出典:第二種衛生管理者2023年(令和5年度)4月公表問題|労働生理第22問
問題
心臓及び血液循環に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 心臓は、自律神経の中枢で発生した刺激が刺激伝導系を介して心筋に伝わることにより、規則正しく収縮と拡張を繰り返す。
(2) 肺循環により左心房に戻ってきた血液は、左心室を経て大動脈に入る。
(3) 大動脈を流れる血液は動脈血であるが、肺動脈を流れる血液は静脈血である。
(4) 心臓の拍動による動脈圧の変動を末梢の動脈で触知したものを脈拍といい、一般に、手首の橈(とう)骨動脈で触知する。
(5) 心臓自体は、大動脈の起始部から出る冠動脈によって酸素や栄養分の供給を受けている。
第二種衛生管理者|心臓と血液循環の基礎知識|冠動脈・肺循環・脈拍の仕組みを解説
心臓と血液循環では、心臓がどのように拍動するか、肺循環と体循環で血液がどの経路を通るか、動脈血と静脈血をどう見分けるかが重要です。答えは(1)です。心臓の拍動は自律神経の中枢から発生した刺激によって始まるのではなく、心臓内にある洞房結節から発生する刺激が刺激伝導系を通って心筋に伝わることで起こります。自律神経は心拍数や収縮の強さを調節しますが、拍動そのものを開始する中心ではありません。

(1) 心臓は、自律神経の中枢で発生した刺激が刺激伝導系を介して心筋に伝わることにより、規則正しく収縮と拡張を繰り返す。
不適切です。その理由は、心臓の規則的な拍動を開始する刺激は、自律神経の中枢で発生するのではなく、心臓内の洞房結節で発生するためです。洞房結節は右心房にあり、心臓のペースメーカーとして働きます。ここで生じた電気的刺激が刺激伝導系を通って心房から心室へ伝わり、心筋が順序よく収縮します。自律神経は心臓に作用しますが、役割は心拍数を速くしたり遅くしたりする調節です。交感神経は心拍数や心収縮力を高め、副交感神経は心拍数を低下させます。つまり、自律神経は拍動の調整役であり、拍動を発生させる主役ではありません。
(2) 肺循環により左心房に戻ってきた血液は、左心室を経て大動脈に入る。
適切です。その理由は、肺で酸素を受け取った血液は肺静脈を通って左心房に戻り、その後、左心室へ送られ、大動脈から全身へ送り出されるためです。肺循環は、右心室から肺動脈を通って肺へ行き、肺でガス交換を行った後、肺静脈を通って左心房へ戻る循環です。左心室は全身へ血液を送り出す強いポンプの役割を持ち、大動脈はその血液が最初に流れ込む太い血管です。
(3) 大動脈を流れる血液は動脈血であるが、肺動脈を流れる血液は静脈血である。
適切です。その理由は、動脈血と静脈血は血管名ではなく、酸素を多く含むかどうかで区別するためです。大動脈には左心室から全身へ送り出される酸素の多い血液、つまり動脈血が流れます。一方、肺動脈には右心室から肺へ向かう酸素の少ない血液、つまり静脈血が流れます。名前に「動脈」と付いていても、肺動脈を流れる血液は静脈血である点が試験でよく問われます。
(4) 心臓の拍動による動脈圧の変動を末梢の動脈で触知したものを脈拍といい、一般に、手首の橈(とう)骨動脈で触知する。
適切です。その理由は、脈拍は心臓の拍動によって動脈内の圧力が周期的に変化し、それが末梢の動脈で触れるものだからです。一般的には手首の親指側にある橈骨動脈で測定します。心臓が収縮して血液を送り出すたびに動脈壁が押し広げられ、その波が末梢まで伝わります。脈拍は心拍の状態を簡単に確認できる指標であり、健康管理や救急時の観察でも重要です。
(5) 心臓自体は、大動脈の起始部から出る冠動脈によって酸素や栄養分の供給を受けている。
適切です。その理由は、心臓の筋肉である心筋も活動を続けるために酸素や栄養分を必要とし、それを冠動脈から受け取っているためです。冠動脈は大動脈の起始部から枝分かれし、心臓の表面を走って心筋へ血液を送ります。冠動脈が狭くなったり詰まったりすると、心筋に十分な酸素が届かなくなり、狭心症や心筋梗塞の原因になります。心臓は血液を送り出す臓器ですが、心臓自身も血液の供給を受けて働いていることを押さえておくと理解しやすいです。
この問題で覚えるポイント
心臓の拍動は、右心房にある洞房結節で発生した刺激が刺激伝導系を通って心筋に伝わることで起こります。自律神経は心拍を開始するのではなく、交感神経が心拍数や収縮力を高め、副交感神経が心拍数を低下させるように調節します。肺循環は、右心室から肺動脈を通って肺へ行き、肺静脈を通って左心房へ戻る流れです。体循環は、左心室から大動脈を通って全身へ行き、静脈を通って右心房へ戻る流れです。動脈血は酸素を多く含む血液、静脈血は酸素が少ない血液を指します。肺動脈には静脈血が流れ、肺静脈には動脈血が流れるため、血管名だけで判断しないことが大切です。脈拍は心臓の拍動による動脈圧の変動を末梢動脈で触知したもので、一般には手首の橈骨動脈で測定します。心臓の筋肉は、大動脈の起始部から出る冠動脈によって酸素や栄養分を供給されています。
ひっかけポイント
このテーマでは、「自律神経」と「刺激伝導系」の役割を混同しやすい点が狙われます。自律神経は心臓の動きを調節するため、心拍に関係していることは正しいですが、刺激を発生させて拍動を始める中心ではありません。このように、一部だけ正しい文章は誤答を誘いやすいです。また、肺動脈や肺静脈は名称だけで判断すると間違えやすい代表例です。通常は動脈に動脈血、静脈に静脈血が流れると考えがちですが、肺循環では肺動脈に静脈血、肺静脈に動脈血が流れます。心臓や血液循環の問題では、用語の印象ではなく、血液がどこからどこへ向かっているか、酸素を多く含んでいるかを確認することが正誤判断の鍵になります。
