問題
地中に埋設された鉄製配管の電気化学的腐食を防止するために、流電陽極として使用できる金属は次のA~Eのうちいくつあるか。
A:マグネシウム
B:亜鉛
C:アルミニウム
D:銀
E:銅
(1) 1つ
(2) 2つ
(3) 3つ
(4) 4つ
(5) 5つ
危険物取扱者乙種4類|金属の電気化学的腐食を解説
地中に埋設された鉄製配管は、土壌中の水分や電解質の影響で電気化学的腐食を受けることがあります。これを防ぐ方法の一つが、鉄よりもイオン化傾向の大きい金属を流電陽極として接続し、その金属を先に腐食させて鉄を守る方法です。マグネシウム、亜鉛、アルミニウムは鉄よりイオン化傾向が大きいため流電陽極として使用できます。銀と銅は鉄よりイオン化傾向が小さいため、鉄を保護する流電陽極には適しません。よって、使用できる金属は3つで、答えは(3)です。

(1) 1つ
不適切です。流電陽極として使える金属は1つだけではありません。鉄を防食するためには、鉄よりもイオン化傾向が大きく、鉄より先に酸化されやすい金属を接続します。Aのマグネシウム、Bの亜鉛、Cのアルミニウムはいずれも鉄よりイオン化傾向が大きく、犠牲的に腐食して鉄を守ることができます。そのため、1つとする判断は少なすぎます。
(2) 2つ
不適切です。マグネシウムと亜鉛だけを選んでしまうと、アルミニウムを見落とすことになります。アルミニウムも鉄よりイオン化傾向が大きい金属です。実際には、アルミニウムは表面に酸化皮膜を作りやすい性質がありますが、電気化学的防食の考え方では鉄より卑な金属として流電陽極に利用できる金属に含まれます。したがって、2つでは足りません。
(3) 3つ
適切です。流電陽極として使用できるのは、Aのマグネシウム、Bの亜鉛、Cのアルミニウムの3つです。これらは鉄よりイオン化傾向が大きく、鉄と接続すると自分が陽極となって先に酸化されます。陽極側では金属がイオンとなって溶け出し、陰極側となる鉄は酸化されにくくなるため、鉄製配管の腐食を防ぐことができます。このように、守りたい金属よりも腐食しやすい金属をあえて接続する方法を、流電陽極法または犠牲陽極法といいます。
(4) 4つ
不適切です。4つと考える場合、銀または銅のどちらかも流電陽極に使えると判断している可能性があります。しかし、銀や銅は鉄よりイオン化傾向が小さく、鉄よりも酸化されにくい金属です。鉄と銅、または鉄と銀が電解質中で接触すると、むしろ鉄の方が陽極となって腐食しやすくなります。鉄を守る目的では、銀や銅を流電陽極として数えてはいけません。
(5) 5つ
不適切です。すべての金属が流電陽極として使えるわけではありません。流電陽極に適するかどうかは、単に金属であるかどうかではなく、守りたい金属よりイオン化傾向が大きいかどうかで判断します。銀と銅は鉄よりイオン化傾向が小さいため、鉄を保護するどころか、条件によっては鉄の腐食を促進する組合せになります。よって、5つすべてを選ぶのは誤りです。
この問題で覚えるポイント
電気化学的腐食では、金属が電解質中で電池のような状態を作り、陽極になった金属が酸化されて腐食します。鉄製配管を守るには、鉄よりイオン化傾向の大きい金属を接続し、その金属を陽極として先に腐食させます。この方法を流電陽極法または犠牲陽極法といいます。試験では、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムは鉄よりイオン化傾向が大きく、鉄の防食用の流電陽極として使えると覚えると判断しやすくなります。銅や銀は鉄よりイオン化傾向が小さいため、鉄を守る流電陽極にはなりません。金属のイオン化傾向は、マグネシウム、アルミニウム、亜鉛、鉄、銅、銀の順に小さくなる流れで押さえておくと、鉄より前にある金属は鉄を守る側、鉄より後ろにある金属は鉄を守る流電陽極には不適切だと判断できます。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、金属なら何でも流電陽極に使えると考えさせる点にあります。流電陽極は、ただ電気を通す金属を接続するのではなく、鉄よりもイオン化傾向が大きい金属を選ぶ必要があります。また、アルミニウムは表面に酸化皮膜を作りやすいという知識があるため、流電陽極から外してしまう受験者もいますが、鉄よりイオン化傾向が大きい金属として数えるのがこの問題での正しい判断です。銅や銀は日常的にはさびにくく、安定した金属という印象がありますが、その安定性こそが流電陽極に向かない理由です。電気化学的腐食の問題では、「さびにくい金属を付ければ鉄も守れる」と考えるのではなく、「鉄より先に腐食してくれる金属を選ぶ」と考えることが重要です。
