出典:第一種衛生管理者2023年(令和5年度)4月公表問題|労働生理第39問
問題
腎臓・泌尿器系に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 糸球体では、血液中の蛋白質以外の血漿成分がボウマン嚢(のう)に濾(こ)し出され、原尿が生成される。
(2) 尿細管では、原尿に含まれる大部分の水分、電解質、栄養分などが血液中に再吸収される。
(3) 尿の生成・排出により、体内の水分の量やナトリウムなどの電解質の濃度を調節するとともに、生命活動によって生じた不要な物質を排出する。
(4) 尿の約95%は水分で、約5%が固形物であるが、その成分は全身の健康状態をよく反映するので、尿検査は健康診断などで広く行われている。
(5) 血液中の尿素窒素(BUN)の値が低くなる場合は、腎臓の機能の低下が考えられる。
衛生管理者過去問|腎臓と泌尿器系の構造・尿生成・BUNの基礎知識を解説
腎臓と泌尿器系では、糸球体で原尿を作り、尿細管で必要な成分を再吸収し、不要物を尿として排出する流れを理解することが大切です。答えは(5)です。腎機能が低下すると尿素窒素などの老廃物を十分に排出できなくなるため、BUNは低くなるのではなく、一般に高くなります。

(1) 糸球体では、血液中の蛋白質以外の血漿成分がボウマン嚢(のう)に濾(こ)し出され、原尿が生成される。
適切です。糸球体は、毛細血管が集まったろ過装置のような部分です。ここで血液中の水分、電解質、ブドウ糖、アミノ酸、尿素などの小さな成分がボウマン嚢に濾し出され、原尿が作られます。蛋白質や血球は分子が大きいため、通常はほとんど濾過されません。尿検査で蛋白や血液が検出される場合は、腎臓や尿路の異常を疑う手がかりになります。
(2) 尿細管では、原尿に含まれる大部分の水分、電解質、栄養分などが血液中に再吸収される。
適切です。原尿として濾し出された成分のうち、身体に必要な水分、ナトリウムなどの電解質、ブドウ糖、アミノ酸などは尿細管で再吸収され、血液中に戻されます。原尿がそのまま尿として排出されるわけではありません。腎臓は、不要なものを捨てるだけでなく、必要なものを体内に戻すことで体液のバランスを保っています。
(3) 尿の生成・排出により、体内の水分の量やナトリウムなどの電解質の濃度を調節するとともに、生命活動によって生じた不要な物質を排出する。
適切です。腎臓は、尿を作ることで体内の水分量や電解質濃度を調節しています。ナトリウム、カリウムなどの濃度は、神経や筋肉の働きにも関係するため、適切に保たれる必要があります。また、蛋白質の代謝によって生じる尿素などの老廃物を尿中に排出することも腎臓の重要な働きです。
(4) 尿の約95%は水分で、約5%が固形物であるが、その成分は全身の健康状態をよく反映するので、尿検査は健康診断などで広く行われている。
適切です。尿の大部分は水分であり、残りに尿素、尿酸、クレアチニン、電解質などが含まれます。尿は腎臓で血液から作られるため、腎臓の状態だけでなく、糖代謝、感染、脱水、肝機能など全身の健康状態を反映することがあります。そのため、健康診断では尿蛋白、尿糖、尿潜血などの検査が広く行われています。
(5) 血液中の尿素窒素(BUN)の値が低くなる場合は、腎臓の機能の低下が考えられる。
不適切です。BUNは、蛋白質の代謝で生じた尿素に含まれる窒素を血液中で測定する検査値です。腎臓の機能が低下すると、尿素を尿として十分に排出できなくなるため、血液中にたまりやすくなります。そのため、腎機能低下で考えられるのはBUNの低下ではなく、一般にBUNの上昇です。BUNが低くなる場合は、肝機能低下、低蛋白食、栄養状態など別の要因が関係することがあります。
この問題で覚えるポイント
腎臓では、糸球体で血液を濾過して原尿を作り、尿細管で必要な水分、電解質、ブドウ糖、アミノ酸などを再吸収し、不要な成分を尿として排出します。糸球体では蛋白質や血球のような大きな成分は通常ほとんど濾過されません。尿は約95%が水分で、残りに尿素、尿酸、クレアチニン、電解質などが含まれます。腎臓の働きは、老廃物の排出だけでなく、体内の水分量、ナトリウムなどの電解質濃度、酸塩基平衡を調節することにもあります。BUNは尿素窒素のことで、腎機能が低下すると尿素の排出が悪くなり、血液中で高くなりやすい点を覚えてください。腎機能低下と結びつく代表的な変化は、BUN低下ではなくBUN上昇です。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、BUNという検査値を見たときに、腎臓が悪いなら数値が低くなるのではないかと考えてしまう点です。腎臓は老廃物を排出する臓器なので、機能が低下すると老廃物が出ていかず、血液中にたまります。その結果、BUNは低下ではなく上昇しやすくなります。また、原尿の生成、再吸収、尿の成分に関する文章は基本事項として正しいため、最後の検査値の方向性だけを正確に判断する必要があります。検査値の問題では、数値名だけで判断せず、その物質が体内にたまるのか、排出されるのかを考えると正誤を見抜きやすくなります。
