出典:建築物衛生管理技術者試験令和7年度(2025年)|建築物衛生行政概論第3問
問題
建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下「建築物衛生法」という。)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 建築物衛生法は、建築物の維持管理面について規制を行っている。
(2) 建築物衛生法に基づく事業の登録に関する事務は、都道府県知事が行う。
(3) 特定建築物以外の建築物であっても、多数の者が使用し、又は利用する建築物については、建築物環境衛生管理基準に従って維持管理をするように努めなければならない。
(4) 建築物環境衛生管理技術者に、建築物環境衛生管理基準の遵守を義務付けている。
(5) 特定建築物の所有者等には、所有者以外に、特定建築物の全部の管理について権原を有する者が含まれる。
ビル管過去問|建築物衛生法を解説
建築物衛生法は、特定建築物などの衛生的な環境を確保するため、建築物の維持管理に関する基準や管理体制を定めた法律です。この問題では、建築物衛生法の目的、事業登録、建築物環境衛生管理基準の適用対象、義務を負う者の違いが問われています。誤っている選択肢は(4)です。建築物環境衛生管理基準の遵守義務を負うのは、建築物環境衛生管理技術者ではなく、特定建築物の所有者等です。

(1) 建築物衛生法は、建築物の維持管理面について規制を行っている。
適切です。建築物衛生法は、建築物そのものの構造や建築工事を主に規制する法律ではなく、建築物を使用していく中で衛生的な環境を保つための維持管理を規制する法律です。具体的には、空気環境、給水、排水、清掃、ねずみ等の防除など、建物を利用する人の健康に関わる管理が対象になります。建築基準法が建物の構造や安全性に関わる面を扱うのに対し、建築物衛生法は使用開始後の衛生管理に重点があると整理すると理解しやすいです。
(2) 建築物衛生法に基づく事業の登録に関する事務は、都道府県知事が行う。
適切です。建築物衛生法では、建築物清掃業、建築物空気環境測定業、建築物飲料水貯水槽清掃業など、建築物の衛生管理に関わる一定の事業について登録制度が設けられています。この登録に関する事務は、都道府県知事が行います。登録制度は、衛生管理に関する事業者が一定の人的・物的基準を満たしていることを確認し、建築物の衛生的な維持管理を確保するための仕組みです。
(3) 特定建築物以外の建築物であっても、多数の者が使用し、又は利用する建築物については、建築物環境衛生管理基準に従って維持管理をするように努めなければならない。
適切です。建築物環境衛生管理基準は、原則として特定建築物の所有者等に対して遵守が求められる基準です。ただし、特定建築物に該当しない建築物であっても、多数の人が使用し、又は利用する建築物については、この基準に従って維持管理をするよう努める必要があります。ここで重要なのは、特定建築物ではないから何もしなくてよいわけではないという点です。多数の人が利用する建物では、健康被害を防ぐため、衛生的な環境を保つ努力義務が課されています。
(4) 建築物環境衛生管理技術者に、建築物環境衛生管理基準の遵守を義務付けている。
不適切です。建築物環境衛生管理基準の遵守義務を負うのは、建築物環境衛生管理技術者ではなく、特定建築物の所有者等です。建築物環境衛生管理技術者は、特定建築物の維持管理が適切に行われるように意見を述べたり、管理業務に関与したりする専門的な立場の者です。しかし、法律上、基準を守る責任の主体は所有者等であり、管理技術者本人に直接その遵守義務を負わせているわけではありません。この問題では、管理技術者の役割と、所有者等の法的責任を混同しないことが重要です。
(5) 特定建築物の所有者等には、所有者以外に、特定建築物の全部の管理について権原を有する者が含まれる。
適切です。建築物衛生法でいう特定建築物の所有者等には、単に建物の所有者だけでなく、特定建築物の全部の管理について権原を有する者も含まれます。たとえば、所有者とは別に建物全体の管理権限を持つ者がいる場合、その者も法律上の責任主体になり得ます。建物の衛生管理では、実際に管理を行う権限を持つ者が重要になるため、所有者だけに限定されていない点を押さえておく必要があります。
この問題で覚えるポイント
建築物衛生法は、建築物の建設そのものではなく、使用されている建築物の衛生的な維持管理を規制する法律です。建築物環境衛生管理基準では、空気環境の調整、給水及び排水の管理、清掃、ねずみ等の防除など、利用者の健康を守るための管理事項が定められています。特定建築物では、この基準に従って維持管理する義務を負うのは所有者等です。建築物環境衛生管理技術者は、専門的知識に基づいて維持管理に関与する立場ですが、基準遵守義務の主体そのものではありません。また、特定建築物以外であっても、多数の者が使用し、又は利用する建築物には、建築物環境衛生管理基準に従って維持管理する努力義務があります。試験では、義務を負う者が誰か、登録事務を行う行政機関がどこか、特定建築物とそれ以外の建築物で義務の強さがどう違うかを整理しておくことが大切です。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、建築物環境衛生管理技術者という名称から、その人が建築物環境衛生管理基準の遵守義務を直接負うと考えてしまう点です。管理技術者は衛生管理の中心的な役割を担うため、責任主体のように見えますが、法律上の遵守義務は特定建築物の所有者等にあります。役割が大きい人と、法律上の義務を負う人は必ずしも同じではありません。また、特定建築物以外の建築物についても、完全に対象外と考えてしまうと誤りにつながります。特定建築物では遵守義務、特定建築物以外の多数利用建築物では努力義務という違いを押さえると、同じテーマの問題にも対応しやすくなります。
