問題
建築物における衛生的環境の確保に関する法律(以下「建築物衛生法」という。)に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 建築物衛生法は、建築物の維持管理面について規制を行っている。
(2) 建築物衛生法に基づく事業の登録に関する事務は、都道府県知事が行う。
(3) 特定建築物以外の建築物であっても、多数の者が使用し、又は利用する建築物については、建築物環境衛生管理基準に従って維持管理をするように努めなければならない。
(4) 建築物環境衛生管理技術者に、建築物環境衛生管理基準の遵守を義務付けている。
(5) 特定建築物の所有者等には、所有者以外に、特定建築物の全部の管理について権原を有する者が含まれる。
ビル管過去問|建築物衛生法を解説
建築物衛生法(建築物における衛生的環境の確保に関する法律)について、建築物の維持管理に関する規制内容、登録事務の主体、特定建築物以外への努力義務、建築物環境衛生管理技術者の位置づけ、そして「所有者等」に含まれる範囲を問う問題です。結論として、誤っているのは(4)「建築物環境衛生管理技術者に、建築物環境衛生管理基準の遵守を義務付けている。」という記述です。
(1) 建築物衛生法は、建築物の維持管理面について規制を行っている。
適切です。建築物衛生法は、建物を新しく建てる段階(設計・施工)を規制する法律というより、完成後に人が利用する中で、空気環境・給水・排水・清掃などを衛生的に保つための「維持管理」に焦点を当てた法律です。多数の人が利用する一定規模の建築物を「特定建築物」として位置づけ、空気環境測定や清掃、給水設備の管理などを、定められた基準に沿って実施させることで、建物利用者の健康被害(汚れた空気、汚染された水、害虫発生など)を防ぐ目的があります。したがって、維持管理面の規制を行っているという説明は法律の趣旨に合致します。
(2) 建築物衛生法に基づく事業の登録に関する事務は、都道府県知事が行う。
適切です。建築物衛生法には、建築物の清掃や空気環境測定、飲料水水質検査など、建築物の衛生確保に関係する業務を行う事業者について、一定の要件を満たした場合に登録できる仕組み(登録制度)があります。登録は、地域の実情に応じて事業者を把握し、監督・指導を行う必要があるため、国の中央機関ではなく、原則として都道府県の権限として整理されています。よって、登録に関する事務を都道府県知事が行うという記述は適切です。
(3) 特定建築物以外の建築物であっても、多数の者が使用し、又は利用する建築物については、建築物環境衛生管理基準に従って維持管理をするように努めなければならない。
適切です。建築物衛生法の中心は特定建築物に対する規制ですが、特定建築物に該当しない建物でも、多数の人が出入りし利用する実態がある場合、衛生上のリスクは同様に起こり得ます。そこで法律は、特定建築物以外の建築物についても、衛生的環境の確保の観点から、建築物環境衛生管理基準に沿った維持管理を行うよう「努める」ことを求めています。ここは罰則を伴う強制義務ではなく努力義務であり、「守らなければ直ちに処罰」ではない一方で、望ましい管理水準として基準に沿うことを促す規定です。この趣旨に照らして記述は正しいです。
(4) 建築物環境衛生管理技術者に、建築物環境衛生管理基準の遵守を義務付けている。
不適切です。建築物環境衛生管理基準を守る責任主体(義務を負う主体)は、原則として特定建築物の「所有者等」です。つまり、建物の管理の最終責任は、建物を所有し、または管理権限を持って管理を行う側にあります。
一方、建築物環境衛生管理技術者は、特定建築物の衛生的な維持管理が適正に行われるよう、専門的知見に基づいて監督・助言・指導を行う立場として置かれます。技術者は、基準を守らせるために必要な提案や確認、是正の促し等を行う「管理の技術的中核」ですが、基準そのものの遵守義務を直接負う主体として規定されているわけではありません。
たとえば、空気環境測定や清掃、給水設備の管理を実施するための予算措置、契約、実施決定などは所有者等の管理権限の領域です。技術者は、それが基準に適合するように関与しますが、「遵守義務の当事者」は所有者等である点がポイントです。したがって、「技術者に遵守を義務付けている」という書き方は責任主体の取り違えであり誤りです。
(5) 特定建築物の所有者等には、所有者以外に、特定建築物の全部の管理について権原を有する者が含まれる。
適切です。建築物衛生法では、実際に建物全体の管理を動かせる立場の者に責任を負わせないと、衛生管理の実効性が確保できません。たとえば、所有者が別にいても、ビル全体を一括で借り上げて運営し、清掃・設備管理・委託契約などを実質的に決められる者が存在する場合があります。
このような場合、名義上の所有者だけを義務主体にすると、現場の維持管理が適正に回らないおそれがあります。そこで「所有者等」には、所有者に加えて、特定建築物の全部の管理について権限(権原)を有する者も含め、実態として管理責任を負える者を義務主体に含めています。よって記述は適切です。
