出典:建築物衛生管理技術者試験令和5年度(2023年)|空気環境の調整第75問
問題
空気調和設備のポンプ、配管及びその付属品に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) バタフライ弁は、軸の回転によって弁体が開閉する構造である。
(2) 軸流ポンプは遠心ポンプと比較して、全揚程は小さいが吐出し量が多いという特徴をもつ。
(3) 伸縮継手は、温度変化による配管軸方向の変位を吸収するためのものである。
(4) 玉形弁は、流体の流量調整用として用いられる。
(5) 蒸気トラップは、機器や配管内で発生した高い蒸気圧力を速やかに外部に排出するための安全装置である。
ビル管過去問|空調配管とポンプ|バルブ・軸流ポンプ・伸縮継手・蒸気トラップの基礎を解説
この問題は、空調配管まわりで使われる代表的な弁、ポンプ、継手、蒸気配管の付属機器について、基本的な役割を正しく理解しているかを問う問題です。個々の機器名を丸暗記するだけではなく、「何をするための機器なのか」を押さえておくことが大切です。正解は(5)です。蒸気トラップは高圧を逃がすための安全装置ではなく、蒸気配管や熱交換器内で生じたドレンを自動的に排出し、蒸気はできるだけ逃がさないようにする機器です。他の選択肢は、バルブやポンプ、伸縮継手の基本的な特徴を述べたものであり、内容として適切です。
(1) バタフライ弁は、軸の回転によって弁体が開閉する構造である。
適切です。バタフライ弁は、円板状の弁体を弁棒とともに回転させて流路を開閉する弁です。構造が比較的簡単で、短い操作で開閉できるため、大口径配管でも扱いやすいという特徴があります。空調設備や給排水設備でも広く用いられます。弁体が配管の中心付近で回転するため、全開でも流れに多少の抵抗はありますが、開閉操作が容易で省スペースに設置しやすい点が実務上の利点です。
(2) 軸流ポンプは遠心ポンプと比較して、全揚程は小さいが吐出し量が多いという特徴をもつ。
適切です。軸流ポンプは、羽根車の回転によって流体をポンプ軸とほぼ平行方向に流すポンプです。そのため、一度に大量の水を送るのに向いていますが、高い圧力を与えることはあまり得意ではありません。つまり、全揚程は小さい一方で、吐出し量は大きいという特徴をもちます。これに対して遠心ポンプは、羽根車の遠心力によって流体に圧力を与えるため、軸流ポンプより高い揚程を取りやすく、空調用の循環ポンプなどで広く使われています。ポンプは「たくさん送るのが得意か」「高く押し上げるのが得意か」で整理すると理解しやすいです。
(3) 伸縮継手は、温度変化による配管軸方向の変位を吸収するためのものである。
適切です。配管は、温水や蒸気のような高温流体が流れると熱で伸び、停止して冷えると縮みます。この熱膨張と熱収縮をそのまま放置すると、配管や支持部、接続機器に大きな応力がかかり、破損や漏れの原因になります。伸縮継手は、このような温度変化による配管軸方向の伸び縮みを吸収するために設けられるものです。配管設備では、見えにくい部分ですが安全性と耐久性に直結する重要な部材です。試験では「伸縮継手=熱膨張対策」という基本対応を確実に押さえることが重要です。
(4) 玉形弁は、流体の流量調整用として用いられる。
適切です。玉形弁はグローブ弁とも呼ばれ、弁体を上下させて流路の開度を調整する構造をもつ弁です。仕組み上、細かな開度調整がしやすいため、流量調整用として用いられます。一方で、流れが弁内部で方向を変えるため、流体抵抗は比較的大きくなります。これに対して仕切弁は全開全閉に向いており、流量調整にはあまり適しません。このように、弁は見た目や名称だけでなく、「調整向きか、開閉向きか」で区別すると正誤判断しやすくなります。
(5) 蒸気トラップは、機器や配管内で発生した高い蒸気圧力を速やかに外部に排出するための安全装置である。
不適切です。蒸気トラップの役割は、蒸気そのものを逃がすことではなく、蒸気配管や熱交換器、コイルなどで発生したドレン、つまり凝縮水を自動的に排出することです。また、運転開始時に混入した空気などを排出する役目もあります。重要なのは、「蒸気はできるだけ通さず、ドレンは排出する」という点です。もし蒸気トラップが正常に働かないと、機器内にドレンがたまって熱交換効率が低下したり、ウォーターハンマーの原因になったりします。高い圧力を逃がして設備を保護する安全装置は安全弁であり、蒸気トラップとは役割が異なります。したがって、この選択肢は蒸気トラップと安全弁の機能を混同しているため不適当です。
この問題で覚えるポイント
空調配管とポンプの問題では、機器の名称と役割を一対で覚えることが重要です。まず、バルブ類は用途で整理すると理解しやすくなります。バタフライ弁は回転する弁体で開閉する弁で、大口径配管にも使いやすい構造です。玉形弁は流量調整に向き、仕切弁は全開全閉に向くという違いは頻出です。次に、ポンプは揚程と流量の関係で押さえます。軸流ポンプは低揚程・大流量、遠心ポンプはそれより高揚程に対応しやすい、という比較は定番です。さらに、配管は温度変化で伸び縮みするため、その変位吸収には伸縮継手が用いられます。蒸気系では、蒸気トラップはドレン排出用、安全弁は異常圧力の逃がし用という役割の違いを明確にしておくことが大切です。似た名称でも働きが違う機器は、何を排出する装置なのか、何を守るための装置なのかまで整理して覚えると、同テーマの問題に対応しやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「蒸気に関係する装置はどれも圧力を逃がすものだろう」と受験者に思わせる点にあります。蒸気トラップは蒸気配管に付く機器なので、安全弁と役割を混同すると誤答しやすくなります。特に「高い蒸気圧力を速やかに外部に排出する」という表現は、安全装置らしく見えるため、一見もっともらしく感じやすいです。しかし、蒸気トラップの本質は圧力逃がしではなくドレン排出です。このように、設備機器の問題では「どの系統に付くか」だけで判断せず、「何を目的に動く機器か」を確認する必要があります。また、玉形弁と仕切弁、軸流ポンプと遠心ポンプのように、似た分類の機器同士の違いを曖昧にしていると、正しい文章まで不安になってしまいます。今後も、名称の近い機器は用途の違いまでセットで押さえることが、ひっかけ対策として有効です。
