出典:建築物衛生管理技術者試験令和6年度(2024年)|空気環境の調整第81問
問題
空気調和換気設備に関する維持管理上の問題と考えられる原因との組合せとして、最も不適当なものは次のうちどれか。
(1) 全熱交換器からの外気量不足 ――― 熱交換エレメントの目詰まり
(2) 冷却塔でのレジオネラ属菌増殖 ――― 冷却水の過剰な濃縮
(3) 室内空気質の低下 ――― ダクト内部の汚れ
(4) 冬期暖房時の室内相対湿度の低下 ――― 取入外気量過少
(5) 夏期冷房時の室内温度の上昇 ――― ダンパ開度不足による送風量過少
ビル管過去問|空気調和設備換気設備の維持管理トラブル原因を解説
この問題は、空気調和設備や換気設備で起こる代表的な不具合について、現象と原因を正しく結び付けられるかを問う問題です。設備管理では、異常が起きたときに表面的な症状だけを見るのではなく、風量、水質、汚れ、湿度、温度などの関係を整理して原因をたどる力が重要です。正しい選択肢は、全熱交換器の外気量不足とエレメントの目詰まり、冷却塔でのレジオネラ属菌増殖と冷却水の過剰濃縮、室内空気質の低下とダクト内部の汚れ、夏期冷房時の室内温度上昇とダンパ開度不足による送風量過少です。一方で、冬期暖房時の室内相対湿度の低下を取入外気量過少と結び付けた内容は不適当です。冬期は外気が乾燥しているため、一般には外気を多く取り入れるほど室内の相対湿度は下がりやすくなるからです。
(1) 全熱交換器からの外気量不足 ――― 熱交換エレメントの目詰まり
適切です。全熱交換器は、排気と給気の間で熱や水分を交換しながら外気を取り入れる設備です。熱交換エレメントが汚れや粉じんで目詰まりすると、空気の通り道の抵抗が大きくなり、設計どおりの外気量を確保しにくくなります。外気量不足は換気不足にもつながり、室内の二酸化炭素濃度上昇や空気質悪化の原因にもなります。したがって、外気量不足の原因としてエレメントの目詰まりを挙げるのは妥当です。
(2) 冷却塔でのレジオネラ属菌増殖 ――― 冷却水の過剰な濃縮
適切です。冷却塔では水が循環しながら蒸発を繰り返すため、水中の不純物や栄養分が濃縮しやすい特徴があります。濃縮が過剰になると、スライムやバイオフィルムが形成されやすくなり、レジオネラ属菌が増殖しやすい環境になります。レジオネラ対策では、適切なブローによる濃縮管理、殺菌剤の使用、清掃などが重要です。したがって、冷却水の過剰な濃縮をレジオネラ属菌増殖の原因とみるのは適切です。
(3) 室内空気質の低下 ――― ダクト内部の汚れ
適切です。ダクト内部にほこりや汚れが蓄積すると、その一部が気流によって室内側に運ばれたり、微生物の増殖の場となったりして、室内空気質の低下を招くことがあります。特に長期間清掃されていないダクトでは、吹出口からの汚染拡散や臭気発生の原因にもなります。室内空気質の悪化は外気量不足だけでなく、搬送経路であるダクトの汚れも関係するため、この組合せは妥当です。
(4) 冬期暖房時の室内相対湿度の低下 ――― 取入外気量過少
不適切です。冬期の外気は一般に低温で乾燥しています。この乾いた外気を多く取り入れて暖房すると、絶対湿度が低い空気が室内に入るため、室内の相対湿度は下がりやすくなります。つまり、冬期暖房時の室内相対湿度低下の原因として考えやすいのは、取入外気量の過少ではなく、むしろ取入外気量の過大や加湿不足です。外気量が少なければ換気不足という別の問題は起こり得ますが、湿度低下の直接原因としては結び付きにくいです。このため、この組合せが最も不適当です。
(5) 夏期冷房時の室内温度の上昇 ――― ダンパ開度不足による送風量過少
適切です。ダンパの開度が不足すると、空気の流れが絞られて送風量が減少します。送風量が不足すると、室内へ十分な冷気を供給できず、冷房していても室内温度が上がりやすくなります。また、空気分布も悪化し、場所によって暑さのむらが出ることもあります。したがって、夏期冷房時の室内温度上昇の原因として、ダンパ開度不足による送風量過少を挙げるのは適切です。
この問題で覚えるポイント
空気調和設備や換気設備のトラブルは、風量不足、熱交換性能低下、水質悪化、汚れの蓄積など、設備ごとの典型原因で整理すると判断しやすくなります。 全熱交換器は、エレメントの目詰まりにより圧力損失が増え、外気量不足を起こしやすくなります。熱交換効率の問題だけでなく、風量低下にも注意が必要です。 冷却塔では、冷却水の濃縮管理が極めて重要です。過剰濃縮はスケール、腐食、スライム、レジオネラ属菌増殖のリスクを高めます。ブロー、薬剤処理、定期清掃を合わせて管理します。 室内空気質の悪化は、外気量不足だけでなく、ダクト内部の汚れ、フィルタの劣化、吹出口周辺の汚染などでも起こります。空気の搬送経路全体を見ることが大切です。 冬期の湿度問題では、相対湿度と絶対湿度の違いを理解しておくことが重要です。冬の外気は絶対湿度が低いため、これを多く取り入れて加熱すると相対湿度は下がりやすくなります。したがって、冬期暖房時の乾燥は、外気過多や加湿不足と結び付けて考えるのが基本です。 夏期冷房時の室温上昇は、冷凍機や熱源の能力不足だけでなく、ダンパ開度不良、ファン異常、フィルタ目詰まりなどによる送風量不足でも発生します。温度異常を見たら、まず風量が確保されているかを確認する視点が重要です。 試験では、湿度、温度、風量、水質のように異なる管理項目を混ぜて問うことが多いため、それぞれの現象に対して直接的な原因は何かを整理して覚えると得点につながります。
ひっかけポイント
この問題の最大のひっかけは、換気不足は悪いことだから、取入外気量が少ないと何でも悪化するはずだ、と日常的に連想してしまう点です。しかし、湿度については単純にそうはなりません。冬期の乾燥は、外気が乾いていることが本質なので、外気を多く入れるほど乾燥しやすいという逆方向の関係を押さえる必要があります。 また、室内空気質の低下というと、受験者はすぐに外気量不足だけを思い浮かべがちです。ですが実際には、ダクトの汚れや内部での汚染も空気質に影響します。空気質は換気量だけの問題ではない、という視点が必要です。 冷却塔の問題では、レジオネラ属菌と聞くと清掃不足だけを思い浮かべてしまうことがありますが、水の濃縮管理不良も重要な原因です。一つの現象に対して原因が一つとは限らないことが、こうした問題の落とし穴です。 試験では、文章の一部だけが正しくても、因果関係の結び方がずれていれば誤りになります。個々の語句がもっともらしく見えても、現象と原因の方向が合っているかを必ず確認することが大切です。
