出典:第一種衛生管理者2021年(令和3年度)10月公表問題|労働生理第35問
問題
神経系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 神経系を構成する基本的な単位である神経細胞は、通常、1個の細胞体、1本の軸索及び複数の樹状突起から成り、ニューロンともいわれる。
(2) 体性神経は、運動及び感覚に関与し、自律神経は、呼吸、循環などに関与する。
(3) 大脳の皮質は、神経細胞の細胞体が集まっている灰白質で、感覚、思考などの作用を支配する中枢として機能する。
(4) 交感神経系と副交感神経系は、各種臓器において双方の神経線維が分布し、相反する作用を有している。
(5) 交感神経系は、身体の機能をより活動的に調節する働きがあり、心拍数を増加させたり、消化管の運動を高める。
第1種衛生管理者|神経系を解説
この問題では、神経系の基本構造、体性神経と自律神経の役割、大脳皮質、交感神経系と副交感神経系の働きが問われています。神経細胞であるニューロンの構造や、自律神経の相反する作用を整理していれば判断しやすい問題です。誤っているのは、交感神経系が消化管の運動を高めるとしている記述です。交感神経系は活動時や緊張時に働き、心拍数を増加させますが、消化管の運動は一般に抑制します。
(1) 神経系を構成する基本的な単位である神経細胞は、通常、1個の細胞体、1本の軸索及び複数の樹状突起から成り、ニューロンともいわれる。
適切です。神経系の基本単位は神経細胞であり、ニューロンとも呼ばれます。ニューロンは、核を含む細胞体、刺激を受け取る樹状突起、興奮を他の細胞へ伝える軸索から成ります。通常、1個の細胞体に対して、1本の軸索と複数の樹状突起を持つ構造として理解します。神経系の問題では、ニューロンという用語と、細胞体、軸索、樹状突起の役割を合わせて押さえておくことが大切です。
(2) 体性神経は、運動及び感覚に関与し、自律神経は、呼吸、循環などに関与する。
適切です。体性神経は、骨格筋を動かす運動や、皮膚などからの感覚情報の伝達に関与します。自分の意思で手足を動かしたり、痛みや温度を感じたりする働きと関係します。自律神経は、呼吸、循環、消化、発汗、体温調節など、生命維持に関わる機能を無意識のうちに調節します。体性神経は運動と感覚、自律神経は内臓機能の調節と整理すると判断しやすくなります。
(3) 大脳の皮質は、神経細胞の細胞体が集まっている灰白質で、感覚、思考などの作用を支配する中枢として機能する。
適切です。大脳の皮質は、大脳の表面にある灰白質の部分です。灰白質は主に神経細胞の細胞体が集まっている部分で、感覚、運動、思考、記憶、判断などの高度な働きに関与します。大脳皮質は人間の精神活動や随意運動に深く関係する中枢として重要です。白質は主に神経線維が集まる部分であるため、灰白質と白質の違いもあわせて覚えておくとよいです。
(4) 交感神経系と副交感神経系は、各種臓器において双方の神経線維が分布し、相反する作用を有している。
適切です。自律神経系は、交感神経系と副交感神経系に分けられます。多くの臓器には両方の神経線維が分布しており、互いに反対方向の作用を示すことで体内の状態を調節しています。たとえば、交感神経系は心拍数を増加させ、副交感神経系は心拍数を減少させます。消化管では、交感神経系は運動を抑制し、副交感神経系は運動を促進します。このように、両者のバランスによって身体機能が保たれています。
(5) 交感神経系は、身体の機能をより活動的に調節する働きがあり、心拍数を増加させたり、消化管の運動を高める。
不適切です。交感神経系は、身体を活動的な状態にする働きがあります。緊張、運動、ストレス、危険への対応などの場面で優位になり、心拍数を増加させ、血圧を上げ、気管支を拡張する方向に働きます。しかし、消化管の運動については高めるのではなく、一般に抑制します。食後など休息状態で消化管の運動を促進するのは、副交感神経系の働きです。したがって、心拍数の増加は正しい内容ですが、消化管の運動を高めるという部分が誤りです。
この問題で覚えるポイント
神経系は、中枢神経系と末梢神経系に大きく分けられます。中枢神経系には脳と脊髄が含まれ、末梢神経系には体性神経と自律神経が含まれます。体性神経は運動と感覚に関与し、自律神経は内臓、血管、汗腺などを無意識に調節します。自律神経は交感神経系と副交感神経系に分かれ、交感神経系は活動時に優位となり、心拍数増加、血圧上昇、気管支拡張、消化管運動の抑制などに働きます。副交感神経系は休息時に優位となり、心拍数低下、消化管運動の促進などに働きます。大脳皮質は神経細胞の細胞体が集まる灰白質で、感覚、思考、判断などの高次機能を担います。ニューロンは細胞体、軸索、樹状突起から成ることも基本知識として押さえておきましょう。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、交感神経系が身体を活動的にするという前半部分が正しいため、後半の消化管の運動まで正しいように見えてしまう点です。交感神経系は全身を活発にするというイメージだけで覚えていると、消化管の運動も高めると判断しやすくなります。しかし、活動時には骨格筋や心臓への対応が優先され、消化活動は抑えられます。自律神経の問題では、単に交感神経は活動、副交感神経は休息と覚えるだけでなく、心臓、気管支、消化管、瞳孔など臓器ごとの作用を対比して整理することが重要です。文章の一部だけが正しく、別の部分だけが誤っている選択肢に注意しましょう。
