出典:建築物衛生管理技術者試験 令和6年度(2024年)給水および排水の管理第117問
問題
給水設備の保守管理に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 貯水槽の付属装置である定水位弁や電極棒の動作不良により、断水、溢水事故を起こすことがある。
(2) ポンプ直送方式では、ポンプの停止時や性能低下時等に、上層階の給水管内は負圧になりやすい。
(3) 防錆剤の注入及び管理に関する業務は、建築物衛生法に基づく建築物飲料水水質検査業の登録を受けた者が行わなければならない。
(4) 管更生工法により管内に合成樹脂ライニングを施す場合は、技術評価・審査証明を受けた工法を採用するのがよい。
(5) 給水栓において規定値の残留塩素が保持できない場合は、塩素剤の注入装置を設置して、その適正な管理を行う。
ビル管過去問|給水設備の保守管理を解説
この問題は、給水設備の保守管理に関する実務知識と、建築物衛生法に基づく登録業種の区分を正しく理解しているかを問う問題です。機器の故障による事故、直送方式の圧力管理、管更生時の安全性、残留塩素の確保などは、いずれも建築物の給水管理で重要な論点です。その中で最も不適当なのは、防錆剤の注入及び管理業務を建築物飲料水水質検査業の登録業者が行わなければならないとする記述です。水質検査業はあくまで水質試験を行う業種であり、防錆剤の注入や管理を担当する登録区分ではありません。したがって、正しい選択肢の判定は、(1)適切、(2)適切、(3)不適切、(4)適切、(5)適切です。
(1) 貯水槽の付属装置である定水位弁や電極棒の動作不良により、断水、溢水事故を起こすことがある。
適切です。定水位弁や電極棒は、受水槽や高置水槽の水位を適正に保つための重要な制御部品です。これらが故障すると、必要な給水が行われず断水につながったり、逆に給水が止まらず溢水事故を起こしたりします。特に電極棒は水位検知に使われるため、汚れやスケール付着、断線、接点不良などで誤作動することがあります。定水位弁も摩耗や異物かみ込みで閉止不良を起こすことがあります。給水設備の保守管理では、こうした付属装置の点検を怠ると重大な供給障害につながるため、この記述は実務的にも正しい内容です。
(2) ポンプ直送方式では、ポンプの停止時や性能低下時等に、上層階の給水管内は負圧になりやすい。
適切です。ポンプ直送方式は、貯水槽や高置水槽を介さず、ポンプの吐出圧で各階へ給水する方式です。そのため、ポンプが停止したり、能力が低下したりすると、特に上層階では必要な圧力を維持できなくなります。このとき、使用状況や配管条件によっては給水管内圧が大きく下がり、負圧状態に近づくことがあります。負圧が生じると、クロスコネクションや逆流防止措置が不十分な箇所から汚染を引き込む危険があるため、圧力管理は非常に重要です。したがって、この記述は給水衛生上の注意点として妥当です。
(3) 防錆剤の注入及び管理に関する業務は、建築物衛生法に基づく建築物飲料水水質検査業の登録を受けた者が行わなければならない。
不適切です。建築物飲料水水質検査業は、飲料水の水質について検査を行う業種です。つまり、残留塩素、一般細菌、大腸菌、濁度、pHなどを適切な方法で測定し、基準適合を確認する役割を担います。一方、防錆剤の注入及び管理は、配管の腐食防止や赤水対策のために薬剤を扱う業務であり、水質検査そのものとは性格が異なります。したがって、水質検査業の登録を受けた者でなければならないと断定するのは誤りです。この選択肢は、「水に関する業務だから水質検査業だろう」と受験者に思わせるひっかけですが、登録業種ごとの業務範囲を区別して覚えることが大切です。
(4) 管更生工法により管内に合成樹脂ライニングを施す場合は、技術評価・審査証明を受けた工法を採用するのがよい。
適切です。管更生工法は、既設配管を取り替えずに内部を補修・再生する方法で、断水期間の短縮や工事負担の軽減に有効です。ただし、飲料水に接する配管内部へ合成樹脂ライニングを施す場合は、安全性や耐久性、施工品質が十分に確保されていなければなりません。そのため、第三者機関の技術評価や審査証明を受けた工法を採用することが望まれます。飲料水の衛生性に直結する部分なので、安易に未評価の材料や工法を使わないという考え方が重要です。この記述は、実務上の適切な管理姿勢を示しています。
(5) 給水栓において規定値の残留塩素が保持できない場合は、塩素剤の注入装置を設置して、その適正な管理を行う。
適切です。給水栓で残留塩素が規定値を下回ると、配水過程で消毒効果が十分に維持されず、衛生上のリスクが高まります。特に貯水槽方式では、滞留時間が長いことや水温上昇、配管の汚れなどによって塩素が消費されやすくなります。このような場合、塩素剤注入装置を設置し、注入量、注入位置、残留塩素濃度、機器の作動状況を適正に管理することは有効な対策です。ただし、単に装置を付ければよいのではなく、過剰注入による水質悪化を防ぎながら適正濃度を維持することが必要です。その意味でも、この記述は正しい内容です。
この問題で覚えるポイント
・給水設備の保守管理では、水位制御装置、ポンプ、配管、消毒設備などを総合的に見ることが重要です。断水や溢水は、定水位弁や電極棒の故障でも起こります。 ・ポンプ直送方式は、ポンプ圧で直接送水するため、停止時や能力低下時に上層階ほど圧力不足や負圧のリスクが高くなります。逆流や汚染の観点でも重要な論点です。 ・残留塩素は給水栓で適正に保持されていることが必要です。不足時には塩素剤注入装置の設置や調整で対応しますが、過不足なく管理することが大切です。 ・管更生工法で飲料水配管にライニングを行う場合は、衛生安全性と施工信頼性が重要です。技術評価や審査証明を受けた工法を選ぶ、という発想を押さえておくと得点につながります。 ・登録業種は名称が似ていても業務範囲が異なります。建築物飲料水水質検査業は「検査」を行う業種であり、薬剤注入や防錆管理そのものを担当する区分ではありません。試験ではこの業務範囲のズレがよく問われます。 ・正誤判断では、「水に関する仕事だから同じ登録区分」とまとめて考えないことが重要です。設備管理、清掃、検査、貯水槽清掃などはそれぞれ別の業務として整理して覚えると強いです。
ひっかけポイント
この問題の最大のひっかけは、「水に関する業務」をひとまとめにしてしまう思考の罠です。防錆剤の注入や管理も、水質検査も、どちらも飲料水に関係するため、受験者は同じ登録業種の仕事だと誤認しやすいです。しかし、試験で問われるのは業務の関連性ではなく、法令上の業務区分です。 また、実務的にもっともらしい文章が多いため、細部まで読まずに「現場でありそうだから正しい」と判断すると危険です。特に登録業種の問題は、文章全体の雰囲気ではなく、「誰が行う業務なのか」「何を目的とする業務なのか」を厳密に見る必要があります。 さらに、給水設備の問題では、機械的故障、圧力異常、衛生管理、法令区分が同時に並ぶことがあります。そのため、設備の知識と法令の知識を混同すると誤答しやすくなります。このパターンは今後も繰り返し出ます。設備の故障・対策の話なのか、法令上の登録区分の話なのかを、まず頭の中で切り分けて読む習慣をつけることが大切です。
