【ビル管過去問】令和6年度 問題180|建築物内害虫の種類と発生環境(ノミバエなど)を解説

出典:建築物衛生管理技術者試験令和6年度(2024年)|ねずみ、昆虫等の防除第180問

問題

ねずみ・昆虫やその防除に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。

(1) ノミバエ類とショウジョウバエ類の発生源は同じである。

(2) 昆虫成長制御剤(IGR)による羽化阻害効力は、LC50の数値で評価される。

(3) ねずみと昆虫では、薬剤抵抗性の発達の原理が異なる。

(4) ヒアリ類は、要緊急対処特定外来生物に指定されている。

(5) 建築物環境衛生維持管理要領には、IPMの考え方に基づく動物種別の防除法や防除手順が具体的に示されている。

 

 

 

 

ビル管過去問|建築物内害虫の種類と発生環境(ノミバエなど)を解説

この問題は、建築物内で問題となる害虫の発生源の違い、薬剤の効力評価、薬剤抵抗性の基本原理、外来生物に関する法的知識、さらに建築物環境衛生維持管理要領の位置づけを横断的に問う問題です。正答は「ヒアリ類は、要緊急対処特定外来生物に指定されている」です。知識を個別に覚えるだけでなく、似た用語を正確に区別できるかがポイントになります。

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(1) ノミバエ類とショウジョウバエ類の発生源は同じである。

不適切です。ノミバエ類とショウジョウバエ類は、どちらも小型のハエとして混同されやすいですが、発生しやすい環境には違いがあります。ショウジョウバエ類は、果実や野菜くず、酒類、発酵食品、腐敗した植物質など、糖分を含む発酵性の有機物に集まりやすいのが特徴です。一方でノミバエ類は、腐敗した動植物質、汚泥、排水系統、動物の死骸など、より幅広い腐敗有機物から発生します。建築物内でも、ショウジョウバエ類は厨房や食品残渣周辺、ノミバエ類は排水不良箇所や汚泥のたまりやすい場所などで見られることがあります。両者に共通する部分はありますが、「発生源は同じ」と断定するのは不正確です。

(2) 昆虫成長制御剤(IGR)による羽化阻害効力は、LC50の数値で評価される。

不適切です。LC50は、通常、一定条件下で供試生物の50%を致死させる濃度を示す指標であり、主に急性毒性や殺虫効力の評価で用いられます。しかし、昆虫成長制御剤(IGR)は、昆虫をすぐに殺すというより、脱皮阻害、羽化阻害、成長阻害、繁殖阻害などを通じて個体群を抑制する薬剤です。そのため、羽化阻害効力を評価する場合は、死亡率ではなく、羽化できなかった割合や正常成虫への移行阻害率など、発育段階に着目した指標で評価します。つまり、IGRの本質は「致死」ではなく「正常な成長を妨げること」にあるため、LC50だけで評価するという理解は適切ではありません。

(3) ねずみと昆虫では、薬剤抵抗性の発達の原理が異なる。

不適切です。ねずみでも昆虫でも、薬剤抵抗性の発達の基本原理は同じです。集団の中には、もともと薬剤に対して感受性の高い個体と低い個体が存在しています。そこへ同じ薬剤を繰り返し使用すると、感受性の高い個体は死にやすく、抵抗性を持つ個体が生き残って繁殖し、結果として集団全体が薬剤に効きにくくなります。これが自然選択による抵抗性発達の考え方です。もちろん、抵抗性の具体的な仕組みとしては、解毒酵素の増加、作用点の変化、行動の変化など、生物種ごとに現れ方は異なります。しかし、発達の原理そのものは共通しています。したがって、「原理が異なる」という表現は誤りです。

(4) ヒアリ類は、要緊急対処特定外来生物に指定されている。

適切です。ヒアリは、強い毒を持ち、人を刺して健康被害を生じるおそれがあるうえ、在来生態系や社会活動にも大きな影響を及ぼす可能性がある外来種です。このため、特定外来生物の中でも、特に迅速で重点的な対応が必要なものとして、要緊急対処特定外来生物に位置づけられています。試験では、ヒアリを単なる外来生物としてではなく、緊急的な防除・監視の対象として理解しているかが問われます。建築物管理の現場でも、港湾周辺や物流施設などでは侵入リスクを意識することが大切です。

