出典:建築物衛生管理技術者試験令和5年度(2023年)|建築物衛生行政概論第16問
問題
平成30年12月の水道法改正に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の直面する課題に対応し、水道の基盤強化を図るために改正された。
(2) 水道事業者間の広域的な連携や統合の推進等により、上水道事業者数の具体的な削減目標を設定した。
(3) 国は広域連携の推進を含む水道の基盤を強化するための基本方針を定めることとした。
(4) 地方公共団体が厚生労働大臣の許可を受けて、水道施設に関する公共施設等の運営権を民間事業者に設定できる仕組みを導入した。
(5) 指定給水装置工事事業者の指定に更新制を導入した。
ビル管過去問|水道法改正(平成30年)|広域連携・民間活用(コンセッション)・更新制を解説
この問題は、平成30年12月の水道法改正で何が制度化されたのかを問う問題です。改正の背景には、人口減少による料金収入の減少、水道施設の老朽化、技術職員の不足などがありました。改正では、広域連携の推進、水道基盤強化のための基本方針、民間活用の仕組み、指定給水装置工事事業者の更新制などが盛り込まれました。一方で、上水道事業者数の具体的な削減目標を法律で定めたわけではありません。したがって、最も不適当なのは(2)です。
(1) 人口減少に伴う水の需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の直面する課題に対応し、水道の基盤強化を図るために改正された。
適切です。その理由は、平成30年の改正水道法は、まさに水道事業を取り巻くこうした構造的課題に対応するために行われたからです。水需要の減少は料金収入の減少につながり、老朽化した施設の更新費用をまかないにくくします。さらに、技術職員の不足が進むと、維持管理や災害対応の体制も弱くなります。改正は、このような状況の中でも安全で安定した水道を持続させるため、水道の基盤強化を目的として実施されたものです。試験では、改正の背景と目的をセットで押さえておくことが大切です。
(2) 水道事業者間の広域的な連携や統合の推進等により、上水道事業者数の具体的な削減目標を設定した。
不適切です。その理由は、改正水道法は広域連携や統合を推進する方向を示したものの、上水道事業者数について具体的な削減目標を法律上定めたわけではないからです。広域連携には、事業統合だけでなく、経営の一体化、管理の一体化、施設の共同化などさまざまな形があります。つまり、法律の趣旨は「数を減らすこと」自体ではなく、地域の実情に応じて持続可能な運営体制をつくることにあります。数字の目標が書かれていそうに見える文章ですが、そのような規定はありません。この問題の正答はこの選択肢です。
(3) 国は広域連携の推進を含む水道の基盤を強化するための基本方針を定めることとした。
適切です。その理由は、改正法では、国が水道の基盤強化に関する基本的な方針を定める仕組みが設けられたからです。水道事業は地域ごとの事情が大きく異なる一方で、全国的に共通する課題もあります。そのため、国が基本方針を示し、その中で広域連携の推進や維持管理・更新の考え方を明確にすることには大きな意味があります。受験対策としては、「国が基本方針を定める」という点を押さえるとともに、それが広域連携や基盤強化の方向性を示すものであることも理解しておくと解きやすくなります。
(4) 地方公共団体が厚生労働大臣の許可を受けて、水道施設に関する公共施設等の運営権を民間事業者に設定できる仕組みを導入した。
適切です。その理由は、改正により、地方公共団体が厚生労働大臣の許可を受けたうえで、水道施設に関する運営権を民間事業者に設定できる仕組み、いわゆるコンセッション方式が導入されたからです。これは施設そのものを民間に売却する制度ではなく、施設の所有権は原則として地方公共団体側に残したまま、運営に関する権利を民間事業者に設定する仕組みです。ここは誤解しやすいところで、民営化そのものと混同しないことが大切です。試験では「所有」と「運営権」を分けて理解しているかが問われやすいです。
(5) 指定給水装置工事事業者の指定に更新制を導入した。
適切です。その理由は、平成30年改正で指定給水装置工事事業者の指定に更新制が導入されたからです。これは、長年更新がないまま実態と登録情報にずれが生じることや、不適切工事の防止などに対応するための見直しです。更新期間は5年とされ、既存の指定事業者についても初回更新の時期が集中しないよう経過措置が設けられました。この点は頻出知識なので、「指定給水装置工事事業者」と「5年更新」を結びつけて覚えておくと有効です。
この問題で覚えるポイント
平成30年の水道法改正は、水需要の減少、施設の老朽化、人材不足といった課題を背景に、水道の基盤強化を図るために行われた改正です。重要なのは、改正の中身を個別に整理して覚えることです。まず、広域連携の推進があり、これは事業者数を機械的に減らすことを目的にしたものではなく、事業統合、経営の一体化、施設の共同化などを通じて、持続可能な運営体制を整える考え方です。次に、国が水道基盤強化のための基本方針を定める仕組みが設けられました。さらに、地方公共団体が厚生労働大臣の許可を受けて、民間事業者に運営権を設定できるコンセッション方式が導入されましたが、これは所有権の移転ではなく、運営に関する権利を設定する制度です。また、指定給水装置工事事業者には更新制が導入され、その更新期間は5年です。試験では、制度の名称だけでなく、「何を目的に、どのような形で導入されたのか」まで理解しておくと、少し表現を変えられても対応しやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「広域連携の推進」と「事業者数の削減目標」を同じもののように見せている点にあります。受験者は、統合を進めると聞くと、つい国が具体的な数値目標まで設定したように感じやすいです。しかし、法律が求めているのは、地域の実情に応じた連携や基盤強化であって、事業者数の一律な削減ではありません。また、「民間活用」と聞くと全面的な民営化を連想しやすいですが、実際には所有権を残したまま運営権を設定する仕組みです。このように、日常語のイメージだけで判断すると誤りやすく、法律上の仕組みを正確に区別することが大切です。さらに、「更新制」という言葉も、免許制度一般の感覚で曖昧に覚えてしまうと危険です。水道法では、指定給水装置工事事業者に更新制が導入され、期間は5年です。このような制度の対象と内容をセットで覚えることが、ひっかけを見抜く力につながります。
