出典:建築物衛生管理技術者試験令和6年度(2024年)|ねずみ、昆虫等の防除第176問
問題
衛生動物と疾病に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 日本脳炎の主な媒介蚊は、コガタアカイエカである。
(2) 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の流行地は、主に西日本である。
(3) 持続可能な開発目標(SDGs)の中には、マラリアなどの媒介動物が関わる感染症根絶への対処も含まれている。
(4) ライム病は、北海道を除く国内各地で散発している。
(5) つつが虫病は、北海道を除いた国内で広範に発生している。
ビル管過去問|衛生動物が媒介する感染症(日本脳炎など)を解説
この問題は、衛生動物と感染症の対応関係、および国内での発生地域の特徴を正しく理解しているかを問う問題です。ビル管試験では、昆虫やダニなどの衛生動物そのものの生態だけでなく、それらが媒介する感染症の名称、主な媒介生物、発生地域の傾向までセットで問われます。今回の正解は、ライム病の発生地域に関する記述です。ライム病は国内各地に広く散発している病気ではなく、日本では主に北海道や本州中部以北の山間部などでみられるため、その点を押さえることが重要です。
(1) 日本脳炎の主な媒介蚊は、コガタアカイエカである。
適切です。日本脳炎は、日本脳炎ウイルスを保有した蚊がヒトを吸血することで感染する蚊媒介感染症です。国内で主な媒介蚊として知られているのはコガタアカイエカです。コガタアカイエカは水田などを主な発生源とし、豚などの増幅動物と関わりながらウイルス伝播に関与します。試験では、日本脳炎とコガタアカイエカの組合せは基本事項として頻出です。アカイエカやヒトスジシマカと混同しないように整理して覚えることが大切です。
(2) 重症熱性血小板減少症候群(SFTS)の流行地は、主に西日本である。
適切です。SFTSは主としてマダニが媒介するウイルス感染症で、日本では西日本を中心に患者報告が多いことが知られています。とくに中四国、九州、近畿の一部などで発生が目立ちます。もちろん今後の報告地域の拡大には注意が必要ですが、試験対策としては「SFTSは日本では主に西日本」という整理で押さえておくとよいです。マダニ媒介感染症としては、SFTS、日本紅斑熱、ライム病などがあり、それぞれの分布傾向や媒介種が異なる点が重要です。
(3) 持続可能な開発目標(SDGs)の中には、マラリアなどの媒介動物が関わる感染症根絶への対処も含まれている。
適切です。SDGsでは保健分野の目標として、エイズ、結核、マラリア、顧みられない熱帯病などの流行終息に向けた取組が含まれています。マラリアは蚊が媒介する代表的な感染症であり、衛生動物対策とも深く関係します。この選択肢は一見するとビル管の試験範囲から外れているように見えるかもしれませんが、衛生動物が公衆衛生に与える影響を広く理解しているかを確認する内容です。媒介動物対策は、単なる害虫防除ではなく、感染症予防の観点からも重要です。
(4) ライム病は、北海道を除く国内各地で散発している。
不適切です。ライム病はマダニが媒介する細菌感染症で、日本では主に北海道での発生がよく知られています。また、本州でも中部地方以北の山林地域などでみられることはありますが、「北海道を除く国内各地で散発している」と表現するのは誤りです。つまり、この選択肢は発生地域の特徴を逆にしてしまっています。ライム病は全国的に広くみられる感染症として覚えるのではなく、北海道を中心とした寒冷地・山林環境との関連で整理することが大切です。地域分布を問う問題では、「どこでも起こる」と雑に覚えると誤答しやすくなります。
(5) つつが虫病は、北海道を除いた国内で広範に発生している。
適切です。つつが虫病は、ツツガムシ類の幼虫によって媒介されるリケッチア感染症です。日本では北海道を除く広い地域で発生がみられます。古典型と新型で媒介種や発生時期が異なることも特徴です。秋から初冬に多い地域もあれば、春に多い地域もあり、地域差があります。試験では、つつが虫病とツツガムシ、SFTSとマダニ、日本脳炎とコガタアカイエカのように、「病名」と「媒介生物」を正確に結び付けることが重要です。
この問題で覚えるポイント
衛生動物が媒介する感染症は、「病名」「媒介生物」「主な発生地域」をセットで覚えることが得点につながります。日本脳炎は蚊媒介感染症で、主な媒介蚊はコガタアカイエカです。マラリアも蚊媒介感染症ですが、媒介するのはハマダラカであり、日本脳炎とは媒介蚊が異なります。この違いは非常によく問われます。 マダニが関与する感染症としては、SFTS、ライム病、日本紅斑熱などがあります。SFTSは日本では主に西日本に多いこと、ライム病は北海道を中心に本州中部以北の山間部などでみられることを押さえてください。つまり、同じマダニ媒介でも分布傾向は一律ではありません。ここが正誤判断の分かれ目です。 つつが虫病はツツガムシ類の幼虫が媒介し、北海道を除く広い地域で発生します。マダニ媒介感染症と混同しやすいですが、媒介生物が異なります。また、つつが虫病はリケッチア感染症であり、ウイルス感染症であるSFTSとは病原体も異なります。病原体の種類まで整理しておくと、応用問題にも対応しやすくなります。 SDGsに関しては、目標3「すべての人に健康と福祉を」の中で、エイズ、結核、マラリアなどの感染症対策が含まれています。ビル管では細かい国際目標の条文暗記までは不要ですが、媒介動物が関わる感染症対策が国際的な公衆衛生課題であることは理解しておくべきです。 試験対策としては、次のように整理すると覚えやすいです。日本脳炎はコガタアカイエカ、SFTSはマダニで西日本、ライム病はマダニで北海道中心、つつが虫病はツツガムシで北海道を除く広域発生、という形です。このレベルまで整理できれば、同テーマの問題に十分対応できます。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、感染症名を知っているだけでは解けないように、「媒介生物」と「発生地域」の記憶をずらしてくる点にあります。とくにライム病は「マダニ媒介感染症」という知識だけで止まっていると、国内の地域分布まで正確に答えられません。その結果、「北海道を除く国内各地」というもっともらしい表現に引っかかってしまいます。 また、SFTSとライム病はどちらもマダニが関与するため、受験者は「どちらも同じような地域で起こるだろう」と考えがちです。しかし実際には、国内での代表的な発生傾向は異なります。問題作成者はこの「同じ媒介動物なら分布も似ているはず」という思考の罠を利用しています。 さらに、つつが虫病については「ダニっぽい名前だからマダニの仲間だろう」と曖昧に覚えてしまう受験者も少なくありません。ですが、試験ではマダニとツツガムシの違いを区別できることが重要です。衛生動物分野では、名前が似ている、どちらも吸血性、どちらも感染症を媒介する、といった共通点のせいで混同しやすくなります。 この種の問題では、「病名だけ覚える」「媒介動物だけ覚える」では不十分です。病名、媒介動物、病原体、地域分布を一つのセットとして覚えることが、再現性のある対策になります。今回のような地域分布の逆転パターンは、今後も繰り返し出題されると考えておくとよいです。
