出典:第一種衛生管理者2022年(令和4年度)10月公表問題|労働衛生(有害業務に係るもの以外のもの)第29問
問題
厚生労働省の「事業者が講ずべき快適な職場環境の形成のための措置に関する指針」において、快適な職場環境の形成のための措置の実施に関し、考慮すべき事項とされていないものは次のうちどれか。
(1) 継続的かつ計画的な取組
(2) 快適な職場環境の基準値の達成
(3) 労働者の意見の反映
(4) 個人差への配慮
(5) 潤いへの配慮
第1種衛生管理者|快適な職場環境形成指針と快適職場づくりの考え方を解説
快適な職場環境の形成では、単に法令上の最低基準を満たすだけでなく、労働者が働きやすいと感じられる環境を継続的に整えることが重視されます。答えは(2)です。快適職場づくりの指針では、継続的かつ計画的な取組、労働者の意見の反映、個人差への配慮、潤いへの配慮などが重要な考慮事項とされていますが、「快適な職場環境の基準値の達成」という一律の数値基準を達成することは、考慮すべき事項として定められていません。
(1) 継続的かつ計画的な取組
適切です。快適な職場環境づくりは、一度設備を整えれば終わりというものではありません。職場の状況、作業内容、労働者の年齢構成、季節、設備の老朽化などによって、快適さに影響する要因は変化します。そのため、職場環境の問題点を把握し、改善計画を立て、実施し、見直すという継続的な取組が必要です。試験では、快適職場づくりは「一時的な対策」ではなく「継続的かつ計画的に進めるもの」と押さえておくと判断しやすくなります。
(2) 快適な職場環境の基準値の達成
不適切です。これが正解です。快適な職場環境の形成に関する指針は、労働者が快適に働ける職場をつくるための考え方を示したものであり、特定の数値基準を一律に達成することを中心にしたものではありません。作業環境測定や事務所衛生基準規則などでは、温度、湿度、一酸化炭素、二酸化炭素などの基準値が問題になることがありますが、快適職場づくりの指針で問われるのは、労働者の意見や個人差に配慮しながら、働きやすい環境を形成するという考え方です。ここでは「基準値の達成」という表現が、他の労働衛生分野の知識と混同させるためのひっかけになっています。
(3) 労働者の意見の反映
適切です。快適さは、実際にその職場で働く労働者の感じ方と深く関係します。管理者や事業者だけで判断すると、現場で本当に困っていることを見落とす可能性があります。たとえば、温度、照明、騒音、休憩スペース、作業姿勢、職場の雰囲気などは、現場で働く人の意見を聞くことで具体的な改善点が見えやすくなります。そのため、労働者の意見を反映することは、快適な職場環境を形成するうえで重要な考慮事項です。
(4) 個人差への配慮
適切です。快適と感じる条件には個人差があります。暑さや寒さの感じ方、照明の明るさ、騒音への感じ方、身体的負担の感じ方などは、人によって異なります。また、年齢、性別、体格、健康状態、経験年数などによっても、働きやすさは変わります。快適職場づくりでは、すべての労働者に同じ条件を押し付けるのではなく、できるだけ幅広い労働者が働きやすいように配慮することが求められます。
(5) 潤いへの配慮
適切です。快適な職場環境という場合、温度や照明などの物理的条件だけでなく、職場にゆとりや安らぎを与える要素も重視されます。たとえば、休憩場所の整備、緑化、清潔感、リフレッシュできる空間づくりなどは、労働者の心理的な負担を軽減し、働きやすさにつながります。このような「潤いへの配慮」は、快適職場づくりの特徴的な考え方の一つです。
この問題で覚えるポイント
快適な職場環境の形成に関する指針では、職場を単に安全衛生上問題がない状態にするだけでなく、労働者が働きやすいと感じられる環境をつくることが重視されます。重要なのは、継続的かつ計画的に取り組むこと、労働者の意見を反映すること、暑さ寒さや明るさなどに対する個人差へ配慮すること、休憩や緑化など心理的なゆとりにつながる潤いへ配慮することです。数値基準の達成が中心となる作業環境管理や事務所衛生基準とは異なり、快適職場づくりは一律の基準値だけで判断するものではありません。試験では、「基準値」「測定値」「許容濃度」などの言葉が出てきた場合、快適職場形成指針の考え方と混同しないことが大切です。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「快適な職場環境」という言葉から、温度、湿度、照度、二酸化炭素濃度などの基準値を思い浮かべさせる点にあります。労働衛生では数値基準を覚える問題が多いため、「基準値の達成」という選択肢を見ると正しそうに感じやすくなります。しかし、快適職場づくりの指針で問われているのは、測定値をクリアすることではなく、労働者の意見や個人差を踏まえながら、継続的に働きやすい環境を整える姿勢です。数値管理の問題なのか、快適職場形成の考え方の問題なのかを切り分けることが、同じテーマでの正誤判断に直結します。
