【第二種衛生管理者過去問】2023年4月公表問題|問16|労働衛生統計の基礎知識|正規分布・静態データ・相関関係の理解|労働衛生を解説

出典:第二種衛生管理者2023年(令和5年度)4月公表問題|労働衛生第16問

問題

労働衛生管理に用いられる統計に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。

(1) 生体から得られたある指標が正規分布である場合、そのばらつきの程度は、平均値及び中央値によって表される。

(2) 集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。

(3) 健康管理統計において、ある時点での集団に関するデータを静態データといい、「有所見率」は静態データの一つである。

(4) ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。

(5) 健康診断において、対象人数、受診者数などのデータを計数データといい、身長、体重などのデータを計量データという。

第二種衛生管理者|労働衛生統計の基礎知識を解説

労働衛生統計では、データの種類、分布の見方、集団比較、相関関係と因果関係の違いを正しく理解することが重要です。答えは(1)です。正規分布におけるばらつきの程度は、平均値や中央値ではなく、分散や標準偏差によって表します。平均値や中央値はデータの中心的な位置を示す代表値であり、ばらつきそのものを示す指標ではありません。

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(1) 生体から得られたある指標が正規分布である場合、そのばらつきの程度は、平均値及び中央値によって表される。

不適切です。平均値や中央値は、データがどのあたりを中心に分布しているかを示す値です。たとえば、身長や血圧などのデータで平均値が同じであっても、値が平均付近に集中している集団もあれば、大きく散らばっている集団もあります。この散らばりの程度を表すのが分散や標準偏差です。正規分布では、平均値を中心として左右対称にデータが分布しますが、分布の広がり方は標準偏差によって評価します。平均値と中央値は中心の位置を示す指標であり、ばらつきの程度を表す指標ではないため、この記述は誤りです。

(2) 集団を比較する場合、調査の対象とした項目のデータの平均値が等しくても分散が異なっていれば、異なった特徴をもつ集団であると評価される。

適切です。平均値が同じでも、分散が異なれば集団の性質は異なります。たとえば、2つの職場で平均血圧が同じであっても、一方はほとんどの人が平均値付近に集まっており、もう一方は低い人と高い人の差が大きい場合があります。この場合、平均値だけを見ると同じように見えますが、健康管理上のリスクの広がり方は異なります。分散はデータのばらつきの程度を示すため、集団の特徴を比較するうえで重要な指標です。

(3) 健康管理統計において、ある時点での集団に関するデータを静態データといい、「有所見率」は静態データの一つである。

適切です。静態データとは、ある一時点における集団の状態を示すデータです。健康診断での有所見率は、ある時点で検査を受けた集団のうち、異常所見があった人の割合を示すものです。その時点における健康状態の断面を表しているため、静態データに該当します。これに対して、一定期間における発生状況や変化を示すデータは動態データとして扱われます。

(4) ある事象と健康事象との間に、統計上、一方が多いと他方も多いというような相関関係が認められたとしても、それらの間に因果関係があるとは限らない。

適切です。相関関係とは、2つの事柄が一緒に増えたり、一方が増えると他方が減ったりするような統計上の関係をいいます。しかし、相関があるからといって、必ず一方が他方の原因であるとはいえません。たとえば、ある作業環境と体調不良の発生に関連が見られても、年齢、生活習慣、作業時間、既往歴など別の要因が影響している可能性があります。統計では、相関関係と因果関係を区別して考えることが大切です。

(5) 健康診断において、対象人数、受診者数などのデータを計数データといい、身長、体重などのデータを計量データという。

適切です。計数データとは、人数や件数のように数えて得られるデータです。健康診断の対象人数、受診者数、有所見者数などがこれに当たります。計量データとは、測定によって得られる連続的な数値データです。身長、体重、血圧、血糖値などが代表例です。労働衛生統計では、データが計数データなのか計量データなのかによって、集計や分析の方法が変わります。

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この問題で覚えるポイント

統計で中心の位置を表す代表値には平均値、中央値、最頻値があります。ばらつきの程度を表す指標には分散、標準偏差、範囲などがあります。正規分布は平均値を中心に左右対称となる分布で、ばらつきは標準偏差で判断します。平均値が同じでも分散が異なれば、集団の特徴は異なると評価できます。静態データはある時点の状態を示すデータで、有所見率や受診率などが該当します。計数データは人数や件数のように数えるデータで、計量データは身長、体重、血圧のように測定して得られるデータです。相関関係は2つの事象に統計上の関連があることを示しますが、因果関係をただちに証明するものではありません。

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ひっかけポイント

この問題では、平均値や中央値というよく知られた用語を使って、ばらつきの指標と混同させる点がひっかけです。平均値や中央値はデータの中心を示す言葉なので、正規分布の説明として見ると正しそうに感じます。しかし、問われているのは中心ではなく、ばらつきの程度です。統計問題では、「中心を表す指標」なのか「散らばりを表す指標」なのかを必ず分けて考える必要があります。また、相関関係があると因果関係まであるように判断してしまうのもよくある誤りです。統計上の関連が見られても、別の要因が関係している可能性があるため、相関と因果は別物として押さえておきましょう。

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