出典:建築物衛生管理技術者試験 令和6年度(2024年) 空気環境の調整 第52問
問題
自然換気の換気量に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 温度差による換気量は、給気口と排気口の高さの差の平方根に比例する。
(2) 温度差による換気量は、室内外空気の密度差の平方根に比例する。
(3) 風力による換気量は、風圧係数の差に比例する。
(4) 風力による換気量は、外部風速に比例する。
(5) 開口部の風圧係数は、外部風の風向によって変化する。
ビル管過去問|自然換気の換気量計算(温度差換気と風力換気)を解説
この問題は、自然換気の基本式を正しく理解しているかを問う問題です。自然換気には、室内外の温度差によって生じる温度差換気と、風による圧力差で生じる風力換気があります。どちらも換気量は「圧力差そのもの」ではなく、基本的にはその平方根に関係して決まる点が重要です。したがって、正しい選択肢は(1)(2)(4)(5)であり、最も不適当なのは(3)です。風力換気における換気量は風圧係数の差そのものに比例するのではなく、その差によって生じる圧力差の平方根に関係します。
(1) 温度差による換気量は、給気口と排気口の高さの差の平方根に比例する。
適切です。温度差換気では、暖かい空気が上昇し、冷たい空気が下方に入り込むことで空気の流れが生じます。これは煙突効果や重力換気とも呼ばれる現象です。給気口と排気口の高さの差が大きいほど、空気柱の圧力差が大きくなり、換気が起こりやすくなります。ただし、換気量は高さの差にそのまま比例するのではなく、平方根に比例します。つまり、高さを4倍にしても換気量は4倍ではなく2倍程度になります。この「高さの差が大きいほど有利だが、増え方は平方根」という理解が大切です。
(2) 温度差による換気量は、室内外空気の密度差の平方根に比例する。
適切です。温度差換気は、室内外の温度差によって空気密度が異なることから生じます。一般に、暖かい空気は軽く、冷たい空気は重くなります。そのため、室内外に温度差があると、上下方向に圧力差が生まれ、自然換気が発生します。換気量は、この密度差に基づく圧力差の影響を受けますが、その関係はやはり平方根です。温度差が大きいほど換気しやすくなるという理解は正しいですが、計算上は「温度差や密度差に単純比例する」と短絡的に覚えないことが大切です。
(3) 風力による換気量は、風圧係数の差に比例する。
不適切です。これが最も不適当な選択肢です。風力換気では、建物の風上側と風下側で風圧が異なり、その差によって空気が流れます。ここで重要なのは、換気量は風圧係数の差そのものに比例するのではなく、その差から生じる圧力差の平方根に関係して決まるという点です。つまり、風圧係数の差が大きくなれば換気量は増えますが、増え方は直線的ではありません。ここを「比例」と言い切ってしまうと誤りです。自然換気の問題では、温度差換気でも風力換気でも、換気量は圧力差の平方根で扱うという共通原理を押さえることが大切です。
(4) 風力による換気量は、外部風速に比例する。
適切です。風力換気では、建物外部の風が壁面に当たることで風圧が生じます。風圧自体は風速の二乗に関係しますが、換気量はその圧力差の平方根で決まるため、結果として外部風速に比例する形になります。したがって、この選択肢は正しい内容です。ここは少し混乱しやすいところですが、「風圧は風速の二乗」「換気量は圧力差の平方根」という二段階で考えると、最終的に換気量は風速に比例すると整理できます。
(5) 開口部の風圧係数は、外部風の風向によって変化する。
適切です。風圧係数は、建物のどの面にどの方向から風が当たるかによって変化します。たとえば、同じ窓でも真正面から風を受ける場合と、斜めから風を受ける場合では、その窓付近の圧力状態は異なります。また、建物の形状や周囲の障害物の影響も受けます。そのため、開口部の風圧係数は一定ではなく、風向によって変化するという理解が正しいです。実務でも、自然換気を検討するときには、単純に窓があるかどうかだけでなく、どの方向から風が来るかを考える必要があります。
この問題で覚えるポイント
自然換気には、温度差換気と風力換気があります。
温度差換気は、室内外の温度差による密度差と、給気口排気口の高さの差によって生じます。
温度差換気の換気量は、高さの差の平方根、密度差の平方根に関係して増減します。
風力換気は、風上側と風下側の風圧差によって生じます。
風力換気の換気量は、風圧係数差から生じる圧力差の平方根に関係します。
風圧自体は風速の二乗に関係しますが、換気量はその平方根で決まるため、結果として風速に比例すると整理できます。
風圧係数は一定値ではなく、建物形状、開口部の位置、風向などで変化します。
試験では「圧力差に比例」と「圧力差の平方根に比例」の違いが頻出です。この違いを確実に区別することが、正誤判断に直結します。
ひっかけポイント
もっとも多い罠は、「換気量は圧力差が大きいほど増える」という理解までは正しくても、それをそのまま「比例する」と読んでしまうことです。実際には、自然換気の基本式では換気量は圧力差の平方根で扱います。
風力換気では、「風圧係数の差が大きいほど換気しやすい」という事実自体は正しいため、文章全体がもっともらしく見えます。しかし、試験ではこのように一部だけ正しい内容に、比例関係の誤りを混ぜて出題することがよくあります。
「風圧は風速の二乗に関係する」という知識と、「換気量は風速に比例する」という知識を混同しやすい点にも注意が必要です。何が圧力の話で、何が換気量の話なのかを切り分けて考えることが大切です。
温度差換気と風力換気は原因が異なるだけで、どちらも最終的には圧力差によって流量が決まるという共通構造があります。この共通構造を理解していないと、個別知識の暗記だけではひっかかりやすくなります。
