出典:建築物衛生管理技術者試験令和5年度(2023年)|ねずみ、昆虫等の防除第168問
問題
チャバネゴキブリに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 雌成虫は、卵鞘(しょう)を孵(ふ)化直前まで尾端に付着させている。
(2) 雌成虫の産卵回数は、一生の間に約5回である。
(3) 他の屋内生息性のゴキブリ類と比較して、野外生活性が強い。
(4) 幼虫、成虫とも、同じ場所で活動する。
(5) 幼虫から成虫となり、蛹(さなぎ)の時期がない。
ビル管過去問|チャバネゴキブリ|卵鞘・産卵回数・生態・不完全変態を解説
この問題は、チャバネゴキブリの基本的な生態を正しく理解しているかを問う問題です。ポイントは、卵鞘の扱い方、産卵回数のおおよその目安、屋内性か野外性かという生息特性、そして変態の型です。正しい選択肢は(1)(2)(4)(5)で、最も不適当なのは(3)です。チャバネゴキブリは代表的な屋内生息性のゴキブリであり、野外生活性が強いという説明は誤りです。ゴキブリの種類によって、屋内中心の種と屋外中心の種があるため、その違いを整理して覚えることが大切です。
(1) 雌成虫は、卵鞘(しょう)を孵(ふ)化直前まで尾端に付着させている。
適切です。チャバネゴキブリの大きな特徴の一つが、雌が卵鞘をしばらく体の後端に付けたまま運ぶことです。一般にゴキブリは卵鞘を産み落として物陰に置く種類もいますが、チャバネゴキブリでは、卵が成熟し孵化直前になるまで雌が保持する性質がよく知られています。この性質は、卵を乾燥や外敵からある程度守るうえで有利です。試験では「チャバネゴキブリは卵鞘を持ち続ける」という点が頻出ですので、他種との違いとして押さえておくと得点しやすくなります。
(2) 雌成虫の産卵回数は、一生の間に約5回である。
適切です。チャバネゴキブリの雌は、一生の間に複数回産卵しますが、その目安として約5回という説明は妥当です。資料によって多少の幅はありますが、試験対策としては「一生に数回産卵する」「おおむね5回前後」という理解で十分です。ここでは厳密な回数を細かく暗記するよりも、少なくとも1回限りではなく、複数回にわたり繁殖するため、屋内で定着すると増えやすい害虫であることを理解しておくことが重要です。
(3) 他の屋内生息性のゴキブリ類と比較して、野外生活性が強い。
不適切です。これが正答です。チャバネゴキブリは代表的な屋内生息性の種で、飲食店、厨房、食品庫、給湯設備周辺、機器のすき間など、暖かく湿り気があり、餌と隠れ場所がある屋内環境を好みます。海外の公的教育資料でも、チャバネゴキブリは最も一般的な屋内性ゴキブリであり、生活の場を屋内に置くことが示されています。一方で、アメリカゴキブリやワモンゴキブリ類、あるいは種類によっては屋外を中心に生活し、必要に応じて屋内へ侵入するものもいます。この違いを逆に書いて受験者を惑わせるのが、この選択肢のひっかけです。
(4) 幼虫、成虫とも、同じ場所で活動する。
適切です。チャバネゴキブリは、幼虫と成虫が似たような環境を利用して生活する傾向があります。卵からかえった幼虫は暗く狭いすき間にとどまりやすく、成虫も同じような場所を潜伏場所として好みます。つまり、幼虫だけが全く別の場所で育つわけではなく、同一あるいは近接した潜伏場所で集団的に生息しやすいのが特徴です。防除の現場でも、成虫だけでなく幼虫の潜伏場所をまとめて把握することが重要になります。
(5) 幼虫から成虫となり、蛹(さなぎ)の時期がない。
適切です。ゴキブリは不完全変態の昆虫です。不完全変態では、卵からかえった幼虫が脱皮を繰り返しながら成長し、蛹の段階を経ずに成虫になります。これに対して、チョウやハエのように幼虫から蛹を経て成虫になるものは完全変態です。試験では、ゴキブリ、シラミ、カメムシなどの不完全変態と、ハエ、カ、ノミなどの完全変態を対比して問うことがありますので、変態様式の整理は非常に大切です。厚生労働省資料でも、ゴキブリは不完全変態の昆虫として扱われています。
この問題で覚えるポイント
チャバネゴキブリは、ビルや建物内で問題になりやすい代表的な屋内生息性のゴキブリです。暖かく、湿気があり、餌と水があり、すき間に潜める環境を好み、厨房や流し台周辺、冷蔵庫や食器棚の裏、機械設備のすき間などに集まりやすいです。屋外中心ではなく、むしろ屋内で一生を過ごしやすい種として理解することが正誤判断の軸になります。 繁殖に関しては、雌が卵鞘を尾端に付けたまま保持し、孵化直前まで運ぶという特徴があります。この点は、卵鞘を早めに離すゴキブリとの違いとして重要です。また、雌は一生の間に複数回産卵し、試験対策では約5回前後と整理しておくとよいです。つまり、屋内に定着すると短期間で個体数が増えやすく、防除が遅れると被害が拡大しやすい害虫だと理解しておくことが大切です。 発育では、卵から幼虫がかえり、脱皮を繰り返して成虫になります。蛹の時期はありません。これが不完全変態です。試験では、害虫の生活環ごとに完全変態か不完全変態かを問う問題が出やすいため、ゴキブリは不完全変態、ハエやカは完全変態というように、対比で覚えると整理しやすいです。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、チャバネゴキブリの「代表的な屋内害虫」という基本イメージを逆転させている点です。受験者が「ゴキブリは外にもいる」という日常感覚だけで判断すると、野外生活性が強いという文を見ても違和感を持ちにくくなります。しかし、試験で問われているのはゴキブリ一般ではなく、チャバネゴキブリという種の特徴です。種ごとの差を見ずに、ゴキブリ全体のぼんやりした印象で解くと誤りやすくなります。 また、卵鞘や変態の知識でも、「なんとなく知っている」を狙った出題がよくあります。卵鞘を持つことは知っていても、いつまで保持するのかまで曖昧だと判断がぶれますし、「幼虫から成虫になる」という言い方だけを見て、蛹の有無を意識できないと変態型で迷います。試験では、一部だけ正しい文章を混ぜてくることが多いため、卵鞘の保持時期、生息場所、変態型のように、種の特徴を一つずつ具体的に言える状態にしておくことが大切です。
