出典:第二種衛生管理者2021年(令和3年度)10月公表問題|労働生理第24問
問題
呼吸に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 呼吸運動は、気管と胸膜の協調運動によって、胸郭内容積を周期的に増減させて行われる。
(2) 胸郭内容積が増し、その内圧が低くなるにつれ、鼻腔(くう)、気管などの気道を経て肺内へ流れ込む空気が吸気である。
(3) 肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われる酸素と二酸化炭素のガス交換を、肺呼吸又は外呼吸という。
(4) 全身の毛細血管中の血液が各組織細胞に酸素を渡して二酸化炭素を受け取るガス交換を、組織呼吸又は内呼吸という。
(5) 血液中の二酸化炭素濃度が増加すると、呼吸中枢が刺激され、肺でのガス交換の量が多くなる。
第二種衛生管理者|呼吸の基礎知識|外呼吸・内呼吸・呼吸中枢の働きを解説
呼吸は、胸郭の容積変化によって空気を出し入れし、肺胞と血液、血液と組織細胞の間で酸素と二酸化炭素を交換する仕組みです。答えは(1)です。呼吸運動は、主に肋間筋と横隔膜の働きによって胸郭内容積を増減させて行われるため、「気管と胸膜の協調運動」とする記述は誤りです。気管は空気の通り道であり、胸膜は肺を覆う膜であって、呼吸運動の主役ではありません。

(1) 呼吸運動は、気管と胸膜の協調運動によって、胸郭内容積を周期的に増減させて行われる。
不適切です。その理由は、呼吸運動の中心となるのは気管と胸膜ではなく、横隔膜と肋間筋だからです。吸息時には横隔膜が収縮して下がり、外肋間筋などの働きで胸郭が広がります。その結果、胸郭内容積が増え、肺内圧が低下して空気が肺に入ります。気管は空気の通路であり、胸膜は肺と胸壁の動きをなめらかに連動させる膜ですが、胸郭内容積を周期的に増減させる主役ではありません。ここでは「気管と胸膜」という組合せが誤りです。
(2) 胸郭内容積が増し、その内圧が低くなるにつれ、鼻腔(くう)、気管などの気道を経て肺内へ流れ込む空気が吸気である。
適切です。その理由は、吸気は胸郭内容積の増加と肺内圧の低下によって起こるからです。横隔膜や肋間筋の働きで胸郭が広がると、肺も広がり、肺内の圧力が外気圧より低くなります。空気は圧力の高い方から低い方へ流れるため、鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支などを通って肺内へ入ります。この肺内へ空気が流れ込む過程が吸気です。
(3) 肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われる酸素と二酸化炭素のガス交換を、肺呼吸又は外呼吸という。
適切です。その理由は、外呼吸とは、肺胞と肺胞周囲の毛細血管との間で行われるガス交換を指すためです。肺胞内の空気には酸素が多く、肺胞周囲の毛細血管を流れる血液には二酸化炭素が多く含まれています。その濃度差によって、酸素は肺胞から血液へ、二酸化炭素は血液から肺胞へ移動します。この肺で行われるガス交換を、肺呼吸又は外呼吸といいます。
(4) 全身の毛細血管中の血液が各組織細胞に酸素を渡して二酸化炭素を受け取るガス交換を、組織呼吸又は内呼吸という。
適切です。その理由は、内呼吸とは、血液と全身の組織細胞との間で行われるガス交換を指すためです。肺で酸素を受け取った血液は全身に運ばれ、各組織細胞に酸素を渡します。組織細胞は代謝によって二酸化炭素を生じるため、血液はその二酸化炭素を受け取って肺へ戻します。この血液と組織細胞の間のガス交換を、組織呼吸又は内呼吸といいます。
(5) 血液中の二酸化炭素濃度が増加すると、呼吸中枢が刺激され、肺でのガス交換の量が多くなる。
適切です。その理由は、血液中の二酸化炭素濃度の上昇は、呼吸中枢を刺激して呼吸を促進する重要な要因だからです。二酸化炭素が増えると血液は酸性に傾きやすくなり、その変化を呼吸中枢が感知します。呼吸中枢が刺激されると、呼吸数や呼吸の深さが増し、肺でのガス交換が活発になります。これにより、余分な二酸化炭素を体外へ排出し、体内環境を一定に保とうとします。
この問題で覚えるポイント
呼吸運動は、主に横隔膜と肋間筋によって行われます。吸気では胸郭内容積が増加し、肺内圧が低下して空気が肺に入ります。呼気では胸郭内容積が減少し、肺内圧が上昇して空気が肺外へ出ます。外呼吸は肺胞と肺胞周囲の毛細血管の間のガス交換であり、酸素は肺胞から血液へ、二酸化炭素は血液から肺胞へ移動します。内呼吸は全身の毛細血管と組織細胞の間のガス交換であり、血液は組織細胞へ酸素を渡し、組織細胞から二酸化炭素を受け取ります。呼吸中枢は主に延髄にあり、血液中の二酸化炭素濃度の上昇によって刺激され、呼吸を促進します。試験では、外呼吸と内呼吸の場所の違い、吸気と呼気の圧力変化、呼吸運動の主役が横隔膜と肋間筋であることを押さえると正誤判断しやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「気管」「胸膜」という呼吸に関係する用語を使って、呼吸運動の主役であるかのように見せている点です。気管は空気の通り道であり、胸膜は肺を覆って胸壁との動きを助ける膜ですが、胸郭内容積を増減させる筋肉ではありません。呼吸に関する問題では、関係する器官名が出てくるだけで正しいと判断してしまうと誤答しやすくなります。また、外呼吸と内呼吸は名前が似ていますが、外呼吸は肺胞と血液、内呼吸は血液と組織細胞の間のガス交換です。用語を丸暗記するよりも、「どこで、何と何の間で、酸素と二酸化炭素がどう移動するか」をセットで覚えることが大切です。
