出典:建築物衛生管理技術者試験令和6年度(2024年)|空気環境の調整第62問
問題
個別方式の空気調和設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 水熱源ヒートポンプ方式のパッケージ型空調機には、冷房時の冷却水と暖房時の温水を別々の配管で供給する。
(2) パッケージ型空気調和機の圧縮機の駆動源としては、電動機の他、ガスエンジンもある。
(3) 個別方式の代表的な空気調和機は、パッケージ型空気調和機である。
(4) ヒートポンプは、採熱源(ヒートソース)によって水熱源ヒートポンプと空気熱源ヒートポンプに分類される。
(5) ビル用マルチパッケージは、インバータにより圧縮機の容量制御を行う機種が主流である。
ビル管過去問|個別方式空調(パッケージ型空調機とヒートポンプ方式)を解説
この問題は、個別方式空調の代表機器であるパッケージ型空調機と、ヒートポンプ方式の基本的な仕組みを問う問題です。特に重要なのは、水熱源ヒートポンプ方式がどのような配管系統で成り立っているかを正確に理解しているかどうかです。正しい選択肢は、パッケージ型空気調和機の駆動源に関する記述、個別方式の代表機器に関する記述、ヒートポンプの分類に関する記述、ビル用マルチパッケージの容量制御に関する記述です。一方で、水熱源ヒートポンプ方式のパッケージ型空調機に冷房用と暖房用の別配管を供給するという記述は誤りであり、最も不適当なのは(1)です。
(1) 水熱源ヒートポンプ方式のパッケージ型空調機には、冷房時の冷却水と暖房時の温水を別々の配管で供給する。
不適切です。水熱源ヒートポンプ方式は、一般に建物内を循環する共通の水回路を熱源として利用し、各室内機や各パッケージ型空調機がその水と熱交換しながら、機器内部のヒートポンプサイクルで冷房または暖房を行う方式です。つまり、中央から冷房用の冷却水と暖房用の温水を別々に供給する方式ではありません。冷水配管と温水配管を別系統で送るのは、中央熱源方式の二管式や四管式の考え方に近いです。この選択肢は、水熱源ヒートポンプ方式と中央熱源方式の配管概念を混同している点が誤りです。
(2) パッケージ型空気調和機の圧縮機の駆動源としては、電動機の他、ガスエンジンもある。
適切です。パッケージ型空気調和機の圧縮機は、一般的には電動機で駆動されますが、機種によってはガスエンジンで圧縮機を回すガスヒートポンプエアコンもあります。ガスエンジン方式は、電力需要の平準化や受電設備負荷の軽減に役立つ場合があり、業務用建築物でも採用例があります。そのため、圧縮機の駆動源として電動機以外にガスエンジンがあるという記述は正しいです。
(3) 個別方式の代表的な空気調和機は、パッケージ型空気調和機である。
適切です。個別方式空調とは、各室や各ゾーンごとに比較的小規模な機器を設置して空調を行う方式であり、その代表例がパッケージ型空気調和機です。パッケージ型空調機は、室外機と室内機で構成されるものが多く、店舗、事務室、会議室などさまざまな場所で幅広く用いられています。ビル管試験でも、中央熱源方式との対比で個別方式の代表例としてパッケージ型空調機がよく問われますので、基本事項として押さえておきたい内容です。
(4) ヒートポンプは、採熱源(ヒートソース)によって水熱源ヒートポンプと空気熱源ヒートポンプに分類される。
適切です。ヒートポンプは、どこから熱をくみ上げるかによって分類できます。空気を熱源とするものが空気熱源ヒートポンプであり、外気と熱交換して冷暖房を行います。これに対して、水を熱源とするものが水熱源ヒートポンプであり、水配管系統の循環水や地下水などを利用することがあります。採熱源による分類はヒートポンプの基本的な整理方法ですので、この記述は正しいです。
(5) ビル用マルチパッケージは、インバータにより圧縮機の容量制御を行う機種が主流である。
適切です。ビル用マルチパッケージは、複数の室内機を一つまたは複数の室外機に接続して運転する方式で、近年の主流機種ではインバータ制御によって圧縮機の回転数を変え、必要な負荷に応じて能力を細かく調整します。これにより、部分負荷時の省エネルギー性や室温制御の安定性が向上します。したがって、インバータで圧縮機の容量制御を行う機種が主流であるという記述は適切です。
この問題で覚えるポイント
個別方式空調の代表例は、パッケージ型空気調和機です。中央熱源方式との区別を明確にしておくことが重要です。 パッケージ型空調機の圧縮機駆動源には、電動機だけでなくガスエンジンを用いる方式もあります。ガスヒートポンプエアコンは実務でも重要です。 ヒートポンプは採熱源によって分類され、代表的には空気熱源ヒートポンプと水熱源ヒートポンプがあります。 空気熱源ヒートポンプは外気を熱源にし、水熱源ヒートポンプは水を熱源にします。分類基準は熱をやり取りする相手が何かです。 水熱源ヒートポンプ方式は、冷房用冷水配管と暖房用温水配管を別々に建物全体へ供給する方式ではありません。共通の水回路を利用し、各機器がその水と熱交換しながら機器内部で冷暖房を成立させる点が重要です。 冷水配管と温水配管を明確に分けて考えるのは、中央熱源方式の二管式や四管式でよく出る論点です。水熱源ヒートポンプ方式と混同しないことが正誤判断の鍵です。 ビル用マルチパッケージでは、インバータによる圧縮機容量制御が主流です。省エネルギー性、部分負荷対応、きめ細かな温度制御という特徴と結びつけて覚えると定着しやすいです。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、水熱源ヒートポンプ方式という言葉に「水」が入っているため、受験者が無意識に「冷水や温水を中央から送る方式だろう」と連想してしまう点にあります。実際には、水を熱源として使うことと、冷水温水を別配管で供給することは別の話です。つまり、熱源の種類の話と、配管方式の話を意図的に混ぜて誤答を誘っています。 また、実務でよく聞く「冷水配管」「温水配管」「四管式」といった中央方式の知識が頭に入っている人ほど、この選択肢に引っ張られやすいです。一部だけもっともらしい用語で構成された文章は、全体として正しいように見えてしまいます。今後も、方式の分類基準が何なのかを先に整理し、「熱源の分類なのか」「配管方式の分類なのか」「熱搬送の方式なのか」を分けて考える習慣を持つと、同じタイプのひっかけに強くなれます。
