出典:建築物衛生管理技術者試験令和4年度(2022年)|清掃第151問
問題
繊維床材の特徴と維持管理に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。
(1) 事務所建築物の繊維床材のしみは、約60%が親水性である。
(2) ウール素材の含水率は約15%であるので、洗浄後は乾きにくい。
(3) スチーム洗浄機は、エクストラクタより、洗浄後、カーペットに残留する水分量が多い。
(4) 繊維床材は、パイルに空隙があることから土砂・ほこりが堆積しやすい。
(5) ナイロンに付着した親水性の汚れは、ポリエステルより取りにくい。
ビル管過去問|繊維床材の特徴と維持管理 カーペット洗浄・しみ汚れ・乾燥性を解説
この問題は、繊維床材の材質ごとの性質、汚れの種類、洗浄方法ごとの特徴を正しく理解しているかを問う問題です。繊維床材は見た目の印象だけでなく、保温性や歩行性に優れる一方で、汚れを抱え込みやすく、洗浄後の乾燥管理も非常に重要です。正答は(3)で、スチーム洗浄機は一般にエクストラクタより使用水量が少なく、洗浄後にカーペットへ残る水分量も少ないため、設問文は逆になっていて不適当です。他の選択肢は、繊維素材や汚れの性質、繊維床材の構造上の特徴を踏まえると適切です。
(1) 事務所建築物の繊維床材のしみは、約60%が親水性である。
適切です。事務所建築物のカーペットに発生するしみ汚れには、飲料、雨水、泥汚れ、食品由来の汚れなど、水になじみやすい親水性のものが多く含まれます。そのため、現場ではまず親水性汚れを意識した洗浄やしみ抜きが基本になります。親水性の汚れは水系の洗剤で比較的対応しやすい一方で、時間が経つと繊維内部に入り込み、落ちにくくなることがあります。この記述は、実務上の汚れの傾向として妥当です。
(2) ウール素材の含水率は約15%であるので、洗浄後は乾きにくい。
適切です。ウールは吸湿性に優れた天然繊維であり、比較的多くの水分を保持する性質があります。そのため、洗浄後はナイロンやポリエステルなどの合成繊維に比べて乾燥しにくくなります。乾燥が不十分だと、再汚染、臭気、かび、寸法変化などの原因にもなるため、ウール系カーペットでは送風や換気を十分に行うことが大切です。この記述は、ウールの材質的特徴を正しく捉えています。
(3) スチーム洗浄機は、エクストラクタより、洗浄後、カーペットに残留する水分量が多い。
不適切です。スチーム洗浄機は、高温の蒸気を利用して汚れを浮かせる方式であり、一般に使用する水の量は比較的少なめです。一方、エクストラクタは洗浄液を繊維内に噴射し、それを吸引して回収する方式で、繊維内部まで洗える反面、洗浄後に一定の水分が残りやすくなります。つまり、通常はエクストラクタのほうが残留水分量が多くなりやすく、設問の記述はこの関係を逆にしています。洗浄後の乾燥時間や再使用までの管理を考えるうえでも、この違いは重要です。
(4) 繊維床材は、パイルに空隙があることから土砂・ほこりが堆積しやすい。
適切です。繊維床材は、表面にパイルという繊維の立ち上がりがあり、その内部や根元に土砂やほこりが入り込みやすい構造になっています。このため、見た目ではきれいに見えても、内部には汚れが蓄積していることがあります。繊維床材の維持管理では、日常の真空掃除によって乾いた土砂や粉じんをしっかり除去することが非常に重要です。汚れを内部にため込むと、摩耗の進行や衛生状態の悪化にもつながります。
(5) ナイロンに付着した親水性の汚れは、ポリエステルより取りにくい。
適切です。ナイロンは比較的吸水性があり、親水性の汚れが繊維になじみやすい性質があります。そのため、同じ親水性汚れでも、吸水性の低いポリエステルに比べると、ナイロンのほうが繊維内部に汚れを抱え込みやすく、除去しにくくなることがあります。逆に、ポリエステルは疎水性が強いため、水系の汚れは比較的繊維内部に入り込みにくい一方で、油性汚れは付着しやすい傾向があります。この記述は、繊維素材ごとの汚れやすさの違いを理解しているかを問うものです。
この問題で覚えるポイント
繊維床材の維持管理では、まず繊維素材の性質を押さえることが重要です。ウールは吸湿性が高く、洗浄後に乾きにくいため、乾燥管理が特に重要です。ナイロンは親水性汚れを抱え込みやすく、ポリエステルは親水性汚れには比較的強い一方で、油性汚れを引きつけやすいという違いがあります。このように、素材ごとに汚れの付き方と落ちやすさが異なります。 また、繊維床材はパイルの空隙に土砂やほこりが入り込みやすいため、湿式洗浄の前に真空掃除で乾いた汚れを除去することが基本です。土砂を取り切らないまま湿式洗浄すると、かえって汚れが繊維の奥に入り込んだり、泥状になって除去しにくくなったりします。したがって、日常清掃と定期清掃の役割を分けて理解することが大切です。 洗浄方法の比較も頻出です。エクストラクタは洗浄液を噴射して吸引回収するため、深部洗浄に向きますが、残留水分が多くなりやすい特徴があります。これに対し、スチーム洗浄は比較的少ない水分で処理でき、乾燥性に優れやすいという違いがあります。試験では、洗浄力、残留水分、乾燥時間の関係を入れ替えて問われやすいため、方式ごとの特徴を整理して覚えることが重要です。 さらに、しみ汚れには親水性と疎水性があり、洗剤選定や処理方法が異なります。親水性汚れには飲料や泥汚れなどがあり、水系処理が基本です。疎水性汚れには油脂やタール類などがあり、溶剤系や専用処理が必要になることがあります。素材の性質と汚れの性質を組み合わせて判断できるようになると、同テーマの問題に対応しやすくなります。
ひっかけポイント
この問題で引っかかりやすいのは、洗浄方法の名前から受ける印象で判断してしまうことです。スチーム洗浄は「蒸気を使うから水分が多そうだ」と感じやすいのですが、実際には使用水量が比較的少なく、エクストラクタのほうが残留水分は多くなりやすいです。名称のイメージだけで判断すると誤答しやすくなります。 また、素材と汚れの相性も混同しやすいポイントです。親水性汚れは水で落ちやすいから、どの繊維でも同じように落ちると考えてしまうと危険です。実際には、ナイロンのように水になじみやすい繊維では、親水性汚れが内部に入り込みやすく、ポリエステルとは挙動が異なります。汚れの種類だけでなく、繊維側の性質まで合わせて考える必要があります。 さらに、「乾きにくい」という日常感覚も誤答の原因になります。厚みがあるから乾きにくい、見た目が軽いから乾きやすいという印象ではなく、吸湿性や含水率といった素材の物性で考えることが試験では重要です。ウールは天然繊維で水分を保持しやすいため、乾燥に時間がかかるという知識を数字とともに押さえておくと、迷いにくくなります。
