出典:第一種衛生管理者2025年(令和7年度)10月公表問題|労働生理第38問
問題
蛋(たん)白質並びにその分解、吸収及び代謝に関する次の記述のうち、誤っているものはどれか。
(1) 蛋白質は、約20種類のアミノ酸が結合してできており、内臓、筋肉、皮膚など人体の臓器等を構成する主成分である。
(2) 蛋白質は、膵(すい)臓から分泌される消化酵素である膵リパーゼなどによりアミノ酸に分解され、小腸から吸収される。
(3) 血液循環に入ったアミノ酸は、体内の各組織において蛋白質に再合成される。
(4) 肝臓では、アミノ酸から血漿(しょう)蛋白質が合成される。
(5) 飢餓時には、肝臓などでアミノ酸などからブドウ糖を生成する糖新生が行われる。
第1種衛生管理者|蛋白質の消化吸収とアミノ酸代謝・糖新生の基礎を解説
蛋白質は、アミノ酸が多数結合してできた栄養素で、体の組織をつくる重要な材料です。答えは(2)です。蛋白質を分解する主な消化酵素はペプシンやトリプシンなどの蛋白質分解酵素であり、膵リパーゼは脂肪を分解する酵素です。蛋白質の消化では、「何が分解されるか」と「どの酵素が働くか」を正確に区別することが大切です。
(1) 蛋白質は、約20種類のアミノ酸が結合してできており、内臓、筋肉、皮膚など人体の臓器等を構成する主成分である。
適切です。蛋白質は、約20種類のアミノ酸が多数結合してできています。体内では、筋肉、皮膚、内臓、血液成分、酵素、ホルモンなど、さまざまな構造や機能に関わります。炭水化物や脂肪が主にエネルギー源として使われるのに対し、蛋白質は体を構成する材料として特に重要です。衛生管理者試験では、蛋白質は人体の臓器や組織を構成する主成分であると押さえておきましょう。
(2) 蛋白質は、膵(すい)臓から分泌される消化酵素である膵リパーゼなどによりアミノ酸に分解され、小腸から吸収される。
不適切です。蛋白質は消化の過程でアミノ酸まで分解され、小腸から吸収されますが、膵リパーゼによって分解されるわけではありません。リパーゼは脂肪を分解する酵素です。蛋白質の消化には、胃液中のペプシン、膵液中のトリプシンなどの蛋白質分解酵素が関係します。選択肢は、小腸から吸収される点は正しいものの、消化酵素として膵リパーゼを挙げている点が誤りです。
(3) 血液循環に入ったアミノ酸は、体内の各組織において蛋白質に再合成される。
適切です。小腸から吸収されたアミノ酸は、血液によって体内の各組織へ運ばれます。そして、細胞内でその組織に必要な蛋白質に再合成されます。たとえば、筋肉では筋蛋白質、皮膚では皮膚を構成する蛋白質、各種細胞では酵素や構造蛋白質などが合成されます。食物中の蛋白質がそのまま体の蛋白質になるのではなく、いったんアミノ酸に分解されてから、体内で必要な形に作り替えられる点が重要です。
(4) 肝臓では、アミノ酸から血漿(しょう)蛋白質が合成される。
適切です。肝臓では、アミノ酸を材料としてアルブミンなどの血漿蛋白質が合成されます。血漿蛋白質は、血液中に存在し、血液の浸透圧の維持、物質の運搬、血液凝固などに関係します。肝臓は、糖質、脂質、蛋白質の代謝に深く関わる臓器であり、蛋白質代謝でも重要な役割を担っています。肝機能が低下すると、血漿蛋白質の合成にも影響が出ることがあります。
(5) 飢餓時には、肝臓などでアミノ酸などからブドウ糖を生成する糖新生が行われる。
適切です。飢餓時や長時間食事をとれない状態では、血糖を維持するために、肝臓などで糖新生が行われます。糖新生とは、アミノ酸、乳酸、グリセロールなど、糖質以外の物質からブドウ糖をつくる働きです。脳や赤血球などはブドウ糖を重要なエネルギー源としているため、体は血糖を一定に保とうとします。蛋白質は本来、体の構成材料ですが、エネルギー不足時にはアミノ酸が糖新生の材料として使われることがあります。
この問題で覚えるポイント
蛋白質は、約20種類のアミノ酸が結合してできた栄養素で、筋肉、皮膚、内臓、血液成分、酵素など人体の構成や機能に深く関わります。食物中の蛋白質は、そのまま吸収されるのではなく、消化酵素によってアミノ酸まで分解され、小腸から吸収されます。蛋白質の消化に関係する代表的な酵素には、胃液中のペプシンや膵液中のトリプシンなどがあります。膵リパーゼは脂肪を分解する酵素であり、蛋白質分解酵素ではありません。吸収されたアミノ酸は血液で各組織に運ばれ、必要な蛋白質に再合成されます。肝臓ではアミノ酸から血漿蛋白質が合成されます。飢餓時には、肝臓などでアミノ酸などからブドウ糖をつくる糖新生が行われ、血糖の維持に役立ちます。消化酵素の問題では、リパーゼは脂肪、アミラーゼはデンプン、ペプシンやトリプシンは蛋白質という対応を押さえると正誤判断がしやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、「膵臓から分泌される消化酵素」という部分だけを見ると正しそうに感じる点です。膵リパーゼはたしかに膵臓から分泌される消化酵素ですが、分解する対象は蛋白質ではなく脂肪です。問題文の中に一部正しい情報を混ぜ、その後の対象物を入れ替える形は、労働生理でよく出る誤文パターンです。消化酵素は名称だけで覚えるのではなく、「何を分解する酵素か」までセットで覚える必要があります。また、蛋白質は食べた形のまま体の蛋白質になるのではなく、いったんアミノ酸に分解され、吸収後に各組織で再合成されます。栄養素の消化吸収では、分解、吸収、再合成、代謝の流れを順番で理解しておくと、似た問題にも対応しやすくなります。
