問題
熱放射に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 常温物体から射出される電磁波は、波長が10μm付近の赤外線が主体である。
(2) 黒色ペイントは、光ったアルミ箔より長波長放射率が大きい。
(3) 熱放射の近似的な取扱いでは、室内壁面温度の代わりに室内の空気温度が用いられる。
(4) 光ったアルミ箔は、酸化した亜鉛鉄板より日射吸収率が大きい。
(5) 放射熱伝達率は、放射のやりとりをする各面の長波長放射率の積に比例する。
ビル管過去問|熱放射を解説
この問題は、熱放射の基本事項である「放射の波長」「放射率」「日射吸収率」「室内環境での近似的な扱い」を問う問題です。正しい選択肢は、(4)です。光ったアルミ箔は一般に反射率が高く、日射を吸収しにくい材料です。一方で、酸化した金属面は表面がくすみ、放射率や吸収率が大きくなりやすいため、光ったアルミ箔のほうが日射吸収率が大きいという記述は不適当です。常温物体の放射は10μm前後の赤外線が中心であり、黒色塗装は磨いた金属より放射率が高いことも、熱放射の基本として押さえておきたい内容です。
(1) 常温物体から射出される電磁波は、波長が10μm付近の赤外線が主体である。
適切です。常温の物体が出す熱放射は、可視光ではなく赤外線が中心です。ウィーンの変位則では、放射のピーク波長は絶対温度に反比例し、室温程度の約293Kではおよそ9.9μm付近になります。したがって、常温物体からの放射は10μm前後の赤外線が主体と考えてよく、この記述は妥当です。
(2) 黒色ペイントは、光ったアルミ箔より長波長放射率が大きい。
適切です。一般に、つやのある磨かれた金属面は放射率が低く、逆に黒色やつや消しの塗装面は放射率が高いという性質があります。たとえば、磨かれたアルミニウムは放射率が非常に低く、黒色系の塗装面はかなり高い値を示します。そのため、黒色ペイントのほうが光ったアルミ箔より長波長放射率が大きいという判断で正しいです。建築設備では、見た目の色だけでなく、表面の仕上げや酸化の有無が放射特性に大きく影響する点が重要です。
(3) 熱放射の近似的な取扱いでは、室内壁面温度の代わりに室内の空気温度が用いられる。
適切です。実際の放射熱伝達は本来、各壁面の表面温度や形態係数などを考えて扱う必要があり、厳密には複雑です。しかし建築環境工学や熱負荷計算では、放射熱伝達率を用いて簡略化し、壁面温度と室内空気温度との関係として扱う近似がよく使われます。つまり、近似的な取り扱いでは室内の空気温度を代表値として用いて整理することがあり、この記述は実務的な簡略化の説明として妥当です。
(4) 光ったアルミ箔は、酸化した亜鉛鉄板より日射吸収率が大きい。
不適切です。これが最も不適当な記述です。光ったアルミ箔のような鏡面に近い金属表面は、日射をよく反射し、日射吸収率は小さくなります。これに対して、酸化した金属表面やくすんだ表面は、反射率が低下して吸収率が大きくなる傾向があります。ASHRAEの資料でも、光沢のあるアルミ系表面は日射吸収率が小さく、亜鉛めっき鋼板のような表面のほうがそれより大きい値を示しています。したがって、「光ったアルミ箔のほうが日射吸収率が大きい」という記述は逆であり、誤りです。
(5) 放射熱伝達率は、放射のやりとりをする各面の長波長放射率の積に比例する。
適切です。放射熱伝達は、表面温度だけでなく、表面の放射率にも左右されます。放射率が大きい面ほど熱を放射しやすく、また受け取りやすくなるため、放射熱伝達率も大きくなりやすいです。実際、放射熱伝達率は放射率を含む形で表され、放射率の低い磨かれた金属面では放射による熱移動が小さくなります。試験では、厳密な数式の暗記よりも、「放射率が大きい面ほど放射による熱のやりとりが起こりやすい」と理解しておくことが大切です。
この問題で覚えるポイント
熱放射の中心波長は温度で決まり、常温では10μm前後の赤外線が主体です。磨かれた金属面は放射率も日射吸収率も小さく、黒色塗装面や酸化した面は大きくなりやすいです。建築環境分野では、複雑な放射現象を放射熱伝達率で簡略化して扱うことがあります。光っている金属は「反射しやすい、吸収しにくい」と覚えると判断しやすくなります。
ひっかけポイント
「黒い=熱を出す」「白い=熱を出さない」と色だけで単純に判断すると誤りやすいです。実際には、表面の材質、仕上げ、酸化の有無が重要です。特に、光ったアルミ箔のような鏡面金属は吸収しにくいのに、見た目の印象で逆に判断しやすいので注意が必要です。また、放射の厳密な対象は壁面温度ですが、設問では近似的な扱いを問うことがあるため、「厳密」と「実務上の簡略化」を区別して読むのがコツです。
