問題
揮発性有機化合物(VOCs)に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) VOCs の測定には、基本的にガスクロマトグラフ質量分析計を用いる。
(2) 加熱脱着法は、溶媒抽出法と比較して、測定感度は落ちる。
(3) TVOCの定義は、ヘキサンからヘキサデカンの範囲のVOCsの合計である。
(4) TVOCの測定には、バッシプ法を適用するのは困難である。
(5) 市販のTVOC モニタは、定期的な標準ガスによる校正が欠かせない。
ビル管過去問|VOC(揮発性有機化合物)の測定方法とTVOCを解説
この問題は、VOCの測定機器、試料採取法、TVOCの定義、簡易測定機器の取扱いについて理解しているかを問う問題です。室内空気環境の分野では、VOCは種類が多く、測定方法や評価方法を正しく押さえることが重要です。特に、加熱脱着法と溶媒抽出法の違い、TVOCの対象範囲、簡易モニタの限界はよく問われます。正しい選択肢の判定としては、(2)が不適切です。加熱脱着法は一般に溶媒抽出法より高感度で測定しやすい方法です。
(1) VOCs の測定には、基本的にガスクロマトグラフ質量分析計を用いる。
適切です。その理由は、VOCは多種類の化学物質が混在して存在することが多く、それぞれを分離して同定、定量する必要があるためです。ガスクロマトグラフ質量分析計は、まずガスクロマトグラフで成分を分離し、その後に質量分析計で各成分を識別します。このため、室内空気中のVOC測定では標準的かつ信頼性の高い方法として用いられます。単に濃度の総量を見るだけでなく、どの物質がどれだけ含まれているかまで確認できる点が重要です。
(2) 加熱脱着法は、溶媒抽出法と比較して、測定感度は落ちる。
不適切です。その理由は、一般に加熱脱着法の方が溶媒抽出法よりも高感度であるためです。加熱脱着法では、吸着剤に捕集したVOCを加熱してそのまま分析装置に導入できるため、試料のロスが少なく、溶媒による希釈も生じにくいという利点があります。一方、溶媒抽出法では、吸着した成分を溶媒で洗い出すため、希釈や回収率の問題が生じやすく、感度の面で不利になることがあります。したがって、「加熱脱着法は測定感度が落ちる」という記述は逆であり誤りです。
(3) TVOCの定義は、ヘキサンからヘキサデカンの範囲のVOCsの合計である。
適切です。その理由は、TVOCは個々のVOCを一つずつ評価するのではなく、一定の保持時間範囲に入る揮発性有機化合物の総量として扱う考え方だからです。一般にTVOCは、ガスクロマトグラフ上でヘキサンからヘキサデカンまでの範囲に相当する成分を合計したものとして定義されます。つまり、TVOCは「すべての有機化合物の総和」ではなく、一定範囲のVOCを対象とした指標です。この範囲を正確に覚えておくことが大切です。
(4) TVOCの測定には、バッシプ法を適用するのは困難である。
適切です。その理由は、TVOCは多種類のVOCの総量を評価する概念であり、受動的に採取する方法だけでは十分な精度や代表性を確保しにくいためです。パッシブ法は、特定物質の長時間平均濃度を簡便に把握するのには向いていますが、TVOCのように幅広い成分群を総合的に測るには限界があります。成分ごとの捕集効率の差や、温度、気流などの影響を受けやすい点も問題になります。そのため、TVOCの測定では、より管理しやすい捕集と分析方法が必要になります。
(5) 市販のTVOC モニタは、定期的な標準ガスによる校正が欠かせない。
適切です。その理由は、市販のTVOCモニタは簡易的に総量を把握するのに便利ですが、機器の特性上、測定値が経時的にずれたり、対象物質によって応答が変わったりするためです。簡易モニタは現場での傾向把握には有用ですが、精度を保つには標準ガスを用いた定期的な校正が必要です。校正をしないまま使用すると、表示値が実際の濃度から外れてしまい、評価を誤るおそれがあります。したがって、この記述は適切です。
この問題で覚えるポイント
VOCの標準的な分析には、成分を分離して同定できるガスクロマトグラフ質量分析計が用いられます。加熱脱着法は、溶媒抽出法よりも一般に高感度で、試料ロスや希釈の影響が少ない方法です。TVOCは、ヘキサンからヘキサデカンの範囲に相当するVOCの総量として扱います。市販のTVOCモニタは便利ですが、簡易機器であるため、定期的な校正が必要です。
ひっかけポイント
加熱脱着法と溶媒抽出法の優劣を逆に覚えてしまうと誤答しやすいです。TVOCを「すべてのVOCの総和」と曖昧に覚えていると、ヘキサンからヘキサデカンという範囲を落としやすくなります。簡易モニタは手軽に使えるため万能に見えますが、校正が不要という意味ではありません。パッシブ法は便利でも、TVOCのような幅広い成分群の総量評価には向きにくい点も注意が必要です。
