出典:第一種衛生管理者2022年(令和4年度)4月公表問題|労働生理第35問
問題
呼吸に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 呼吸運動は、横隔膜、肋間筋などの呼吸筋が収縮と弛緩(しかん)をすることにより行われる。
(2) 胸郭内容積が増し、その内圧が低くなるにつれ、鼻腔、気管などの気道を経て肺内へ流れ込む空気が吸気である。
(3) 肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われるガス交換を外呼吸という。
(4) 呼吸数は、通常、1分間に16~20回で、成人の安静時の1回呼吸量は、約500mLである。
(5) 呼吸のリズムをコントロールしているのは、間脳の視床下部である。
第1種衛生管理者|呼吸の仕組み・肺胞ガス交換・呼吸中枢の働きを解説
呼吸は、空気を肺へ出し入れする呼吸運動、肺胞と血液の間で酸素と二酸化炭素を交換する外呼吸、そして呼吸のリズムを調節する神経中枢の働きによって成り立っています。答えは(5)です。呼吸のリズムを主にコントロールしているのは間脳の視床下部ではなく、延髄にある呼吸中枢です。視床下部は体温調節、自律神経、内分泌、摂食行動などに深く関わる部位であり、呼吸リズムの基本的な調節中枢として覚えるものではありません。

(1) 呼吸運動は、横隔膜、肋間筋などの呼吸筋が収縮と弛緩(しかん)をすることにより行われる。
適切です。呼吸運動は、横隔膜や肋間筋などの呼吸筋の働きによって行われます。吸気では、横隔膜が収縮して下がり、外肋間筋の働きによって胸郭が広がります。これにより胸腔内の容積が増え、肺がふくらみ、空気が肺内へ入ります。呼気では、安静時には主にこれらの筋肉が弛緩し、胸郭や肺が元に戻る力によって空気が外へ出ます。呼吸は肺そのものが能動的に動いているというより、呼吸筋によって胸郭内の圧力が変化し、その結果として空気が出入りすると理解すると正誤判断がしやすくなります。
(2) 胸郭内容積が増し、その内圧が低くなるにつれ、鼻腔、気管などの気道を経て肺内へ流れ込む空気が吸気である。
適切です。吸気は、胸郭内容積が増えて胸腔内圧が低下することで起こります。空気は圧力の高いところから低いところへ流れるため、外気が鼻腔、咽頭、喉頭、気管、気管支などの気道を通って肺に入ります。つまり、吸気は単に空気を吸い込む動作というだけでなく、胸郭の拡大と内圧低下によって生じる現象です。試験では、胸郭内容積の増加、内圧の低下、肺内への空気流入という流れをセットで覚えておくと対応しやすいです。
(3) 肺胞内の空気と肺胞を取り巻く毛細血管中の血液との間で行われるガス交換を外呼吸という。
適切です。外呼吸とは、肺胞内の空気と肺胞周囲の毛細血管を流れる血液との間で行われるガス交換のことです。肺胞では、吸い込んだ空気中の酸素が血液中へ移動し、血液中の二酸化炭素が肺胞内へ移動します。この交換は、酸素や二酸化炭素の分圧差によって行われます。外呼吸に対して、血液と全身の組織細胞との間で行われるガス交換は内呼吸といいます。外呼吸は肺でのガス交換、内呼吸は組織でのガス交換と区別して覚えることが重要です。
(4) 呼吸数は、通常、1分間に16~20回で、成人の安静時の1回呼吸量は、約500mLである。
適切です。成人の安静時の呼吸数は、一般に1分間に16~20回程度とされ、1回の呼吸で出入りする空気の量である1回呼吸量は約500mLです。1回呼吸量は、深呼吸の最大量ではなく、安静時に普通に呼吸したときの量です。呼吸数や1回呼吸量は、労働生理で数値問題として問われやすい部分です。呼吸数16~20回、1回呼吸量約500mLという組合せを基本値として押さえておくとよいです。
(5) 呼吸のリズムをコントロールしているのは、間脳の視床下部である。
不適切です。呼吸のリズムを主にコントロールしているのは、延髄にある呼吸中枢です。延髄は生命維持に重要な自律的機能に関わる部位で、呼吸運動の基本的なリズムを調節しています。また、血液中の二酸化炭素濃度や水素イオン濃度の変化などを受けて、呼吸の深さや速さが調節されます。視床下部は、体温調節、自律神経系の調節、ホルモン分泌の調節、摂食や飲水などに関わる重要な部位ですが、呼吸リズムの基本中枢としては延髄を覚える必要があります。この選択肢は、脳の部位と働きの混同を狙った誤りです。
この問題で覚えるポイント
呼吸運動は、横隔膜や肋間筋などの呼吸筋の収縮と弛緩によって行われます。吸気では胸郭内容積が増え、胸腔内圧が低下し、空気が気道を通って肺内へ流入します。外呼吸は肺胞内の空気と肺胞周囲の毛細血管中の血液との間で行われるガス交換であり、内呼吸は血液と全身の組織細胞との間で行われるガス交換です。成人の安静時の呼吸数は通常1分間に16~20回、1回呼吸量は約500mLです。呼吸の基本的なリズムを調節する中枢は延髄にあります。視床下部は体温調節、自律神経、内分泌などに関係する部位であり、呼吸リズムの中枢として問われた場合は誤りと判断します。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、呼吸の仕組みに関する正しい知識の中に、脳の部位をすり替えた選択肢を混ぜている点です。横隔膜、肋間筋、胸郭内容積、外呼吸、呼吸数、1回呼吸量といった内容は基本知識として正しいため、最後の視床下部という言葉も何となく自律神経に関係しそうだと感じて正しいと判断してしまいやすくなります。しかし、試験では「自律神経に関係する部位」と「呼吸リズムを直接コントロールする中枢」を区別する必要があります。呼吸中枢は延髄、体温調節や内分泌調節は視床下部という対応関係を押さえると、同じような脳の部位を入れ替える問題にも対応できます。
