出典:建築物衛生管理技術者試験令和4年度(2022年)|ねずみ、昆虫等の防除第175問
問題
ネズミに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) ネズミの糞(ふん)から、食中毒の原因となる病原体が検出されることがある。
(2) ハツカネズミは、クマネズミと比較してトラップにかかりにくく、殺鼠(そ)剤に弱い。
(3) クマネズミはドブネズミと比較して、穀類などの植物性の餌を好む傾向が強い。
(4) クマネズミは、垂直な壁を登ったり、電線を伝わって室内に侵入する。
(5) ネズミの移動経路は、ほぼ一定しているため、体の汚れが通路となる壁やパイプシャフト周辺に付着する。
ビル管過去問|ネズミの生態 クマネズミ・ドブネズミ・ハツカネズミの特徴を解説
この問題は、建築物内で問題となる代表的なネズミであるクマネズミ、ドブネズミ、ハツカネズミの生態や行動特性、防除の考え方を問う問題です。ネズミ対策では、種類ごとの行動の違いを正しく理解することが重要です。今回の正答は(2)で、ハツカネズミがクマネズミよりトラップにかかりにくいとする部分が不適切です。一般に、トラップにかかりにくいことで知られるのは警戒心の強いクマネズミであり、ネズミの種類ごとの性質の違いを正確に押さえておくことが得点につながります。
(1) ネズミの糞(ふん)から、食中毒の原因となる病原体が検出されることがある。
適切です。ネズミは食品や食器、調理環境を汚染する衛生害獣として重要です。糞や尿、体毛にはさまざまな微生物が付着していることがあり、食中毒や感染症の原因となる病原体が検出されることもあります。つまり、ネズミの問題は単に見た目が不快というだけではなく、衛生管理上の重大なリスクを伴います。建築物衛生の観点では、食品取扱区域や厨房周辺で糞の有無を確認することが、被害の早期発見につながります。
(2) ハツカネズミは、クマネズミと比較してトラップにかかりにくく、殺鼠(そ)剤に弱い。
不適切です。トラップにかかりにくいことで有名なのは、一般にクマネズミです。クマネズミは警戒心が強く、新しい物に対して慎重に行動する性質があり、これをニューオブジェクト反応と考えると理解しやすいです。そのため、粘着トラップや捕獲器を設置しても、すぐには近づかないことがあります。一方、ハツカネズミは体が小さく行動範囲も比較的狭いですが、この記述のようにクマネズミよりトラップにかかりにくいと断定するのは適切ではありません。なお、殺鼠剤に対する感受性についても、設置環境や摂食量、個体差などの影響を受けるため、単純な表現で覚えるのではなく、クマネズミは警戒心が強く防除しにくいという点を中心に整理することが大切です。
(3) クマネズミはドブネズミと比較して、穀類などの植物性の餌を好む傾向が強い。
適切です。クマネズミは比較的植物性の餌を好む傾向があり、穀類、種子、果実などを食べやすい特徴があります。一方、ドブネズミは雑食性がより強く、植物性だけでなく動物性の餌もよく食べます。もちろん、実際の建物内では入手しやすい食べ物を利用するため、完全にきれいに分かれるわけではありませんが、試験対策としては、クマネズミは植物性寄り、ドブネズミはより雑食性が強いと整理しておくと正誤判断しやすくなります。
(4) クマネズミは、垂直な壁を登ったり、電線を伝わって室内に侵入する。
適切です。クマネズミは運動能力が高く、登はん能力に優れています。そのため、垂直な配管、壁面、電線、ケーブルラックなどを利用して高所へ移動し、天井裏や上層階にも侵入します。ビルや店舗で上階や天井内にネズミ被害がある場合、クマネズミが関与していることが多いのはこのためです。防除では、床面だけでなく、配線の引込部、天井裏、配管貫通部など立体的な侵入経路を意識する必要があります。
(5) ネズミの移動経路は、ほぼ一定しているため、体の汚れが通路となる壁やパイプシャフト周辺に付着する。
適切です。ネズミは警戒しながら壁際や物陰に沿って移動する習性があり、一定の経路を繰り返し利用することが多いです。その結果、体表の脂や汚れが壁面や配管、梁、パイプシャフト周辺に黒っぽいこすれ跡として残ることがあります。これをラブマークや擦過痕として捉えると実務でも役立ちます。こうした痕跡は、目視調査においてネズミの活動経路を推定する重要な手がかりになります。
この問題で覚えるポイント
ネズミの防除では、種類ごとの行動特性を区別して覚えることが重要です。クマネズミは警戒心が強く、トラップや新しい資材を避けやすいため、防除が難しい種類です。また、登はん能力が高く、電線や配管を伝って高所や建物内部へ侵入しやすい特徴があります。餌は比較的植物性を好む傾向があり、穀類や種子などに注意が必要です。 ドブネズミはクマネズミより地表性が強く、下水、地下、1階周辺などで活動しやすい傾向があります。雑食性が強く、植物性にも動物性にもよく反応します。体が大きく、湿った場所を好む点も特徴です。 ハツカネズミは小型で、狭い隙間からも侵入しやすく、屋内で営巣することがあります。ただし、試験ではクマネズミの警戒心の強さとの比較がよく問われるため、トラップにかかりにくい代表はクマネズミであると押さえることが大切です。 また、ネズミは糞、尿、体毛、足跡、ラブマークなどの痕跡を残します。特に壁際や配管周辺の黒ずみ、食品のかじり跡、天井裏の物音などは発生の有力な手がかりです。試験では、生態と防除を切り離さず、どの種類がどこを動き、何を好み、どんな痕跡を残すのかを一体で理解しておくと対応しやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、ネズミの種類ごとの特徴を入れ替えている点にあります。特に、警戒心が強くトラップにかかりにくい性質はクマネズミの代表的な特徴ですが、これをハツカネズミに置き換えることで誤答を誘っています。知識があいまいだと、どのネズミも似たような性質を持つように見えてしまい、もっともらしく感じてしまいます。 また、餌の好みや移動経路、登はん能力といった各特徴は、個別には見たことがあっても、種類と正確に結び付いていないと判断を誤ります。試験では、文章の一部だけが正しそうでも、主語になっているネズミの種類が違えば全体として誤りになります。このため、ネズミ対策では、性質そのものを覚えるだけでなく、どの種類の特徴なのかまでセットで整理する習慣をつけることが重要です。
