出典:第一種衛生管理者2021年(令和3年度)4月公表問題|関係法令(有害業務に係るもの)第5問
問題
次の業務のうち、労働者を就かせるとき、法令に基づく安全又は衛生のための特別の教育を行わなければならないものはどれか。
(1) チェーンソーを用いて行う造材の業務
(2) エックス線回折装置を用いて行う分析の業務
(3) 特定化学物質を用いて行う分析の業務
(4) 有機溶剤等を入れたことがあるタンクの内部における業務
(5) 削岩機、チッピングハンマー等チェーンソー以外の振動工具を取り扱う業務
第1種衛生管理者|特別教育が必要な業務一覧|安全衛生教育の対象作業を解説
労働安全衛生法では、危険又は有害な業務のうち一定のものについて、労働者をその業務に就かせる前に特別教育を行うことが義務付けられています。答えは「チェーンソーを用いて行う造材の業務」です。チェーンソー作業は、切創、伐倒時の激突、キックバック、振動障害などの危険が大きく、法令上、特別教育の対象とされています。他の選択肢は、有害性や危険性がある業務ではありますが、この設問で問われている「特別教育が義務付けられている業務」としては該当しません。
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(1) チェーンソーを用いて行う造材の業務
適切です。チェーンソーを用いて行う造材の業務は、法令に基づく特別教育の対象です。チェーンソーは高速で刃が回転する工具であり、取り扱いを誤ると重大な切創災害につながります。また、木材を切る作業では、切断中の材の跳ね返り、倒木、枝の反発、チェーンソー本体のキックバックなど、作業者が予測しにくい危険もあります。さらに、振動工具としての性質もあり、長時間使用による振動障害のリスクもあります。そのため、作業方法、チェーンソーの構造、点検整備、保護具の使用、災害防止措置などについて、就業前に特別教育を行う必要があります。
(2) エックス線回折装置を用いて行う分析の業務
不適切です。エックス線を用いる業務には放射線被ばくのリスクがありますが、この選択肢の「エックス線回折装置を用いて行う分析の業務」は、特別教育の対象業務として問われる代表的なものではありません。放射線関係では、エックス線装置を用いる透過写真撮影の業務など、被ばくの危険が高い一定の業務が特別教育の対象になります。ここでは「エックス線」という言葉だけで判断せず、どの装置を用いて、どのような作業を行うかまで確認することが大切です。
(3) 特定化学物質を用いて行う分析の業務
不適切です。特定化学物質は、がん原性、毒性、皮膚障害、呼吸器障害などを引き起こすおそれがある有害物質であり、取り扱いには十分な注意が必要です。ただし、特定化学物質を用いて行う分析の業務そのものは、この設問で問われている特別教育の対象業務には該当しません。特定化学物質については、作業主任者の選任、局所排気装置等の設置、作業環境測定、特殊健康診断、掲示、記録の保存など、別の規制が重要になります。有害物質だから直ちに特別教育の対象になる、と考えないことがポイントです。
(4) 有機溶剤等を入れたことがあるタンクの内部における業務
不適切です。有機溶剤等を入れたことがあるタンクの内部では、残留蒸気による中毒、酸素欠乏、火災や爆発などの危険があります。そのため、換気、濃度測定、呼吸用保護具、作業主任者の関与など、安全衛生上の管理が重要です。ただし、この選択肢の業務は、特別教育が必要な業務としてではなく、有機溶剤中毒予防規則や酸素欠乏症等防止規則などの観点で整理すべき内容です。タンク内作業は危険性が高いため特別教育と結び付けたくなりますが、法令上の分類を正確に区別する必要があります。
(5) 削岩機、チッピングハンマー等チェーンソー以外の振動工具を取り扱う業務
不適切です。削岩機やチッピングハンマーなどの振動工具は、長時間使用により振動障害を引き起こすおそれがあります。そのため、作業時間の管理、工具の点検、保温、防振手袋の使用、健康診断などの対策が重要です。しかし、チェーンソー以外の振動工具を取り扱う業務は、この設問における特別教育の対象業務ではありません。振動工具という共通点からチェーンソーと混同しやすいですが、特別教育の対象として明確に押さえるべきなのは、チェーンソーを用いる一定の業務です。
この問題で覚えるポイント
特別教育は、危険又は有害な業務のうち、法令で定められた業務に労働者を就かせるときに実施する教育です。代表例として、チェーンソーを用いて行う造材の業務、アーク溶接等の業務、低圧電気取扱業務、フォークリフトの運転業務のうち最大荷重1トン未満のもの、クレーン運転業務の一部、酸素欠乏危険作業に係る業務、粉じん作業に係る業務などがあります。重要なのは、危険そうな業務や有害物質を扱う業務がすべて特別教育の対象になるわけではないという点です。特定化学物質や有機溶剤については、作業主任者、作業環境測定、特殊健康診断、設備管理などの規制と結び付けて整理します。チェーンソーについては、切創災害、キックバック、倒木、振動障害などのリスクが大きいため、特別教育の対象として頻出です。試験では、「チェーンソー」と「チェーンソー以外の振動工具」を区別して覚えることが正誤判断に直結します。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「危険そう」「有害そう」という印象だけで特別教育の対象と判断させるところにあります。エックス線、特定化学物質、有機溶剤、振動工具はいずれも安全衛生上重要なテーマですが、すべてが同じ規制に分類されるわけではありません。特に、特定化学物質や有機溶剤は有害性が高いため、特別教育が必要だと考えやすいですが、実際には作業主任者、作業環境測定、特殊健康診断など別の制度で問われることが多い分野です。また、削岩機やチッピングハンマーは振動障害のリスクがあるためチェーンソーと混同しやすいですが、特別教育の対象として狙われるのはチェーンソーを用いる造材の業務です。このように、試験では「危険性の有無」ではなく、「どの法令上の義務に該当するか」を区別して判断することが大切です。
