出典:建築物衛生管理技術者試験令和3年度(2021年)|ねずみ、昆虫等の防除第179問
問題
ねずみ・昆虫等の防除に関する次の記述のうち、最も適当なものはどれか。
(1) ネズミや害虫に対しては、薬剤処理とトラップによる対策を優先的に実施する。
(2) IPMにおける警戒水準とは、すぐに防除作業が必要な状況をいう。
(3) 生息密度調査の結果が許容水準に該当した場合、原則として6カ月以内に一度、又は発生の多い場所では、2カ月以内に一度の定期的な調査を継続する。
(4) チャバネゴキブリが発生している厨房内の5箇所に3日間配置した粘着トラップでの捕獲数が、成虫30匹と幼虫120匹であった場合のゴキブリ指数は30である。
(5) ゴキブリ防除用として、医薬品や医薬部外品として承認された殺虫剤の代わりに使用できる農薬がある。
ビル管過去問|ねずみ昆虫等防除の基礎|許容水準・警戒水準・ゴキブリ指数を解説
この問題は、建築物におけるIPMの基本的な考え方と、許容水準・警戒水準の意味、さらにゴキブリ指数の計算方法や使用薬剤のルールを問う問題です。正しい選択肢は(3)です。IPMでは、いきなり薬剤に頼るのではなく、発生しにくい環境づくりと調査に基づく判断が基本です。また、数値基準や用語の意味を正確に押さえておかないと、もっともらしい文章に引っかかりやすいテーマです。

(1) ネズミや害虫に対しては、薬剤処理とトラップによる対策を優先的に実施する。
不適切です。IPMは総合的有害生物管理の考え方であり、防除の基本は、まず発生源の除去、侵入防止、餌や水の管理、清掃、整理整頓、隙間の閉鎖など、環境的・構造的な対策を優先することです。薬剤処理やトラップは重要な手段ですが、それだけを先に行っても、発生しやすい環境がそのままであれば再発しやすくなります。つまり、IPMでは「薬剤や捕獲器を先に使う」のではなく、「調査して原因をつかみ、環境改善を中心に必要な手段を組み合わせる」ことが原則です。
(2) IPMにおける警戒水準とは、すぐに防除作業が必要な状況をいう。
不適切です。警戒水準とは、ただちに大規模な防除作業を行う段階ではなく、今後の増加や被害拡大に注意し、監視や点検、必要に応じた早めの対応を検討する目安です。これに対して、許容水準を超えると、衛生上・管理上そのまま放置できない段階となり、本格的な防除措置が必要になります。試験では、警戒水準と許容水準の意味を逆にして出題されることが多いので注意が必要です。警戒水準は「注意を強める段階」、許容水準は「超えたら対策が必要な段階」と整理すると覚えやすいです。
(3) 生息密度調査の結果が許容水準に該当した場合、原則として6カ月以内に一度、又は発生の多い場所では、2カ月以内に一度の定期的な調査を継続する。
適切です。許容水準に該当している場合は、直ちに強い防除を行うのではなく、その状態を維持できるように継続的な監視を行うことが大切です。建築物におけるねずみ・昆虫等の防除では、生息密度調査を定期的に続けることが基本であり、原則として6カ月以内に1回、発生しやすい場所や重点管理区域では2カ月以内に1回の頻度で調査を継続するという考え方が重要です。IPMでは、問題が大きくなる前に変化をつかむことが非常に大切であり、この選択肢はその実務的な考え方に沿っています。
(4) チャバネゴキブリが発生している厨房内の5箇所に3日間配置した粘着トラップでの捕獲数が、成虫30匹と幼虫120匹であった場合のゴキブリ指数は30である。
不適切です。ゴキブリ指数は、一般にトラップ1枚1日当たりの捕獲数として考えます。この設問では、総捕獲数は成虫30匹と幼虫120匹で合計150匹です。トラップは5箇所、設置期間は3日間なので、ゴキブリ指数は150÷5÷3で10となります。したがって、30という値は誤りです。試験では、設置日数を無視して単純に5で割ってしまうミスを狙うことが多いため、「総捕獲数÷トラップ数÷日数」で考える癖をつけておくことが大切です。
(5) ゴキブリ防除用として、医薬品や医薬部外品として承認された殺虫剤の代わりに使用できる農薬がある。
不適切です。建築物内で衛生害虫の防除に使用する薬剤は、用途に応じて法令上適切なものを選ばなければなりません。ゴキブリ防除などの衛生害虫対策では、医薬品または医薬部外品として承認された殺虫剤を使用するのが基本です。農薬は農作物や農地などを対象にしたものであり、建築物衛生の場面でこれらの代用として自由に使用できるわけではありません。薬剤は「効けば何でもよい」のではなく、対象場所と用途に合った法的に適正なものを使う必要があります。
この問題で覚えるポイント
ねずみ・昆虫等の防除では、IPMの考え方が最重要です。IPMは、薬剤散布を中心に考える方法ではなく、発生状況の調査、侵入防止、発生源除去、清掃、整理整頓、構造上の改善などを組み合わせて、生息密度を管理する方法です。警戒水準は、発生が増えるおそれがあり注意深い監視や早めの対応が必要な段階を指し、許容水準は、その水準を超えると本格的な防除が必要になる基準です。定期調査は、許容水準内であっても継続して行うことが重要で、原則として6カ月以内に1回、発生の多い場所では2カ月以内に1回が目安です。ゴキブリ指数は、総捕獲数をトラップ数と設置日数で割って求めるため、単にトラップ数だけで割らないことが大切です。また、建築物内の衛生害虫防除では、用途に適した医薬品または医薬部外品を用いるというルールも重要です。IPMの原則、基準水準の意味、指数計算、薬剤区分の4点をセットで覚えると、同テーマの問題に対応しやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「薬剤を使う方が即効性があり正しそうに見える」という日常感覚を利用している点にあります。しかし、試験で問われるIPMは、即効性よりも再発防止と総合管理を重視します。また、警戒水準と許容水準は言葉の印象が似ているため、多くの受験者が意味を逆に覚えやすいところが狙われています。さらに、ゴキブリ指数では、捕獲総数をトラップ数だけで割ってしまう計算ミスが起こりやすく、設置日数を落として考える受験者を誘導しています。薬剤についても、「農薬も殺虫剤だから使えそうだ」と思わせるのが罠です。試験では、一部だけもっともらしい文章に注意し、定義、基準、計算条件、法的区分まで正確に確認することが大切です。
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