるには、体重70kgの人では約70kcalの熱を失う必要があります。汗1gの蒸発で奪われる熱は約0.58kcalなので、10gでは約5.8kcalにすぎません。必要量には大きく足りないため、数値の設定が誤っています。
(5) 発汗のほかに、皮膚及び呼気から水分を蒸発させている現象を不感蒸泄(せつ)という。
適切です。不感蒸泄とは、発汗として自覚される汗とは別に、皮膚や呼気から自然に水分が失われる現象です。汗のように目に見えたり感じたりしにくいため「不感」と表現されます。皮膚表面や呼吸によって水分が蒸発することで、体内の水分は少しずつ失われています。体温調節や水分管理に関係する基本用語として、試験でも押さえておきたい内容です。
この問題で覚えるポイント
体温調節中枢は視床下部にあり、延髄ではありません。暑熱環境では皮膚血管が拡張して皮膚血流量が増え、体表面から熱を逃がしやすくなります。寒冷環境では皮膚血管が収縮して熱の放散を抑え、必要に応じてふるえなどで熱産生を増やします。外部環境が変わっても体内の状態を一定に保つ仕組みは恒常性、またはホメオスタシスです。汗が蒸発すると気化熱によって体から熱が奪われますが、少量の汗で体温が大きく下がるわけではありません。不感蒸泄は、発汗とは別に皮膚や呼気から自覚しにくい形で水分が蒸発する現象です。発汗と不感蒸泄はどちらも水分喪失に関わりますが、発汗は汗腺からの分泌が中心で、不感蒸泄は意識しにくい皮膚や呼気からの水分蒸発である点を区別して覚えると正誤判断がしやすくなります。
ひっかけポイント
体温調節中枢を延髄とする誤りは、延髄が呼吸や循環など生命維持に重要な中枢であることを利用したひっかけです。体温調節は視床下部と覚えておく必要があります。暑熱環境では「血流量が増加する」という部分だけを見ると正しく見えますが、増加するのは主に皮膚血流量であり、内臓血流量や代謝活動の亢進ではありません。恒常性を同調性と言い換える誤りも頻出で、言葉の雰囲気に惑わされやすい部分です。汗の蒸発による放熱では、発汗が体温を下げるという方向性は正しくても、数値が極端にずれている場合があります。正しそうな説明の中に、場所、用語、対象、数値のズレが混ざっていないかを確認することが、このテーマの正答につながります。
