出典:建築物衛生管理技術者試験令和4年度(2022年)|建築物の環境衛生第25問
問題
エネルギー代謝に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 基礎代謝とは、早朝覚醒後の空腹時仰臥(が)の姿勢におけるエネルギー代謝のことである。
(2) 睡眠時代謝量は、基礎代謝量より高い。
(3) 安静時代謝量は、基礎代謝量よりおよそ20%高い。
(4) 熱産生は、主に摂取した食物の代謝による化学的エネルギーに由来する。
(5) 体温は、熱産生と熱放散のバランスにより一定に保たれている。
ビル管過去問|エネルギー代謝 基礎代謝・安静時代謝・睡眠時代謝を解説
この問題は、基礎代謝、睡眠時代謝、安静時代謝といった代表的なエネルギー代謝の違いを正しく理解しているかを問う問題です。用語が似ているため混同しやすいですが、それぞれの測定条件と大小関係を整理して覚えることが大切です。正答は(2)で、睡眠時代謝量は基礎代謝量より高いのではなく、通常は基礎代謝量より低いとされています。ほかの選択肢は、エネルギー代謝や体温調節の基本事項として適切な内容です。
(1) 基礎代謝とは、早朝覚醒後の空腹時仰臥(が)の姿勢におけるエネルギー代謝のことである。
適切です。基礎代謝とは、生命維持に最低限必要なエネルギー消費を指し、測定には厳密な条件があります。一般に、十分な睡眠をとった後の早朝、空腹時、安静、覚醒状態、そして仰臥位などの条件をそろえて測定されます。これは、食事や運動、精神的緊張などの影響をできるだけ除き、身体が生命を維持するために最低限使っているエネルギー量を知るためです。試験では、この「早朝」「空腹時」「安静」「覚醒」「仰臥位」という条件が頻出ですので、まとめて覚えておくと判断しやすくなります。
(2) 睡眠時代謝量は、基礎代謝量より高い。
不適切です。睡眠時代謝量は、通常、基礎代謝量より低いとされています。睡眠中は意識活動や筋活動がさらに低下し、身体のエネルギー消費も抑えられるためです。基礎代謝は、あくまで覚醒している状態での最低限の代謝ですが、睡眠時はそこからさらに低い水準になるのが一般的です。そのため、「睡眠時代謝量は基礎代謝量より高い」という記述は逆になっており、誤りです。代謝量の大小関係としては、安静時代謝量は基礎代謝量より高く、睡眠時代謝量は基礎代謝量より低いという整理が重要です。
(3) 安静時代謝量は、基礎代謝量よりおよそ20%高い。
適切です。安静時代謝量とは、身体活動をほとんど行っていない安静状態でのエネルギー代謝量を指しますが、基礎代謝ほど厳密な条件下で測定されるわけではありません。そのため、基礎代謝量よりやや高くなり、一般におよそ20%高いとされています。実際の生活では、完全に基礎代謝の測定条件を満たすことは難しいため、安静時代謝量の概念が用いられることも多いです。この問題では、基礎代謝と安静時代謝の違いを数値感覚とともに押さえているかが問われています。
(4) 熱産生は、主に摂取した食物の代謝による化学的エネルギーに由来する。
適切です。人体の熱産生は、体内で栄養素が代謝される際に生じる化学的エネルギーに由来します。食物として摂取した糖質、脂質、たんぱく質は体内で分解、利用され、その過程で一部が熱として放出されます。これにより体温の維持が可能になります。また、筋肉の活動時にはさらに熱産生が増加しますが、基本的には代謝そのものが熱の源です。このように、人体は食物から得たエネルギーを運動や生命活動だけでなく、体温維持にも使っています。
(5) 体温は、熱産生と熱放散のバランスにより一定に保たれている。
適切です。人体の体温は、体内で生み出される熱産生と、皮膚や呼吸などを通じて外へ逃げる熱放散とのバランスによって保たれています。寒い環境では、ふるえや末梢血管の収縮などにより熱を逃がしにくくし、暑い環境では、発汗や皮膚血管の拡張によって熱を放散しやすくします。このような体温調節機構によって、人体はおおむね一定の深部体温を維持しています。建築物環境衛生の分野でも、温熱環境と人体反応の理解につながる基本事項として重要です。
この問題で覚えるポイント
エネルギー代謝では、まず基礎代謝、安静時代謝、睡眠時代謝の定義と大小関係を整理することが重要です。基礎代謝は、早朝覚醒後、空腹時、安静、仰臥位などの厳密な条件で測定される生命維持に必要な最小限の代謝です。安静時代謝はそれより条件が緩く、一般に基礎代謝よりおよそ20%高くなります。睡眠時代謝は睡眠中の代謝であり、通常は基礎代謝より低くなります。この三者は名称が似ていますが、測定条件と代謝量の大小が異なります。また、人体の熱は食物由来の栄養素が代謝される過程で生じ、体温は熱産生と熱放散の均衡によって保たれています。試験対策としては、「基礎代謝は厳密条件下の基準」「安静時代謝は基礎代謝より高い」「睡眠時代謝は基礎代謝より低い」という関係を軸に覚えると、同テーマの問題に対応しやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、代謝量の名称が似ていて、しかもどれも「安静に近い状態」を表しているため、大小関係が曖昧になりやすい点にあります。特に、睡眠中は身体が休んでいるので代謝が高そうだと誤解する人はいませんが、「基礎代謝」という言葉の厳密な意味を知らないと、睡眠時代謝との比較で逆転して覚えてしまうことがあります。また、安静時代謝と基礎代謝も非常に近い概念なので、条件の厳しさの違いを理解していないと判別が難しくなります。問題作成者は、このような似た用語同士の混同を狙ってくることが多いため、単語だけでなく、どの条件で測るのか、どちらが高くどちらが低いのかまでセットで覚えることが大切です。
