出典:第一種衛生管理者2021年(令和3年度)10月公表問題|労働衛生(有害業務に係るもの)第16問
問題
作業環境における騒音及びそれによる健康障害に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 音圧レベルは、その音圧と、通常、人間が聴くことができる最も小さな音圧(20µPa)との比の常用対数を20倍して求められ、その単位はデシベル(dB)で表される。
(2) 等価騒音レベルは、単位時間(1分間)における音圧レベルを10秒間ごとに平均化した幾何平均値で、変動する騒音レベルの平均値として表した値である。
(3) 騒音レベルの測定は、通常、騒音計の周波数重み付け特性Aで行う。
(4) 騒音性難聴の初期に認められる4,000Hz付近を中心とする聴力低下の型をc5dipという。
(5) 騒音は、自律神経系や内分泌系へも影響を与え、交感神経の活動の亢進や副腎皮質ホルモンの分泌の増加が認められることがある。
第1種衛生管理者|騒音測定方法と騒音性難聴・c5dipの特徴を解説
騒音に関する問題では、音圧レベル、等価騒音レベル、A特性、騒音性難聴のc5dip、自律神経系や内分泌系への影響がよく問われます。答えは(2)です。等価騒音レベルは、変動する騒音を一定時間内のエネルギー平均として表した値であり、10秒ごとの幾何平均値ではありません。騒音は単なる「うるささ」だけでなく、聴覚障害やストレス反応にも関係するため、測定方法と健康影響をセットで整理することが大切です。
(1) 音圧レベルは、その音圧と、通常、人間が聴くことができる最も小さな音圧(20µPa)との比の常用対数を20倍して求められ、その単位はデシベル(dB)で表される。
適切です。音圧レベルは、基準音圧である20µPaに対する音圧の比を常用対数で表したものです。音圧そのものは非常に広い範囲で変化するため、そのまま扱うと比較しにくくなります。そこで、対数を使ってデシベルという単位で表します。音圧レベルは「20log」で計算される点が重要です。音の強さのようなエネルギー量では「10log」が使われるため、ここを混同しないようにしましょう。
(2) 等価騒音レベルは、単位時間(1分間)における音圧レベルを10秒間ごとに平均化した幾何平均値で、変動する騒音レベルの平均値として表した値である。
不適切です。等価騒音レベルは、一定時間内に変動する騒音について、その時間内の音のエネルギーを平均し、同じエネルギーをもつ一定騒音のレベルとして表したものです。単純な算術平均や幾何平均ではありません。また、「1分間」や「10秒間ごとに平均化した幾何平均値」という説明も誤りです。騒音はデシベルで表されますが、デシベルは対数表示なので、数値をそのまま平均しても正しい騒音の大きさを表せません。等価騒音レベルは、変動騒音をエネルギーの観点から評価する指標と覚えると判断しやすくなります。
(3) 騒音レベルの測定は、通常、騒音計の周波数重み付け特性Aで行う。
適切です。騒音レベルの測定では、通常、騒音計の周波数重み付け特性Aを用います。A特性は、人間の耳の感じ方に近づけるように周波数ごとの感度を補正するものです。人間の耳は、低い音や非常に高い音に対して同じ音圧でも感じ方が異なります。そのため、作業環境における騒音評価では、人の聴覚特性を反映したA特性が一般的に使われます。単位としてはdB(A)のように表されることもあります。
(4) 騒音性難聴の初期に認められる4,000Hz付近を中心とする聴力低下の型をc5dipという。
適切です。騒音性難聴では、初期に4,000Hz付近の聴力が低下しやすく、この特徴的な聴力低下の型をc5dipといいます。会話でよく使う周波数帯の聴力低下が目立つ前に、高音域で障害が現れることがあるため、本人が気づきにくい場合もあります。試験では、騒音性難聴、4,000Hz付近、c5dipをセットで覚えておくと正誤判断に直結します。
(5) 騒音は、自律神経系や内分泌系へも影響を与え、交感神経の活動の亢進や副腎皮質ホルモンの分泌の増加が認められることがある。
適切です。騒音の影響は耳だけに限られません。大きな音や不快な音にさらされると、身体はストレス反応を起こし、交感神経の活動が高まることがあります。また、内分泌系にも影響し、副腎皮質ホルモンの分泌が増加することがあります。騒音による健康障害では、騒音性難聴のような聴覚への影響だけでなく、循環器系や自律神経系、内分泌系への影響も含めて理解しておくことが大切です。
この問題で覚えるポイント
騒音の学習では、音圧レベルは20µPaを基準に20logで表し、単位はdBであることを押さえます。等価騒音レベルは、変動する騒音を一定時間内のエネルギー平均として評価する指標であり、単純平均や幾何平均ではありません。騒音レベルの測定では、人間の聴覚特性に近づけるため、通常は周波数重み付け特性Aを用います。騒音性難聴では、初期に4,000Hz付近の聴力低下が現れやすく、この型をc5dipといいます。騒音の健康影響は聴覚障害だけでなく、交感神経の活動亢進や副腎皮質ホルモン分泌の増加など、自律神経系や内分泌系への影響も含まれます。
ひっかけポイント
この問題の最大のひっかけは、等価騒音レベルを「平均値」という言葉だけで判断させようとしている点です。平均という表現があると、単純平均や幾何平均を思い浮かべやすいですが、騒音のdBは対数表示なので、そのまま平均してはいけません。等価騒音レベルはエネルギー平均として扱う指標です。また、音圧レベルの20log、A特性、c5dipの4,000Hz付近は、数値や用語がセットで問われやすい定番知識です。文章の一部がもっともらしくても、「幾何平均」「10秒ごと」「1分間」などの細かい条件が不自然な場合は、定義そのものに立ち戻って確認することが大切です。
