【ビル管過去問】令和6年度 問題167|ゴキブリの種類と生態(建物内害虫)を解説

出典:建築物衛生管理技術者試験令和6年度(2024年)|ねずみ、昆虫等の防除第167問

問題

湯沸室内で図に示すゴキブリが捕獲された。このゴキブリの生態等に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。なお、このゴキブリ(成虫)の体長は約12mm。前胸背板にある2本の縦長で太いハの字形に見える斑紋以外は、全体に黄褐色であった。

【ビル管】建築物衛生管理技術者試験2024年167問ゴキブリ

(1) 主として屋外に生息するが、建築物内にも侵入する。

(2) 毒餌(食毒剤)に対して喫食抵抗性を示す集団の存在が報告されている。

(3) 日本の気候では、卵から成虫になるまでに約1年を要する。

(4) 幼虫と成虫では、餌や活動場所が異なる。

(5) 雌成虫は、卵鞘(しょう)を唾液などでくぼみや隙間等に固着させる。

 

 

 

ビル管過去問|ゴキブリの種類と生態(建物内害虫)を解説

この問題は、建物内で問題となるゴキブリの種類を形態から見分けたうえで、その生態や防除上の特徴を理解しているかを問う問題です。設問文にある「体長約12mm」「黄褐色」「前胸背板に2本の縦長の黒っぽい斑紋」という特徴から、このゴキブリはチャバネゴキブリと判断できます。チャバネゴキブリは飲食施設や湯沸室、厨房などの屋内環境に強く適応した代表的な衛生害虫であり、試験でも非常によく出ます。正しい選択肢は、毒餌に対する喫食抵抗性を示す集団の存在が報告されているとする内容です。

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(1) 主として屋外に生息するが、建築物内にも侵入する。

不適切です。その理由は、設問のゴキブリはチャバネゴキブリであり、主として屋内に生息する種類だからです。チャバネゴキブリは、飲食店、厨房、湯沸室、給湯設備の周辺、食品庫など、温暖で湿気があり、餌と水が得やすい建物内に定着しやすいことが大きな特徴です。屋外性が強い種類としては、クロゴキブリやヤマトゴキブリなどが知られており、これらは屋外から建物内へ侵入することがあります。つまり、この選択肢はゴキブリの種類ごとの生息傾向を入れ替えている点が誤りです。

(2) 毒餌(食毒剤)に対して喫食抵抗性を示す集団の存在が報告されている。

適切です。その理由は、チャバネゴキブリでは、毒餌を食べにくくなる性質、いわゆる喫食抵抗性を示す集団が報告されているからです。これは薬剤そのものに対する生理的な抵抗性とは少し異なり、毒餌の中に含まれる誘引成分や甘味成分などを嫌って食べなくなる性質を指します。毒餌はゴキブリ防除でよく使われる方法ですが、対象集団が餌を食べなければ十分な効果が得られません。そのため、現場では毒餌だけに頼らず、発生源対策、清掃、隠れ場所の除去、侵入防止、剤型や有効成分の見直しを組み合わせることが重要です。建築物衛生管理では、このように薬剤の効き方だけでなく、ゴキブリの行動特性まで理解しておく必要があります。

(3) 日本の気候では、卵から成虫になるまでに約1年を要する。

不適切です。その理由は、チャバネゴキブリは屋内の温暖な環境では発育が比較的速く、卵から成虫まで約1年もかかる種類ではないからです。チャバネゴキブリは、建物内の暖房環境や厨房湯沸室などの高温環境に適応し、短期間で世代交代を繰り返します。そのため、発生すると個体数が急増しやすい厄介な害虫です。約1年という長い発育期間は、むしろ屋外環境の影響を強く受ける種類を連想させる数字であり、チャバネゴキブリの特徴とは合いません。試験では、「小型で屋内性が強く、増殖が早い」という基本像を押さえておくことが大切です。

(4) 幼虫と成虫では、餌や活動場所が異なる。

不適切です。その理由は、ゴキブリは不完全変態をする昆虫であり、幼虫と成虫で生活様式が大きく変わらないからです。完全変態をする昆虫では、幼虫と成虫で形態も餌も生息場所も大きく異なることがありますが、ゴキブリでは幼虫も成虫に似た形をしており、同じような場所に潜み、同じような餌を利用します。したがって、幼虫と成虫で餌や活動場所が明確に異なるとする説明は不正確です。ここは昆虫全般の知識を問うというより、ゴキブリがどのような発育様式をとるかを理解しているかが問われています。

