出典:建築物衛生管理技術者試験令和7年度(2025年)|空気環境の調整第81問
問題
空気調和・換気設備の維持管理に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) レジオネラ症は、レジオネラ属菌が空調・換気設備を介して室内に侵入することなどによって引き起こされる。
(2) 点検、整備、検査、修理を行う業務は保全業務に位置づけられる。
(3) 平均故障間隔(MTBF)とは、システム、機器、部品等で発生する故障間の動作時間の平均値をいう。
(4) 故障停止時の影響度が大きい機器を、特に重要機器として点検レベルを高く設定し、重点的に管理する。
(5) 事後保全は、部品の劣化を保全計画に組み入れて計画的に修理、交換する保全方法である。
ビル管過去問|空調・換気設備の維持管理とMTBFを解説
この問題は、空気調和・換気設備の維持管理に関する基本用語と保全方法の違いを問う問題です。特に、事後保全、予防保全、平均故障間隔、重要機器の管理、レジオネラ症対策の考え方を整理しておくことが大切です。最も不適当な選択肢は(5)です。

(1) レジオネラ症は、レジオネラ属菌が空調・換気設備を介して室内に侵入することなどによって引き起こされる。
適切です。レジオネラ症は、レジオネラ属菌を含んだ細かい水滴、つまりエアロゾルを吸い込むことで感染することがあります。空調設備では、冷却塔、加湿装置、給湯設備など、水を扱う設備が関係します。特に冷却塔では、管理が不十分だとレジオネラ属菌が増殖し、飛散した水滴が外気取入口などを通じて室内に入り込むおそれがあります。そのため、清掃、消毒、水質管理などの維持管理が重要です。
(2) 点検、整備、検査、修理を行う業務は保全業務に位置づけられる。
適切です。保全業務とは、設備の機能を維持し、故障や性能低下を防ぐために行う業務です。点検は異常の有無を確認する作業、整備は正常な状態を保つための調整や清掃、検査は性能や安全性を確認する作業、修理は故障や不具合を回復させる作業です。これらはいずれも設備を安全で安定して使用するための保全業務に含まれます。
(3) 平均故障間隔(MTBF)とは、システム、機器、部品等で発生する故障間の動作時間の平均値をいう。
適切です。MTBFはMean Time Between Failuresの略で、修理して再使用できる機器などについて、ある故障から次の故障までの平均動作時間を表します。MTBFが長いほど、故障しにくく信頼性が高い機器と考えられます。似た用語にMTTRがありますが、こちらはMean Time To Repairの略で、故障してから修復するまでの平均時間を表します。試験では、MTBFとMTTRの意味の違いが問われやすいです。
(4) 故障停止時の影響度が大きい機器を、特に重要機器として点検レベルを高く設定し、重点的に管理する。
適切です。すべての機器を同じ頻度、同じ水準で点検するのではなく、故障したときの影響が大きい機器は重点的に管理します。たとえば、空調停止により病院、電算室、クリーンルームなどの機能に大きな影響を与える機器は、重要機器として点検頻度や点検内容を強化する必要があります。限られた人員や費用の中で効率よく維持管理を行うためにも、重要度に応じた管理は合理的な考え方です。
(5) 事後保全は、部品の劣化を保全計画に組み入れて計画的に修理、交換する保全方法である。
不適切です。事後保全とは、設備や部品が故障した後に修理や交換を行う保全方法です。つまり、故障が発生してから対応する方法です。一方、部品の劣化をあらかじめ保全計画に組み入れて、計画的に修理や交換を行う方法は予防保全に該当します。したがって、この選択肢は「事後保全」と「予防保全」の説明を取り違えているため不適切です。
この問題で覚えるポイント
空調・換気設備の維持管理では、設備の性能を維持し、故障や衛生上の問題を防ぐことが重要です。保全業務には、点検、整備、検査、修理などが含まれます。事後保全は、故障してから修理する方法です。予防保全は、故障する前に点検や部品交換を計画的に行う方法です。状態監視保全は、振動、温度、圧力、電流値などの状態を監視し、劣化の兆候を見て必要な時期に保全を行う考え方です。 MTBFは故障と故障の間の平均動作時間を表し、機器の信頼性を判断する指標です。MTBFが長いほど故障しにくいと考えます。MTTRは故障してから修理が完了するまでの平均時間を表し、保全性や復旧のしやすさを判断する指標です。MTBFは「故障までの間隔」、MTTRは「修理にかかる時間」と整理すると覚えやすいです。 レジオネラ症は、水を扱う設備で増殖したレジオネラ属菌を含むエアロゾルを吸い込むことで感染することがあります。空調設備では、冷却塔や加湿装置などが関連します。特に冷却塔は、清掃、消毒、水質管理を怠ると衛生上のリスクが高まります。空調設備の維持管理は、単に機械を動かすためだけでなく、利用者の健康を守るためにも必要です。 重要機器は、故障した場合の影響が大きい機器です。病院、電算室、クリーンルーム、重要な生産施設などでは、空調や換気の停止が安全性、衛生性、業務継続に大きく影響します。そのため、重要機器は点検レベルを高く設定し、重点的に管理します。試験では、設備の重要度に応じて管理水準を変えるという考え方が正しいと判断できることが大切です。
ひっかけポイント
この問題の最大のひっかけは、「事後保全」と「予防保全」の混同です。事後保全という言葉には「保全」という語が入っているため、計画的な管理のように見えますが、実際には故障後に対応する方法です。部品の劣化を予測して計画的に修理や交換を行うのは予防保全です。この違いを曖昧にしている文章は、試験でよく出されます。 また、MTBFとMTTRの混同にも注意が必要です。MTBFは故障間の平均動作時間であり、信頼性の指標です。MTTRは修理にかかる平均時間であり、保全性の指標です。どちらもアルファベットの略語で似ていますが、「B」はBetween Failures、つまり故障と故障の間、「R」はRepair、つまり修理と覚えると区別しやすくなります。 レジオネラ症については、空調設備そのものが病気を直接発生させるというより、水系設備で増殖した菌がエアロゾルとして飛散し、吸入されることが問題です。空調・換気設備を介するという表現が出た場合は、冷却塔や加湿装置、外気取入口との関係を思い浮かべると判断しやすくなります。 維持管理の問題では、日常感覚だけで判断すると「壊れてから直すのも計画的な保全ではないか」と考えてしまうことがあります。しかし、試験では用語の定義が重視されます。故障後に直すのが事後保全、故障前に計画的に対応するのが予防保全という区別を軸に判断することが重要です。