(5) 建築物環境衛生維持管理要領には、IPMの考え方に基づく動物種別の防除法や防除手順が具体的に示されている。

不適切です。建築物環境衛生維持管理要領は、建築物における衛生的環境の維持管理の基本的な考え方や実施上の留意点を示したものです。ねずみや昆虫等の防除についても、IPMの考え方に基づいて、発生状況調査、原因除去、環境整備、必要に応じた薬剤使用などの基本方針は示されています。しかし、個々の動物種ごとに詳細な防除手順や具体的な作業マニュアルが網羅的に記載されているわけではありません。つまり、要領は原則や方向性を示す文書であり、現場でそのまま使える種別の詳細手順書ではないという点を押さえる必要があります。

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この問題で覚えるポイント

建築物内の小型ハエ類は、見た目が似ていても発生源が異なります。ショウジョウバエ類は果実や発酵食品などの糖分を含む腐敗物に多く、ノミバエ類は排水系、汚泥、腐敗した動植物質など、より不衛生で広い環境から発生しやすいです。この違いは、発生源対策を考えるうえで重要です。

昆虫成長制御剤は、通常の殺虫剤と異なり、脱皮や羽化など昆虫の成長過程を阻害します。そのため、急性致死毒性を表すLC50で理解するのではなく、羽化阻害率や成長阻害率などで考えることが大切です。試験では、「殺す薬剤」と「成長を止める薬剤」を区別できるかが問われます。

薬剤抵抗性は、ねずみでも昆虫でも、感受性の低い個体が生き残って増えることで集団として形成される、という原理は共通です。対象生物が違っても、同じ薬剤の連用が抵抗性発達を招きやすいという基本は変わりません。したがって、作用機構の異なる薬剤の活用や、環境改善を含めた総合的防除が重要になります。

ヒアリは、単なる外来生物ではなく、要緊急対処特定外来生物です。外来生物法の中でも、特に迅速な対応が求められる対象であることを押さえておくと、法制度の問題にも対応しやすくなります。

IPMは、薬剤散布だけに頼らず、調査、発生源除去、侵入防止、清掃、環境整備、必要最小限の薬剤使用を組み合わせる考え方です。建築物環境衛生維持管理要領は、このIPMの基本方針を示すものであり、動物ごとの詳細な実施手順書ではありません。この「原則を示す文書」と「具体的な作業マニュアル」の違いは、よく出る比較ポイントです。

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ひっかけポイント

この問題の最大のひっかけは、「少しだけ正しそうに見える文」を混ぜていることです。ノミバエ類とショウジョウバエ類は、どちらも腐敗有機物に関係するため、発生源が同じだと思いやすいですが、実際には好む発生環境に差があります。似た害虫を見た目だけで一括りにすると誤ります。

また、LC50という専門用語を見て、薬剤の効力評価なら何でも使うものだと考えるのも危険です。IGRのように、致死ではなく発育阻害を目的とする薬剤では、評価の視点自体が異なります。用語を知っているだけでなく、「何を測る数値か」まで理解しておく必要があります。

薬剤抵抗性の問題では、「ねずみ」と「昆虫」という対象の違いに気を取られてしまい、原理まで別だと思わされやすいです。しかし試験では、現象の表れ方の違いと、発達原理そのものの違いを区別できるかがよく問われます。ここを混同すると引っかかります。

さらに、建築物環境衛生維持管理要領のような行政文書については、「要領なのだから細かい手順まで全部書いてあるはずだ」と日常感覚で考えてしまうのも罠です。実際には、こうした文書は基本原則や方向性を示す性格が強く、実務マニュアルとは役割が異なります。文書の性格を押さえて読むことが大切です。

この問題は、害虫の生態、薬剤の作用、抵抗性、法制度、IPMの位置づけという、一見ばらばらの知識をまとめて問うています。だからこそ、用語を丸暗記するのではなく、「何を比較しているのか」「どこが断定しすぎているのか」を意識して読むことが、正答への近道になります。

 

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