【ビル管過去問】令和4年度 問題41|生物濃縮 有害物質・有機水銀による健康影響を解説

出典:建築物衛生管理技術者試験令和4年度(2022年)|建築物の環境衛生第41問

問題

自然界に排出されると、生物濃縮によりヒトの健康に影響を及ぼす物質は次のうちどれか。

(1) 四塩化炭素

(2) シアン化合物

(3) 鉛

(4) 有機水銀

(5) 六価クロム

ビル管過去問|生物濃縮 有害物質・有機水銀による健康影響を解説

この問題は、生物濃縮を起こしやすい有害物質と、その結果として生じる健康影響について問う問題です。正しい選択肢は有機水銀です。生物濃縮とは、環境中にごく低濃度で存在する物質が、食物連鎖を通じて生物の体内に次第に高濃度で蓄積していく現象です。特に有機水銀は水中の生物から魚類へ、さらにそれを食べるヒトへと濃縮されやすく、重大な健康被害を引き起こすことで知られています。他の物質も有害ではありますが、この問題で問われている「生物濃縮によりヒトの健康に影響を及ぼす物質」として最も代表的なのは有機水銀です。

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(1) 四塩化炭素

不適切です。四塩化炭素は有機塩素系の化学物質で、主に肝臓などに障害を与える有害物質として知られています。しかし、この物質は生物濃縮の代表例として扱われるものではありません。問題では、自然界に排出された後に食物連鎖を通して体内濃度が高まり、ヒトに影響を及ぼす性質が問われています。その観点では四塩化炭素は該当しません。有害性があることと、生物濃縮を起こしやすいことは別であると区別して覚えることが大切です。

(2) シアン化合物

不適切です。シアン化合物は急性毒性が非常に強く、少量でも生命に危険を及ぼすことがある物質です。ただし、シアン化合物は体内に長く蓄積して食物連鎖で濃縮されるタイプの物質ではありません。生物濃縮は、分解されにくく、生物の体外へ排出されにくい物質で起こりやすい現象です。シアン化合物は危険な物質ではありますが、生物濃縮の代表例として理解するのは適切ではありません。

(3) 鉛

不適切です。鉛は重金属であり、慢性的な曝露によって神経障害や造血障害などを引き起こす有害物質です。環境汚染物質として重要ですが、この問題で問われる生物濃縮の典型例とはいえません。鉛は体内に蓄積しうる物質ですが、水俣病の原因として知られるような、食物連鎖によって濃縮される代表的な物質としては有機水銀のほうが適切です。試験では、単に有害な重金属かどうかではなく、生物濃縮との結び付きが強いかどうかを見分ける必要があります。

(4) 有機水銀

適切です。有機水銀は自然界、とくに水環境中で生物に取り込まれやすく、食物連鎖を通じて高次の生物ほど高濃度に蓄積しやすい物質です。そのため、小さな生物から魚類、さらに魚を食べるヒトへと濃縮が進み、健康被害を引き起こします。代表的な例が水俣病であり、中枢神経障害、感覚障害、運動失調、視野狭窄などが生じます。この問題では「生物濃縮」という言葉から有機水銀を結び付けられるかが重要です。環境衛生分野では非常に重要な基本知識です。

(5) 六価クロム

不適切です。六価クロムは強い毒性をもつ有害物質であり、発がん性や皮膚・粘膜への障害が問題となります。しかし、生物濃縮によりヒトの健康へ大きな影響を及ぼす代表例としては通常扱われません。この選択肢は、「有害物質である」ことと「生物濃縮しやすい」ことを混同させるためのものです。六価クロムの危険性は重要ですが、この問題の論点とは少し異なります。

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この問題で覚えるポイント

生物濃縮とは、環境中の化学物質が食物連鎖を通じて高次の生物ほど高濃度に蓄積していく現象です。試験では、単なる有害物質ではなく、「分解されにくい」「体外へ排出されにくい」「脂溶性がある」など、生物濃縮を起こしやすい性質をもつ物質が問われやすいです。代表例として必ず押さえたいのが有機水銀で、水俣病の原因物質として重要です。無機水銀そのものではなく、有機化された水銀が生物に取り込まれやすく、魚介類を通じてヒトに健康被害を及ぼします。健康影響としては中枢神経系への障害が中心で、感覚異常、運動失調、言語障害、視野狭窄などが典型です。あわせて、公害病との関連として、水俣病は有機水銀、イタイイタイ病はカドミウムという組合せも整理しておくと、類題への対応力が高まります。

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ひっかけポイント

この問題では、「有害物質であれば生物濃縮もしそうだ」と考えてしまう思考の罠が仕込まれています。四塩化炭素、シアン化合物、鉛、六価クロムはいずれも有害性のある物質なので、知識があいまいだと迷いやすいです。しかし、問われているのは毒性の強さではなく、食物連鎖を通じて濃縮されるかどうかです。つまり、「危険な物質」と「生物濃縮の代表物質」は同じではありません。また、重金属という言葉だけで鉛や六価クロムを選んでしまうのも典型的な誤りです。環境衛生の試験では、物質の有害性、蓄積性、生物濃縮性、急性毒性と慢性毒性の違いを分けて整理しておくことが、ひっかけを避けるコツです。

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