出典:建築物衛生管理技術者試験令和4年度(2022年)|建築物の環境衛生第43問
問題
感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律に基づく感染症の類型のうち、一類、二類、三類全てに実施される措置として、最も不適当なものは次のうちどれか。
(1) 積極的疫学調査
(2) 死体の移動制限
(3) 無症状病原体保有者への入院勧告
(4) 汚染された場所の消毒
(5) 就業制限
ビル管過去問|感染症法 一類・二類・三類感染症の措置を解説
この問題は、感染症法における一類感染症、二類感染症、三類感染症に対して、共通して行われる措置と、類型ごとに異なる措置を見分けられるかを問う問題です。正答は(3)の無症状病原体保有者への入院勧告です。入院勧告は重い措置であり、主に一類感染症や二類感染症で問題になりますが、三類感染症では基本的に就業制限などで対応します。したがって、一類、二類、三類の全てに共通して行われる措置ではありません。感染症法の問題では、消毒、就業制限、積極的疫学調査のような広く行われる措置と、入院や死体移動制限のように対象が限られる措置を区別して覚えることが大切です。
(1) 積極的疫学調査
適切です。積極的疫学調査とは、感染経路や感染源、接触者の状況などを行政が調べ、感染拡大を防ぐために行う調査です。感染症が発生したときに、どこからうつったのか、誰に広がるおそれがあるのかを把握することは極めて重要です。そのため、一類、二類、三類のいずれの感染症でも必要に応じて実施される基本的な措置です。感染症対策では、治療だけでなく、流行の広がりを止めるための調査が非常に重要であり、この選択肢は正しい内容です。
(2) 死体の移動制限
適切です。死体の移動制限は、感染力の強い病原体によって死亡した場合に、死体からの感染拡大を防ぐ目的で行われる措置です。一類、二類、三類感染症では、病原体の性質や感染の危険性を踏まえて、必要に応じてこうした措置がとられます。受験上は少し重い措置に見えるため、三類まで含まれるのか迷いやすいですが、法令上は対象となり得る措置として整理されます。日常感覚では見落としやすい部分ですが、感染症法では生体だけでなく死体の取扱いも感染拡大防止の対象になる点を押さえておくことが大切です。
(3) 無症状病原体保有者への入院勧告
不適切です。これが正答です。無症状病原体保有者とは、症状は出ていなくても病原体を保有し、他人に感染させる可能性がある人を指します。このような人に対する入院勧告は、強い公的措置であり、主として一類感染症や二類感染症のように重篤性や感染拡大の危険性が高い場合に問題となります。一方、三類感染症では、主な感染経路が飲食物の取扱いや業務を通じた経口感染であることが多く、対応としては就業制限が中心で、無症状病原体保有者に一律に入院勧告を行うわけではありません。したがって、一類、二類、三類の全てに共通する措置とはいえません。
(4) 汚染された場所の消毒
適切です。感染症が発生した場所や病原体によって汚染されたおそれのある場所を消毒することは、感染の拡大防止のための基本措置です。病原体は人から人へ直接広がるだけでなく、環境表面や設備を介して広がることもあります。そのため、一類、二類、三類のいずれでも、必要に応じて消毒が行われます。建築物衛生の学習でも、感染症対策は人だけでなく環境管理が重要である点が大切です。この選択肢は、感染症法上の実務的な対応として妥当です。
(5) 就業制限
適切です。就業制限は、感染症にかかった人や病原体を保有している人が、一定の仕事に従事することで他人に感染を広げるおそれがある場合に、その業務を制限する措置です。特に食品取扱いなどを通じて感染を拡大させる可能性がある場合に重要です。一類、二類、三類感染症はいずれも、公衆衛生上の観点から就業制限の対象となり得ます。受験では、入院勧告と就業制限を混同しやすいですが、就業制限は比較的広く用いられる措置であるのに対し、入院勧告はより限定的で強い措置だと整理すると理解しやすいです。
この問題で覚えるポイント
感染症法では、感染症を危険性や感染拡大の可能性に応じて類型化し、それぞれに応じた行政措置を定めています。一類感染症は極めて危険性が高く、二類感染症はそれに準ずるもの、三類感染症は主として就業を通じて集団感染を起こしやすいものとして整理すると覚えやすいです。試験では、全類型に広く共通する措置と、限られた類型だけに行われる措置の区別が重要です。積極的疫学調査、汚染場所の消毒、就業制限は比較的広く共通して行われる措置です。一方で、入院勧告はより強い措置であり、全類型共通とは限りません。特に三類感染症では、感染拡大防止の中心は就業制限であり、無症状病原体保有者への入院勧告までを当然に含むと考えないことが重要です。また、感染症対策は患者本人だけでなく、接触者、環境、業務、死体の取扱いまで含めた広い公衆衛生管理だという視点を持つと、選択肢の整理がしやすくなります。
ひっかけポイント
この問題のひっかけは、どの措置も感染拡大防止に見えるため、全て共通措置のように感じてしまう点にあります。特に無症状病原体保有者という表現が入ると、症状がなくても感染させるなら入院させるべきだと日常感覚で考えてしまいやすいです。しかし、法令では措置の重さに差があり、入院勧告はかなり強い措置なので、全類型に一律で広く適用されるわけではありません。また、三類感染症は就業制限との結びつきが強いので、ここを思い出せるかどうかが得点の分かれ目です。感染症法の問題では、感染を防ぐために必要そうかどうかではなく、法的にどの類型にどの措置が認められているかで判断する習慣をつけることが大切です。
