出典:第二種衛生管理者2022年(令和4年度)10月公表問題|労働生理第23問
問題
体温調節に関する次の記述のうち、正しいものはどれか。
(1) 体温調節中枢は、脳幹の延髄にある。
(2) 暑熱な環境においては、内臓の血流量が増加し体内の代謝活動が亢(こう)進することにより、人体からの熱の放散が促進される。
(3) 体温調節のように、外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保つ生体の仕組みを同調性といい、筋肉と神経系により調整されている。
(4) 計算上、体重70kgの人の体表面から10gの汗が蒸発すると、体温が約1℃下がる。
(5) 発汗のほかに、皮膚及び呼気から水分を蒸発させている現象を不感蒸泄(せつ)という。
第二種衛生管理者|第二種衛生管理者過去問|体温調節の仕組み|不感蒸泄とホメオスタシスの基礎知識を解説を解説
体温調節では、体温調節中枢の場所、暑熱環境での血流変化、ホメオスタシス、不感蒸泄の意味がよく問われます。正しい答えは(5)です。発汗とは別に、皮膚や呼気から自覚しにくい水分蒸発が常に起こっており、これを不感蒸泄といいます。

(1) 体温調節中枢は、脳幹の延髄にある。
不適切です。体温調節中枢は延髄ではなく、間脳の視床下部にあります。視床下部は、体温、空腹、口渇、自律神経、内分泌など、生命維持に関わる調整を行う重要な部位です。延髄は呼吸や心拍などの生命維持機能に関係しますが、体温調節中枢として覚えるべき場所は視床下部です。
(2) 暑熱な環境においては、内臓の血流量が増加し体内の代謝活動が亢(こう)進することにより、人体からの熱の放散が促進される。
不適切です。暑熱環境では、体内の熱を外へ逃がすために皮膚の血管が拡張し、皮膚血流量が増加します。これにより、体表面から熱が放散されやすくなります。内臓の血流量が増加して代謝活動が亢進するという説明は誤りです。暑いときに重要なのは、皮膚血流の増加と発汗による熱放散です。
(3) 体温調節のように、外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保つ生体の仕組みを同調性といい、筋肉と神経系により調整されている。
不適切です。外部環境が変化しても身体内部の状態を一定に保とうとする仕組みは、同調性ではなく恒常性、またはホメオスタシスといいます。体温だけでなく、血糖値、血圧、体液の濃度などもホメオスタシスによって調整されています。また、体温調節は主に自律神経系や内分泌系の働きによって調整されます。
(4) 計算上、体重70kgの人の体表面から10gの汗が蒸発すると、体温が約1℃下がる。
不適切です。汗の蒸発によって体温は下がりますが、10gの汗の蒸発で体重70kgの人の体温が約1℃下がるという数値は大きすぎます。水分が蒸発するときには気化熱が奪われるため、発汗は熱放散に有効ですが、体温を1℃下げるにはかなり多くの汗の蒸発が必要です。試験では、汗が蒸発することで熱が奪われるという原理と、極端な数値表現を見分けることが大切です。
(5) 発汗のほかに、皮膚及び呼気から水分を蒸発させている現象を不感蒸泄(せつ)という。
適切です。不感蒸泄とは、発汗として自覚される汗とは別に、皮膚や呼気から水分が自然に蒸発している現象をいいます。目に見える汗ではないため「不感」と表現されます。体温調節や水分出納に関係する基本用語であり、発汗とは区別して覚える必要があります。
この問題で覚えるポイント
体温調節中枢は間脳の視床下部にあります。延髄は呼吸や心拍などに関係するため、体温調節中枢と混同しないことが重要です。暑熱環境では、皮膚血管が拡張して皮膚血流量が増え、発汗も起こることで熱の放散が促進されます。寒冷環境では、皮膚血管が収縮して熱の放散を抑え、ふるえなどにより熱産生が高まります。外部環境が変化しても体内の状態を一定に保つ仕組みはホメオスタシス、または恒常性といいます。不感蒸泄は、発汗とは別に皮膚や呼気から水分が蒸発する現象です。汗は蒸発するときに気化熱を奪うため体温低下に役立ちますが、少量の汗で体温が大きく下がるという極端な数値には注意が必要です。
ひっかけポイント
体温調節の問題では、視床下部と延髄の混同がよく狙われます。延髄は生命維持に重要な部位なので正しそうに見えますが、体温調節中枢は視床下部です。また、暑いときは「血流が増える」という部分だけを見ると正しく感じますが、増えるのは内臓の血流ではなく皮膚の血流です。ホメオスタシスを同調性などの似た言葉に置き換えるひっかけもあります。さらに、汗の蒸発による熱放散という原理自体は正しくても、数値が極端にずれている場合があります。用語の正確さ、血流の場所、数値の妥当性を確認することが、このテーマで誤答を避けるコツです。
