出典:建築物衛生管理技術者試験令和3年度(2021年)|建築物の環境衛生第27問
問題
ヒトの発がんの原因に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 発がんの要因として、食事が3分の1を占める。
(2) 感染症が発がんの原因となることがある。
(3) ラドンのばく露は肺がんのリスクを上昇させる。
(4) DNAに最初に傷を付け、変異を起こさせる物質をプロモータという。
(5) ホルムアルデヒドには発がん性が認められる。
ビル管過去問|発がん要因と環境リスクを解説
この問題は、ヒトの発がんに関わる要因についての基礎知識を問うものです。食事、感染症、ラドン、ホルムアルデヒドはいずれも発がんとの関連が知られており、正しい知識として押さえておきたい内容です。一方で、発がんの過程で使われる用語には似たものがあり、混同しやすい点に注意が必要です。正解は(4)で、DNAに最初に傷を付けて変異を起こさせる物質はプロモータではなくイニシエータです。プロモータは、すでに変異した細胞の増殖を促して発がんを進める働きをするものです。
(1) 発がんの要因として、食事が3分の1を占める。
適切です。発がんの原因にはさまざまなものがありますが、食生活はその中でも大きな割合を占めると考えられています。栄養の偏り、過剰摂取、塩分の多い食事、野菜や果物の不足などは、がんの発生に関与する可能性があります。試験では細かな割合そのものよりも、食事が重要な生活環境要因であることを理解しているかが問われています。日常の生活習慣が健康に大きく関わるという視点で覚えると整理しやすいです。
(2) 感染症が発がんの原因となることがある。
適切です。感染症の中には、がんの発生に関わるものがあります。たとえば、B型肝炎ウイルスやC型肝炎ウイルスは肝がん、ヒトパピローマウイルスは子宮頸がん、ヘリコバクター・ピロリは胃がんとの関連がよく知られています。つまり、がんは化学物質だけで起こるものではなく、微生物やウイルスなどの感染がきっかけになることもあります。この知識は、発がん要因を広く捉えるうえで重要です。
(3) ラドンのばく露は肺がんのリスクを上昇させる。
適切です。ラドンは自然界に存在する放射性物質で、土壌や岩石などから発生し、建物内にたまることがあります。これを長期間吸い込むことで肺がんのリスクが高まることが知られています。特に換気が不十分な場所では濃度が上がることがあるため、建築物の環境衛生を学ぶうえでも重要なテーマです。空気環境と健康影響を結び付けて理解しておくと、関連問題にも対応しやすくなります。
(4) DNAに最初に傷を付け、変異を起こさせる物質をプロモータという。
不適切です。DNAに最初に傷を与え、遺伝子変異を起こさせる物質はイニシエータといいます。これに対してプロモータは、すでに変異が生じた細胞の増殖を促進し、発がんを進行しやすくする働きをもつものです。発がんは一般に、開始、促進、進展という段階で理解されますが、この問題はその最初の開始段階に関わる用語を正しく区別できるかを問っています。言葉が似ているため混乱しやすいですが、変異を起こすのがイニシエータ、増殖を促すのがプロモータと整理して覚えると確実です。
(5) ホルムアルデヒドには発がん性が認められる。
適切です。ホルムアルデヒドは、建材や接着剤などから放散されることがある化学物質で、シックハウス症候群の原因物質として知られるだけでなく、発がん性も認められています。そのため、建築物の環境衛生では空気中濃度や換気の管理が重要になります。受験では、ホルムアルデヒドを単なる刺激性物質としてだけでなく、長期的な健康影響をもつ物質として理解しているかが問われやすいです。
この問題で覚えるポイント
発がん要因には、化学物質、放射線、生活習慣、感染症など多くのものがあります。食事は生活習慣の中でも重要な要因であり、発がんと深く関わると考えられています。感染症では、ウイルスや細菌が慢性的な炎症や細胞変化を通じてがんの原因になることがあります。ラドンは放射性物質であり、吸入によって肺がんのリスクを高めます。ホルムアルデヒドは刺激性だけでなく発がん性にも注意が必要です。発がんの過程では、まずDNAに変異を起こさせるイニシエータが働き、その後に変異細胞の増殖を促進するプロモータが関わります。この開始と促進の違いは、用語問題として非常によく問われるため、確実に区別できるようにしておくことが大切です。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、発がんの段階に関する専門用語の混同を狙っている点にあります。プロモータという語は、発がんに関係する物質として正しいため、何となくDNAを傷つける役割まで含むように感じてしまいやすいです。しかし、実際にはDNAに最初の変異を起こさせるのはイニシエータであり、プロモータはその後の増殖促進に関わる別の概念です。このように、用語の一部だけを曖昧に覚えていると、「発がんに関係する物質だから正しそうだ」と判断して誤答しやすくなります。今後も、似た専門用語は役割の違いまで含めて整理することが大切です。
