【ビル管過去問】令和5年度 問題25|高齢者と温熱環境|感受性・体温調節・血圧変動の特徴を解説

出典:建築物衛生管理技術者試験令和5年度(2023年)|建築物の環境衛生第25問

問題

高齢者における温度環境に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1) 一般に若年者に比べて暖かい温度を好むとされている。

(2) 寒さに対する感受性は若年者に比べて高い傾向にある。

(3) 冬季における深部体温は、若年者に比べて低い傾向にある。

(4) 放射熱がない場合、高齢者の8割を満足させる気温の範囲は青年に比べて狭い範囲となる。

(5) 寒冷環境に曝露された際の血圧の変動が、若年者に比べて顕著である。

ビル管過去問|高齢者と温熱環境|感受性・体温調節・血圧変動の特徴を解説

この問題は、高齢者の温熱環境への反応について、若年者との違いを正しく理解しているかを問う問題です。ポイントは、高齢者では体温調節機能が全体として低下しやすく、寒暖の刺激に対する生理的な応答にも特徴があることです。一方で、「寒さを強く感じるかどうか」という主観的な感受性と、「体温調節機能が低下していること」は同じではありません。正解は(2)で、高齢者は寒冷環境で身体的な負担を受けやすい一方、寒さそのものを感じ取る感受性はむしろ低下する傾向があるため、この記述が最も不適当です。

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(1) 一般に若年者に比べて暖かい温度を好むとされている。

適切です。その理由は、高齢者では加齢に伴って代謝量が低下し、筋肉量も減少しやすいため、体内で生み出される熱量が若年者より少なくなる傾向があるからです。その結果、同じ室温であっても寒く感じやすく、より暖かい環境を快適と感じることが多くなります。また、皮膚血流や発汗などの体温調節機能も低下しやすいため、外気温の変化に対して体温を一定に保つ力が弱くなります。こうした背景から、高齢者は一般に若年者よりも高めの室温を好むとされています。

(2) 寒さに対する感受性は若年者に比べて高い傾向にある。

不適切です。その理由は、高齢者では皮膚の温度受容器の働きや神経系の反応が低下し、寒さや暑さを感じ取る感覚そのものが鈍くなる傾向があるからです。つまり、高齢者は寒冷環境にさらされたとき、身体には大きな負担がかかっていても、それを自覚しにくいことがあります。ここが重要な点で、「寒さに弱い」ことと「寒さを敏感に感じる」ことは別です。高齢者は寒冷による健康影響を受けやすい一方で、寒さの自覚はむしろ乏しくなることがあり、この選択肢はその点を逆に述べているため誤りです。

(3) 冬季における深部体温は、若年者に比べて低い傾向にある。

適切です。その理由は、高齢者では基礎代謝量の低下や筋肉量の減少により、身体の内部で産生される熱が少なくなりやすいからです。さらに、体温調節機構の反応も低下しやすいため、冬季には深部体温が若年者より低めになる傾向があります。深部体温は身体の中心部の温度を示し、生命維持にとって重要な指標ですが、高齢者ではこの深部体温の維持が十分に行われにくく、寒冷環境で低体温に陥る危険も高まります。そのため、冬季の室温管理は高齢者にとって特に重要です。

(4) 放射熱がない場合、高齢者の8割を満足させる気温の範囲は青年に比べて狭い範囲となる。

適切です。その理由は、高齢者では温熱環境に対する快適域が若年者より狭くなりやすいからです。放射熱がない場合、快適性は主に気温、湿度、気流、着衣量、代謝量などの影響を受けますが、高齢者は体温調節機能の余裕が小さいため、少しの温度変化でも不快を感じやすくなります。その結果、多くの高齢者が快適と感じる気温の範囲は、青年に比べて狭くなると考えられます。これは、高齢者の居住環境では温度変動の少ない安定した空調管理が求められる理由の一つです。

(5) 寒冷環境に曝露された際の血圧の変動が、若年者に比べて顕著である。

適切です。その理由は、寒冷環境では末梢血管が収縮して熱の放散を抑えようとするため、血圧が上昇しやすくなるからです。高齢者では血管の弾力性が低下していることが多く、自律神経系の調節も若年者ほど円滑ではないため、この血圧変動がより大きく現れることがあります。特に冬季の脱衣所や浴室、早朝の冷えた室内などでは急激な血圧変動が起こりやすく、心血管系への負担が大きくなります。高齢者の温熱環境を考える際には、単に快適性だけでなく、安全性の観点からも寒冷曝露を避けることが重要です。

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この問題で覚えるポイント

高齢者の温熱環境では、加齢に伴う体温調節機能の低下を中心に理解することが大切です。まず、高齢者は基礎代謝量や筋肉量の低下によって熱産生が少なくなり、若年者より暖かい環境を好む傾向があります。次に、皮膚感覚や温度感受性の低下により、暑さや寒さを自覚しにくくなることがあります。ここは試験で狙われやすい点で、「寒さに弱い」と「寒さに敏感」は別の話だと整理しておくことが重要です。また、冬季には深部体温が低下しやすく、寒冷環境では血圧変動が大きくなるため、ヒートショックなどのリスクにもつながります。さらに、高齢者は快適と感じる温度の許容範囲が狭くなりやすいため、温度変動の少ない安定した室内環境が望まれます。試験対策としては、高齢者は「暖かめを好む」「感受性は鈍くなる」「体温調節は低下する」「寒冷時の血圧変動は大きい」とセットで覚えると判断しやすくなります。

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ひっかけポイント

この問題のひっかけは、「感受性」と「身体への影響の受けやすさ」を混同させる点にあります。日常感覚では、高齢者は寒さで体調を崩しやすいので「寒さに対する感受性も高い」と考えてしまいがちです。しかし、実際には高齢者は寒さの自覚が鈍くなりやすく、感受性は低下する傾向があります。このように、身体がダメージを受けやすいことと、刺激を敏感に感じることは別です。また、「高齢者は暖かい環境を好む」という事実から、すべての温熱反応が敏感になると早合点してしまうのも典型的な誤答パターンです。今後も、感覚の鋭さと生理機能の低下を意図的に入れ替えた選択肢には注意すると、同テーマの問題に強くなれます。

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