【ビル管過去問】令和4年度 問題87|音・振動環境の保守管理 騒音測定・遮音性能・防振対策を解説

出典:建築物衛生管理技術者試験令和4年度(2022年)|空気環境の調整第87問

問題

音・振動環境の保守管理に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

(1) 複数の材料を貼り合わせた内装の振動は、部位による振動モードの影響により、測定場所間で異なることがある。

(2) 対象となる騒音・振動を測定するには、暗騒音・暗振動が大きい時間帯に実施することが望ましい。

(3) 経年変化による遮音性能の低下を把握するために、建設時に壁・床・建具等の遮音性能を測定しておくことが望ましい。

(4) 機械室に隣接する居室の床スラブ厚が薄かったため, 床振動による固体伝搬音が伝わらないよう、空調機に防振支持を施した。

(5) 高い遮音性能の扉であっても、日常的な開閉により、遮音性能が低下することがある。

ビル管過去問|音・振動環境の保守管理 騒音測定・遮音性能・防振対策を解説

この問題は、音・振動環境の保守管理における測定条件、遮音性能の把握、防振対策の考え方について問う問題です。実務では、騒音や振動は発生源だけでなく、建物の構造、部材の劣化、測定条件によっても結果が変わります。そのため、単に用語を知っているだけではなく、どのような条件で測るべきか、どこに対策を施すべきかを理解しておくことが大切です。正しい選択肢は、測定位置で振動が異なることを述べたもの、建設時の性能測定の重要性を述べたもの、防振支持の有効性を述べたもの、日常使用による扉の遮音性能低下を述べたものです。最も不適当なのは、暗騒音・暗振動が大きい時間帯に測定するのが望ましいとした記述です。対象音や対象振動を正しく評価するには、周囲の余計な影響が小さい条件で測る必要があります。

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(1) 複数の材料を貼り合わせた内装の振動は、部位による振動モードの影響により、測定場所間で異なることがある。

適切です。複数の材料を組み合わせた内装材や壁、床は、一様な一枚板のようには振動せず、場所ごとに異なる揺れ方を示すことがあります。これは振動モードの違いによるもので、ある場所では大きく振動し、別の場所では小さく振動することがあります。そのため、振動測定では一点だけで判断せず、対象部位の性質を踏まえて測定位置を考える必要があります。実務でも、同じ壁面であっても位置によって測定値が変わることは珍しくありません。

(2) 対象となる騒音・振動を測定するには、暗騒音・暗振動が大きい時間帯に実施することが望ましい。

不適切です。暗騒音や暗振動とは、対象としている騒音や振動以外の背景的な音や振動のことです。これらが大きい時間帯に測定すると、本来評価したい対象の値が埋もれてしまい、正確な測定が難しくなります。たとえば、設備機器の騒音を測りたいのに、周囲の交通騒音や他設備の運転音が大きいと、どの音が原因なのか判別しにくくなります。したがって、対象を正確に把握するには、暗騒音・暗振動ができるだけ小さい時間帯や条件を選んで測定することが望ましいです。ここがこの問題の誤りの核心です。

(3) 経年変化による遮音性能の低下を把握するために、建設時に壁・床・建具等の遮音性能を測定しておくことが望ましい。

適切です。遮音性能は、建物完成直後の状態を基準としておくことで、その後の劣化や不具合を比較しやすくなります。たとえば、扉のすき間の増加、建具のゆがみ、気密材の劣化などが起こると、遮音性能が低下することがあります。建設時に初期性能を把握しておけば、将来の測定結果と比較して、どの程度性能が変化したかを客観的に判断できます。保守管理では、基準となる初期データを持っていることが非常に重要です。

(4) 機械室に隣接する居室の床スラブ厚が薄かったため, 床振動による固体伝搬音が伝わらないよう、空調機に防振支持を施した。

適切です。固体伝搬音は、機械の振動が床や壁などの構造体に伝わり、別の場所で音として感じられる現象です。空調機のような回転機器は振動源になりやすく、その振動が床スラブに伝わると、隣接室で騒音問題になることがあります。防振支持は、機械と建物構造体の間で振動を減衰させる対策であり、固体伝搬音の抑制に有効です。床スラブが薄いと振動の影響を受けやすいため、このような対策は合理的です。

(5) 高い遮音性能の扉であっても、日常的な開閉により、遮音性能が低下することがある。

適切です。遮音性能の高い扉は、扉本体の性能だけでなく、枠との密着性、気密材、ラッチ機構などが適切に機能して初めて性能を発揮します。しかし、日常的な開閉を繰り返すことで、建付けのずれや部品の摩耗、パッキンの劣化が生じることがあります。すると、わずかなすき間が生じ、それだけで遮音性能が大きく低下することがあります。音は小さなすき間からも漏れやすいため、建具の維持管理ではこうした経年変化に注意が必要です。

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この問題で覚えるポイント

音・振動環境の保守管理では、まず測定条件の適否が重要です。対象音や対象振動を正確に把握したい場合は、背景となる暗騒音や暗振動ができるだけ小さい条件で測定するのが原則です。背景の影響が大きいと、本来の対象を正しく評価できません。 振動は、部材全体が一様に揺れるとは限らず、振動モードによって場所ごとに大きさが変わります。特に複合材料や貼り合わせ構造では、その傾向が強くなります。そのため、測定では一点の値を絶対視せず、部位や位置による差を意識することが大切です。 遮音性能は完成時の性能を基準として記録しておくと、経年劣化や不具合の発見に役立ちます。壁、床、建具などは、使用年数の経過とともに性能が低下することがあります。とくに建具はすき間や気密材の劣化の影響を受けやすいため注意が必要です。 固体伝搬音は、空気中を伝わる音ではなく、機械の振動が床や壁などの構造体を通じて伝わることで発生します。対策としては、発生源側で振動を抑えることが基本であり、防振支持や防振ゴム、防振ばねなどが重要です。遮音だけでは防ぎにくく、振動の伝達経路そのものを断つ発想が求められます。

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ひっかけポイント

この問題のひっかけは、測定という言葉から、何となく「騒音や振動が大きい時間帯のほうが測りやすい」と思わせる点にあります。しかし、ここで大切なのは対象そのものを正しく測ることであり、周囲の余計な音や振動が大きいほどよいわけではありません。大きいほうが測定しやすいという日常感覚に引っ張られると誤答しやすいです。 また、防振支持と遮音対策を混同しやすい点も注意が必要です。音の問題を見ると、すぐに遮音材や壁の性能に意識が向きがちですが、固体伝搬音は振動が構造体に入る前に抑えることが基本です。空気伝搬音と固体伝搬音の違いを区別できるかどうかが、正誤判断の分かれ目になります。 さらに、遮音性能は完成時のまま維持されると思い込みやすいですが、建具や扉は可動部であるため劣化しやすいです。高性能という言葉に引っ張られて、「高性能なら低下しない」と考えるのは典型的な思考の罠です。試験では、高性能であることと、経年変化で性能が落ちないことは別問題だと整理しておくことが大切です。

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