出典:第一種衛生管理者2022年(令和4年度)4月公表問題|労働衛生(有害業務に係るもの以外のもの)第34問
問題
感染症に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 人間の抵抗力が低下した場合は、通常、多くの人には影響を及ぼさない病原体が病気を発症させることがあり、これを不顕性感染という。
(2) 感染が成立し、症状が現れるまでの人をキャリアといい、感染したことに気付かずに病原体をばらまく感染源になることがある。
(3) 微生物を含む飛沫の水分が蒸発して、5µm以下の小粒子として長時間空気中に浮遊し、空調などを通じて感染することを空気感染という。
(4) 風しんは、発熱、発疹、リンパ節腫脹(しゅちょう)を特徴とするウイルス性発疹症で、免疫のない女性が妊娠初期に風しんにかかると、胎児に感染し出生児が先天性風しん症候群(CRS)となる危険性がある。
(5) インフルエンザウイルスにはA型、B型及びC型の三つの型があるが、流行の原因となるのは、主として、A型及びB型である。
第1種衛生管理者|感染症の感染経路・キャリア・空気感染・インフルエンザを解説
感染症では、感染の成立、感染経路、病原体を保有する人の状態、代表的なウイルス感染症の特徴を正確に区別することが重要です。答えは(1)です。抵抗力が低下した人に、通常は強い病原性を示さない微生物が感染症を起こすことは日和見感染といいます。不顕性感染は、感染していても症状が現れない状態を指すため、用語の説明が入れ替わっています。
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(1) 人間の抵抗力が低下した場合は、通常、多くの人には影響を及ぼさない病原体が病気を発症させることがあり、これを不顕性感染という。
不適切です。その理由は、説明されている内容が不顕性感染ではなく、日和見感染だからです。日和見感染とは、健康な人では通常問題になりにくい病原体が、免疫力や抵抗力が低下した人に感染して発症することをいいます。高齢者、重い病気のある人、免疫抑制薬を使用している人などでは、普段は病気を起こしにくい微生物でも感染症の原因になることがあります。不顕性感染とは、病原体に感染しているにもかかわらず、発熱や咳、発疹などの症状が現れない感染状態をいいます。つまり、この選択肢は「抵抗力低下による発症」と「症状が出ない感染」を混同しているため誤りです。
(2) 感染が成立し、症状が現れるまでの人をキャリアといい、感染したことに気付かずに病原体をばらまく感染源になることがある。
適切です。その理由は、病原体を体内に保有している人が、症状の有無にかかわらず感染源となることがあるからです。キャリアとは、病原体を保有している人を指し、症状がはっきり出ていない場合でも、周囲に病原体を広げる可能性があります。感染症では、発症している人だけでなく、潜伏期間中の人や症状の軽い人、不顕性感染の人が感染源になることがあります。本人が感染に気付かないまま通常どおり行動するため、感染拡大につながりやすい点が重要です。
(3) 微生物を含む飛沫の水分が蒸発して、5µm以下の小粒子として長時間空気中に浮遊し、空調などを通じて感染することを空気感染という。
適切です。その理由は、空気感染は、病原体を含む非常に小さい粒子が空気中を長時間浮遊し、それを吸い込むことで感染する経路だからです。咳やくしゃみで出た飛沫は通常すぐに落下しますが、水分が蒸発して飛沫核となると、5µm以下の小粒子として空気中に漂いやすくなります。空気感染は、飛沫感染よりも広い範囲で感染が起こる可能性があり、換気や空調管理も重要になります。代表例として、結核、麻しん、水痘などが空気感染を起こす感染症として知られています。
(4) 風しんは、発熱、発疹、リンパ節腫脹(しゅちょう)を特徴とするウイルス性発疹症で、免疫のない女性が妊娠初期に風しんにかかると、胎児に感染し出生児が先天性風しん症候群(CRS)となる危険性がある。
適切です。その理由は、風しんの特徴と妊娠初期感染のリスクを正しく説明しているからです。風しんはウイルスによる感染症で、発熱、発疹、リンパ節腫脹が代表的な症状です。特に重要なのは、免疫のない妊婦が妊娠初期に感染した場合、胎児にも感染して、先天性風しん症候群を起こすおそれがある点です。先天性風しん症候群では、出生児に心疾患、難聴、白内障などが生じることがあります。試験では、風しんは本人の症状だけでなく、妊娠初期の胎児への影響まで押さえる必要があります。
(5) インフルエンザウイルスにはA型、B型及びC型の三つの型があるが、流行の原因となるのは、主として、A型及びB型である。
適切です。その理由は、季節性インフルエンザとして流行を起こす主な型はA型とB型だからです。インフルエンザウイルスにはA型、B型、C型がありますが、大きな流行や季節性の流行で問題となるのは主にA型とB型です。A型は変異しやすく、世界的な大流行を起こすことがあります。B型も季節性流行の原因になります。C型は感染しても症状が比較的軽いことが多く、大きな流行の原因としては一般に重視されません。
この問題で覚えるポイント
感染症では、日和見感染、不顕性感染、キャリア、潜伏期間、感染経路の違いを区別することが正誤判断に直結します。日和見感染は、抵抗力や免疫力が低下した人に、通常は強い病原性を示さない病原体が感染症を起こすことです。不顕性感染は、感染しているにもかかわらず症状が現れない状態です。キャリアは、病原体を保有している人を指し、症状がなくても感染源になることがあります。空気感染は、5µm以下の飛沫核が長時間空気中に浮遊して感染する経路で、飛沫感染よりも広範囲に感染が広がる可能性があります。風しんは発熱、発疹、リンパ節腫脹が特徴で、妊娠初期の感染では先天性風しん症候群の危険があります。インフルエンザウイルスはA型、B型、C型に分けられ、流行の主な原因はA型とB型です。
ひっかけポイント
この問題の最大のひっかけは、日和見感染と不顕性感染の用語の混同です。どちらも感染症の分野でよく出る言葉ですが、意味はまったく異なります。抵抗力が低下して発症するという説明が出たら日和見感染、感染しているのに症状が出ないという説明が出たら不顕性感染と判断します。また、キャリアは症状がある人だけを指すわけではなく、無症状でも病原体を保有して感染源になる点が狙われやすいです。空気感染では5µm以下という粒子の大きさが重要で、飛沫感染との違いを問われます。文章の一部が正しく見えても、用語名だけがすり替えられていることがあるため、定義と用語を必ずセットで確認することが大切です。
