出典:建築物衛生管理技術者試験令和5年度(2023年)|空気環境の調整第64問
問題
同出力の蒸気圧縮冷凍機と比較した場合の吸収式冷凍機の特徴に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 冷凍機内は真空であり、圧力による破裂のおそれがない。
(2) 回転部分が少なく、騒音・振動が小さい。
(3) 特別な運転資格を必要としない。
(4) 消費電力量が少ない。
(5) 排熱回収に適さない。
ビル管過去問|吸収式冷凍機|蒸気圧縮冷凍機との比較・特徴・省エネ性を解説
この問題は、吸収式冷凍機と蒸気圧縮冷凍機の違いを正しく理解しているかを問う問題です。吸収式冷凍機は、電動機で圧縮する代わりに、熱を利用して冷凍サイクルを成立させる点が大きな特徴です。そのため、消費電力が比較的少なく、排熱の有効利用にも向いています。したがって、最も不適当なのは「排熱回収に適さない」とする記述です。吸収式冷凍機の仕組みと、圧縮式との比較でよく出る特徴を整理して覚えることが大切です。
(1) 冷凍機内は真空であり、圧力による破裂のおそれがない。
適切です。その理由は、吸収式冷凍機は一般に内部を真空に近い低圧状態で運転する構造だからです。吸収式冷凍機では、水が冷媒として用いられることが多く、低温でも蒸発しやすくするために装置内部を真空状態にしています。高圧ガスを扱う蒸気圧縮冷凍機のように、内部圧力が高くなって破裂する危険性は基本的に小さいです。ただし、まったく危険がないという意味ではなく、真空維持のための気密性や腐食管理は重要です。この選択肢では「高圧による破裂のおそれがない」という比較上の特徴を述べているため、適切と判断できます。
(2) 回転部分が少なく、騒音・振動が小さい。
適切です。その理由は、吸収式冷凍機には蒸気圧縮冷凍機のような大きな圧縮機がないからです。蒸気圧縮冷凍機では、圧縮機が冷媒を機械的に圧縮するため、運転中の騒音や振動が問題になることがあります。これに対して吸収式冷凍機は、吸収器、再生器、凝縮器、蒸発器などを組み合わせて熱で冷凍作用を得る方式であり、大きな回転機械が少なく、主な回転部はポンプ程度です。そのため、建物内で静粛性が求められる場面でも有利になることがあります。試験では「圧縮機がないことによる特徴」として押さえておくと判断しやすいです。
(3) 特別な運転資格を必要としない。
適切です。その理由は、吸収式冷凍機は冷凍機械責任者のような資格が常に必要となる設備ではないからです。蒸気圧縮冷凍機は、冷媒の種類や圧縮機の出力、法令上の区分によっては高圧ガス保安法などとの関係で資格や保安管理が問題になることがあります。一方、吸収式冷凍機は一般に水と臭化リチウム水溶液などを用いるため、高圧ガス設備としての性格が弱く、比較上「特別な運転資格を必要としない」という特徴があります。ただし、実際の運用ではボイラや蒸気設備、冷温水設備全体の管理知識は必要です。この選択肢は、資格制度の細かな例外まで問うものではなく、圧縮式との一般的な比較を聞いているので適切です。
(4) 消費電力量が少ない。
適切です。その理由は、吸収式冷凍機は冷却のための主なエネルギー源として電力ではなく熱を利用するからです。蒸気圧縮冷凍機では圧縮機を動かすために大きな電力を必要としますが、吸収式冷凍機では冷媒の圧縮を機械的に行わず、吸収と再生という過程を熱で行います。そのため、必要な電力は主としてポンプや補機類を動かす分であり、同じ冷凍能力で比べると消費電力量は小さくなります。ここで注意したいのは、「消費エネルギー全体が必ず少ない」と言っているわけではない点です。吸収式は熱源が必要なので、電力量は少なくても投入する熱エネルギーは必要です。この問題では「消費電力量」に注目しているため、適切です。
(5) 排熱回収に適さない。
不適切です。その理由は、吸収式冷凍機はむしろ排熱回収に適した冷凍機だからです。吸収式冷凍機は、蒸気、温水、排ガスなどの熱を利用して運転できるため、コージェネレーションシステムや工場排熱の有効利用と相性が良いです。たとえば、発電設備や焼却設備などから生じる排熱をそのまま冷房用のエネルギーとして利用できれば、エネルギーの有効活用につながります。このような仕組みは省エネルギーやピーク電力の抑制にも役立ちます。したがって、「排熱回収に適さない」という記述は、吸収式冷凍機の大きな長所を逆に述べているため誤りです。これがこの問題の正答です。
この問題で覚えるポイント
吸収式冷凍機は、圧縮機で冷媒を機械的に圧縮するのではなく、吸収剤と熱を利用して冷凍サイクルを成立させる冷凍機です。代表的な組合せは、冷媒が水、吸収剤が臭化リチウム水溶液です。内部は真空に近い低圧で運転されるため、高圧ガスを扱う圧縮式冷凍機とは性格が大きく異なります。 蒸気圧縮冷凍機との比較では、まず大きな圧縮機がないため、騒音や振動が小さいことを押さえる必要があります。次に、主な駆動源が熱であるため、消費電力量は小さくなります。ただし、電力消費が少ないことと、投入エネルギー全体が常に有利であることは同じではありません。この違いを区別して理解することが大切です。 また、吸収式冷凍機は蒸気、温水、排ガスなどの未利用熱を使いやすいため、排熱回収やコージェネレーションとの相性が良いです。この点は試験で非常によく問われます。「吸収式は排熱利用向き、圧縮式は電動圧縮機中心」と整理すると覚えやすいです。 さらに、吸収式冷凍機は高圧ガス設備としての性格が弱く、一般的な比較としては特別な運転資格を要しないと整理されます。ただし、実際の設備管理では冷温水、真空保持、腐食防止、冷却水管理など周辺知識が重要です。試験では細かな現場運用よりも、方式ごとの基本的な特徴の比較が問われやすいです。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「省エネ性」という言葉から、受験者が何となく良し悪しを感覚で判断してしまう点にあります。吸収式冷凍機は消費電力量が少ないため、省エネの印象が強く、そこから逆に排熱回収との関係を深く考えずに読み飛ばしてしまうことがあります。しかし実際には、吸収式の強みはまさに熱を使えることであり、排熱利用との相性の良さが重要です。 また、「消費電力量が少ない」と「エネルギー効率が必ず高い」を混同しやすい点も要注意です。問題文はあくまで電力量の比較をしているのであって、総合効率や運転コスト全体を言っているわけではありません。このように、評価する対象が電力なのか、熱を含めた総エネルギーなのかを切り分けて読む必要があります。 さらに、「真空」と聞くと危険が少ないというイメージだけで判断しがちですが、試験では「高圧による破裂リスクが小さい」という比較表現として出題されます。絶対的に安全という意味ではないことを踏まえつつ、圧縮式との違いとして理解することが重要です。 このタイプの問題では、方式ごとの長所を逆に言い換えて誤答を作ることがよくあります。特に「吸収式は排熱利用に向く」「圧縮式は電力主体で大きな圧縮機を使う」という基本軸を頭に入れておくと、似た問題にも対応しやすくなります。