(5) 雌成虫は、卵鞘(しょう)を唾液などでくぼみや隙間等に固着させる。

不適切です。その理由は、チャバネゴキブリの雌成虫は卵鞘を腹端に保持する性質が強く、産卵直前まで持ち歩くことが特徴だからです。これに対して、クロゴキブリなどでは卵鞘を比較的早く物陰や隙間に産み落とす種類があり、この違いがよく問われます。チャバネゴキブリは卵鞘を保持したまま移動するため、建物内のさまざまな場所に拡散しやすく、防除上も注意が必要です。この選択肢は、他種の産卵習性をチャバネゴキブリに当てはめている点が誤りです。

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この問題で覚えるポイント

ゴキブリの種類の判別では、まずチャバネゴキブリの特徴を確実に押さえることが重要です。チャバネゴキブリは小型で、成虫はおおむね10~15mm程度、全体が黄褐色で、前胸背板に2本の黒色縦条があります。建物内、とくに厨房、湯沸室、食品保管場所、機械まわりなど、暖かく湿った場所に多く発生します。 一方で、クロゴキブリはより大型で黒褐色を呈し、屋外から屋内へ侵入する性質が比較的強い種類です。この違いは頻出です。小型で黄褐色、前胸背板に2本線ならチャバネゴキブリ、大型で黒っぽく屋外性があるならクロゴキブリという整理が有効です。 チャバネゴキブリの生態としては、屋内性が強いこと、繁殖力が高いこと、暖かい環境で短期間に増殖することが重要です。また、雌が卵鞘を腹端に保持し、産卵直前まで持ち歩く点も代表的な特徴です。これに対し、卵鞘を隙間などに産み付けるタイプのゴキブリもいるため、種ごとの差を整理して覚えると得点につながります。 発育様式にも注意が必要です。ゴキブリは不完全変態であり、幼虫と成虫で生活場所や餌が大きく変わりません。完全変態の昆虫のように、幼虫と成虫でまったく別の生態を示すわけではないという点が判断の基準になります。 防除では、毒餌、残留噴霧、粘着トラップなどが用いられますが、チャバネゴキブリでは毒餌に対する喫食抵抗性が問題になることがあります。そのため、防除は薬剤だけでなく、清掃、食品残渣の除去、水分管理、隙間閉鎖、発生源調査を組み合わせた総合的対策が原則です。試験では、防除法そのものよりも、生態を理解したうえで、なぜその対策が必要かを問う形で出題されやすいです。

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ひっかけポイント

この問題のひっかけは、まず「ゴキブリの種類の取り違え」です。見た目の特徴を読まずに、ゴキブリ全般の知識だけで解こうとすると、屋外性の強い種類の特徴を混同しやすくなります。体長、体色、前胸背板の模様は、種の判別に直結する重要情報です。 次にありがちなのが、「ゴキブリ全般に当てはまりそうな説明」に引っ張られることです。たとえば、屋外から侵入する、卵を隙間に産み付ける、といった内容は一部のゴキブリでは当てはまります。しかし、設問はあくまでその図のゴキブリについて聞いているため、種を特定したうえで判断しなければなりません。つまり、一部だけ正しい一般論に惑わされないことが大切です。 また、昆虫の発育に関する知識の混同も狙われやすいです。幼虫と成虫で餌や活動場所が違うという記述は、チョウやハエのような完全変態の昆虫では成り立つことがあります。そのため、昆虫一般のイメージで考えると誤答しやすくなります。ゴキブリは不完全変態であるという基本事項を思い出せるかが分かれ目です。 さらに、防除分野では「抵抗性」という言葉の意味の取り違えも起こりやすいです。薬剤抵抗性と喫食抵抗性は同じではありません。前者は薬剤が効きにくくなる性質であり、後者はそもそも毒餌を食べなくなる性質です。この違いを理解していないと、正しい選択肢を見落としやすくなります。こうした言葉の細かな違いに注意することが、ビル管試験ではとても重要です。

 

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