問題
一般環境、労働環境に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1)一般環境の大気、水質、騒音、土壌等に対して、環境基準が定められている。
(2) 学校における環境衛生の基準は、学校保健安全法で定められている。
(3) 許容濃度における曝露濃度とは、呼吸用保護具を装着している状態で、労働者が作業中に吸入するであろう空気中の当該物質の濃度である。
(4) 最大許容濃度とは、作業中のどの時間をとっても曝露濃度がこの数値以下であれば、ほとんど全ての労働者に健康上の悪い影響がみられないと判断される濃度である。
(5) 労働環境においては、曝露時間が短い、あるいは労働強度が弱い場合でも、許容濃度を超える曝露は避けるべきである。
ビル管過去問|一般環境、労働環境に関する基準を解説
この問題は、一般環境と労働環境における基準の違いを正しく理解しているかを問う問題です。一般環境では、大気、水質、騒音、土壌などについて人の健康の保護や生活環境の保全を目的として環境基準が定められています。一方、労働環境では、作業者が有害物質にどの程度さらされるかという「曝露」の考え方が重要であり、許容濃度や最大許容濃度の意味を正確に理解する必要があります。特に本問では、許容濃度における曝露濃度が「呼吸用保護具を装着した状態」での濃度であるとする記述が誤りです。許容濃度は、原則として呼吸用保護具を使用しない状態で、作業環境中の空気に含まれる有害物質濃度を基準として考えるものです。したがって、不適当な選択肢は(3)です。
(1) 一般環境の大気、水質、騒音、土壌等に対して、環境基準が定められている。
適切です。環境基準は、環境基本法に基づき、人の健康を保護し、生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準として定められています。対象には大気汚染、水質汚濁、騒音、土壌汚染などが含まれます。これらは工場や事業場だけでなく、地域社会全体の環境の良好な状態を維持するための目安です。したがって、一般環境に対して各種の環境基準が定められているという記述は正しいです。
(2) 学校における環境衛生の基準は、学校保健安全法で定められている
適切です。学校における環境衛生については、学校保健安全法に基づいて学校環境衛生基準が整備されています。具体的には、教室の換気、採光、照明、保温、防湿、飲料水の管理、便所の衛生管理など、児童生徒や教職員が健康に学校生活を送るための環境条件が定められています。学校は一般の事務所や工場とは異なり、成長過程にある子どもが長時間生活する場であるため、特別に衛生基準が求められています。このため、この記述は正しいです。
(3) 許容濃度における曝露濃度とは、呼吸用保護具を装着している状態で、労働者が作業中に吸入するであろう空気中の当該物質の濃度である。
不適切です。許容濃度とは、労働者が有害物質に繰り返し曝露された場合でも、ほとんどすべての労働者に健康上の悪影響がみられないと考えられる空気中濃度の目安です。この考え方は、通常、呼吸用保護具を使用しない状態での作業環境中の濃度を前提にしています。つまり、作業場の空気そのものの濃度を問題にしているのであって、マスクなどの保護具を装着した後に実際に吸い込む濃度を基準としているわけではありません。呼吸用保護具は、作業環境の管理だけでは十分にリスクを下げられない場合に補助的に使用されるものであり、許容濃度の定義そのものには含まれません。そのため、この記述は誤りであり、本問の最も不適当な選択肢です。
(4)最大許容濃度とは、作業中のどの時間をとっても曝露濃度がこの数値以下であれば、ほとんど全ての労働者に健康上の悪い影響がみられないと判断される濃度である。
適切です。最大許容濃度とは、急性毒性や強い刺激性をもつ物質について、短時間の曝露であってもこの濃度を超えると健康障害が生じるおそれがあるため、短時間でも超えてはならない濃度をいいます。平均濃度ではなく、作業中の短い時間であってもこの値を上回らないよう管理する必要があります。したがって、最大許容濃度は「短時間曝露に対する上限値」として理解するのが適切です。
(5) 労働環境においては、曝露時間が短い、あるいは労働強度が弱い場合でも、許容濃度を超える曝露は避けるべきである。
適切です。許容濃度は、一定の条件のもとで健康影響が生じにくいと考えられる目安ですが、安全と危険を明確に二分する絶対的な境界ではありません。また、個人差や健康状態の違いもあるため、たとえ曝露時間が短い場合や労働強度が軽い場合であっても、許容濃度を超える曝露は望ましくありません。さらに、有害物質の中には短時間の高濃度曝露で強い影響を及ぼすものもあります。そのため、許容濃度を超えないよう管理することが基本であり、この記述は正しいです。
この問題で覚えるポイント
一般環境では、大気、水質、騒音、土壌などに対して環境基準が定められています。
学校の環境衛生基準は、学校保健安全法に基づいて定められています。
許容濃度は、原則として呼吸用保護具を使用しない作業環境中の有害物質濃度を基準に考えます。
最大許容濃度は、短時間でも超えてはならない濃度の上限値として理解することが重要です。
許容濃度は安全を保証する絶対値ではないため、超過曝露は避けるべきです。
本問の正解は、許容濃度の定義を誤っている(3)です。
ひっかけポイント
許容濃度と呼吸用保護具の関係を混同しやすいです。保護具を着けた後の吸入濃度ではなく、作業環境中の濃度が基準です。
許容濃度と最大許容濃度は似ていますが、前者は通常の反復曝露、後者は瞬間的な高濃度曝露まで問題にする点が違います。
学校環境の基準は環境基本法ではなく、学校保健安全法に基づく点を取り違えやすいです。
曝露時間が短ければ許容濃度を超えてもよいと誤解しやすいですが、そのようには考えません。
「ほとんど全ての労働者に影響がない」という表現は許容濃度の説明でよく使われますが、絶対安全を意味するものではない点に注意が必要です。
